インド映画夜話

Action Jackson 2014年 144分 主演 アジャイ・デーヴガン & ソーナクシー・シンハー & ヤーミー・ゴウタム & マナスヴィー・マムガイ
監督/脚本/振付/特別出演 プラーブ・デーヴァ
"群れず、語らず、処理するだけだ"




 マハラーシュトラ州ムンバイの下町で"兄貴"と呼ばれ親しまれるゴロツキ ヴィシーは、店を荒らすチンピラをふんじばったり、貧困層を差別するお偉方に鉄拳制裁することで町の人々から援助されて生活するヤクザ者。

 そんな彼を目撃するたびに幸運が舞い込むと信じた不運続きの女性クシ(幸福の意)につきまとわれる日々を過ごすこの頃だったが、クシの同僚が彼女の意中の人探し手伝い目的にヴィシーの写真をSNSにアップした事で、突如マフィアたちが動き出すことに…「ボス、奴はムンバイにいる…!!」
 その日から、ヴィシーは急にチンピラや警察からの攻撃にさらされ命を狙われ始めてしまう。なんとか深夜の病院に逃げ込むヴィシーは、その場で自分そっくりな男が現れて代わりに警察に捕まってしまうのを目撃。ギャングたちに引き渡されたその男…プネーで品行方正なレストランスタッフとして働いていた男ジェイ…は、自分の命を狙うマフィアたちを前に、突如鮮やかな動きでその場にいた連中を殺し始めるのだった…!!


挿入歌 Punjabi Mast ([陽は落ちた…] さあ、パンジャーブ酒を楽しもう)

*ロミオ! ロミオ・ラ−ジクマール&ケーシャヴァじゃまいか!! なにやってんの!?ww(*1)


 鬼才プラーブデーヴァと、アクションスター アジャイ・デーヴガンが組んだマサーラーアクション・ヒンディー語(*2)映画! 公開前には、そのわけわからんパワーを持つスチルや予告編から、色々と妙な噂に宣伝側が振り回されていた…らしい。
 同名タイトルの87年ハリウッド映画「アクション・ジャクソン/大都会最前線(Action Jackson)」とは関係ない映画…のはず(たぶん)。

 予告編のぶっ飛び具合から想像するよりは地味なアクション映画と言う印象の一本ながら、それは予告編のヴィジュアルがあまりにも強烈すぎるって証明でもあるからまあ…とフォローしようにも、やっぱ物語の雑さはフォローできない映画、かなあ…。

 冒頭の品行方正なレストランスタッフが、ムンバイに行くと喧嘩上等な破天荒なゴロツキに早変わりし、そう思わせておいて実は…などんでん返しの連続は効果的ではあるけれど、それぞれの登場人物のキャラ付けは類型的な上に1人2役の差もそんなにないために「ん?」とつまづく描写もたくさんあって、勢いだけで物事を転がしてる感が強い。その分、その瞬間瞬間の画面の圧はやたら強いので、そう言った派手な画面を楽しめばいい映画になってるよう。
 飛び交う軽食やら爪楊枝やらナックルダスターやらの、やたら空を舞う小道具をネタに使う頻度の高い遊びも、そんな無責任な楽しさを助長させる。そこに唐突に登場する日本刀と歌舞伎的合いの手、中華風なインテリアが、なんとも「日本と中国の区別なんてつける気ないんだな…」という乾いた笑いも促進させてくれるけどw(*3)

 そんな遊びネタの多い画面にあって、同じプラーブ・デーヴァ監督作で1人2役主人公映画でもある「Rowdy Rathore(暴れん坊ラトール)」との共通性を指摘する声もあったそうだけど、そう言った過去作のウケる要素を散りばめつつ、よりお気楽路線でぶった切ったものにしようとした…のかどうなのか。興行的には「災害級」と評されてしまった本作ながら、以降のプラーブ・デーヴァ監督作も基本お気楽路線を継承してるところを見ると、こういうお楽しみ映画こそを自分の武器としているのかどうなのか…?

 1人2役で活躍するアジャイ・デーヴガンはいつものこととして、ダンサー要員的な出番ばかりのクシ演じるソーナクシー・シンハー、後半の古典的ヒロイン アヌーシャ演じるヤーミー・ゴウタムと言うトップスター女優に混じって活躍するトリプルヒロインの1人マリーナを演じるのは、本作で映画デビューしたモデル出身のマナスヴィー・マムガイ。
 1987年ニューデリー生まれで、チャンディーガル連邦直轄領育ち。15才にしてダンスや歌、スケートなどで活躍し様々な賞を獲得していたと言う。06年のエリート・モデル・ルック・インドに優勝したのを皮切りに、フェミナ・ミス・インディアを含む数々のモデルコンテストに優勝。雑誌「タイムズ・オブ・インディア」が発表する「最も魅力的なインド人女性ベスト50」に3年連続で選定され、スーパーモデルやレスキューダイバーなどなどで活躍する中で、本作で映画デビューする(*4)。
 その後、アメリカでのボリウッドイベントに参加する中で、印系アメリカ人実業家シャラブ・クマールを支持。米国移住してRHC(*5)の運動に参加して副議長に就任している。

 ラブコメ・ミュージカルな前半と、マフィアと敵対するヤクザ映画アクションの後半と、話はパキッと別れる2部構成は、画面的雰囲気もハッキリ分かれていてサービス精神もりもり。その分、物語はだいぶやっつけ具合に進んでしまうので、せっかくの1人2役のドタバタとか、三角関係のもつれからくる狂うほどの復讐劇とか、面白くなりそうな要素がおざなりになってはいる。まあ、それ以外の画面的色彩とか噛み合わないディスコミュニケーション芝居とか、ケレン味のみで突き進む「そんな発想なかったわ!」なアクションシークエンスとかはてんこ盛りもてんこ盛りなんで、映画としての方向がそっち向いてるバラエティ的エンタメってことかもしれませんわ。
 とにもかくにも、映画公開時に予告編見てわーわーツイッターで騒いでたら「映画よろしくね!」とアジャイ・デーヴガン公式アカウントからいきなりメッセージが来るぐらい必死に宣伝してた映画だから、こちらもそれに応えて面白がっちゃおーじゃん! って気になっちゃう映画でっせー!!

挿入歌 Keeda (ヤっちまうぞ!)

*踊ってる舞台は、物語とはなんの接点もないポーランドロケ。


受賞歴
2015 The Ghanta Awards 最悪女優賞(ソーナクシー・シンハー / 【Holiday】【Lingaa】と共に)


「AJ」を一言で斬る!
・何度も何度も…1人行動しすぎて、主人公が恋人を危険に晒しすぎじゃないスカね?

2020.11.6.

戻る

*1 ゲスト出演のシャーヒド・カプールは【"ロミオ"・ラージクマール(R… Rajkumar)】で、プラバースは【Pournami(ポウルナミの願い)】で、どちらもプラーブ・デーヴァ監督作に主演した経験のある俳優ダ!





*2 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*3 あんな火花が散る使い方してたら、日本刀なんてすぐに斬れなくなる気がするんですケドー。
*4 2020年現在、映画出演はこれ1本のみ。
*5 共和党ヒンドゥー連合。シャラブ・クマール設立の米国の在米インド人ヒンドゥー教徒たちの政治組織。