インド映画夜話

Aata 2007年 140分
主演 シッダールタ & イリヤーナー・デクルーズ
監督 V・N・アーディティヤ
"さあ、ゲームの始まりだ!!"



ファースト自転車アクション

*なんで街のゴロツキが自転車で追っかけっこしてんのやねん、と思ったらジャッキー・チェンのマネがしたかったからと言う至極インドなアクションシーン。


 映画館で育った青年スリクリシュナは大の映画マニア。今日も、映写技師の父の手伝いで新作映画フィルムを運ぶ途中、それを邪魔する敵役を映画ヒーローよろしく撃退する(遊びに興じていた)。

 その頃、大晦日のハイデラバードで友人ジョティを陵辱死させられた女子大生サティヤは、その犯人…事件をもみ消した政府高官の息子ヴィクラム(通称ヴィッキー)…への抗議で彼に石を投げつけて怪我を負わせ、ヴィッキーの手下たちに狙われるように。
 追手から逃げるサティヤは、東ゴーダヴァリ県アンタルヴェディ村のスリラクシュミー・ナラシンハ・スワミー寺院祭の中でスリクリシュナと出会い、彼の手助けで追手を撒く事に成功する。彼女に一目惚れしたスリクリシュナは、以降もちょっかいをかけ続けるがサティヤの「彼氏がいるから無理」の言葉にショック…。

 だが実はサティヤは、姉の結婚式を人質に「お前と婚約する。でなければ一家をメチャクチャにしてやる」と言い寄って来たヴィッキーと仕方なく婚約式を執り行わざるを得ず、怪我の復讐のために自分を苦しめて殺そうとするヴィッキーから、必死に逃げて来た所だった!
 それを知ったスリクリシュナは、サティヤを守るために大胆な賭けに出るが…!!


挿入歌 Yela Yela (ヤラヤラ)

*サリーの着方を知らないサティヤは、踊りの最中にあっさりサリーが脱げて来て…。
 どんな着付けでも様になるイリヤーナーがステキ!!



 タイトルは、テルグ語(*1)で「ゲーム」。
 公開後、批評家からパワン・カリヤーン主演の2004年公開作「Gudumba Shankar」にプロットが似ていると指摘されたとかなんとか。
 「愛と憎しみのデカン高原(Preminchukundam Raa)」でADとして映画界入りした、監督兼脚本家のV・N・アーディティヤの6作目となる監督作。
 後に、タミル語(*2)吹替版「Gillida」、ヒンディー語(*3)吹替版「Aaj Ka Great Gambler」、オリヤー語(*4)吹替版「Hero」も公開。

 しょっぱなの自転車アクションが、まんまジャッキー・チェンの「プロジェクトA」そのままってのにビビってたら「なんでこんな映画みたいな事に付き合わせやがる!?」「だってオレ、映画大好きだもん!」のやり取りで、ああ、この映画はテルグやボリウッド以外にも世界中の映画ネタ満載なんだね…と無理矢理納得させられる力作。主人公スリクリシュナが楽しんでる映画には、他にも「ランボー」や「タイタニック」が出て来たり「ニューシネマ・パラダイス」ネタとかも出てくる。うん。往年のインド映画ネタもぜんぶ理解できるようになりたいけど、どれほど見続ければいいのやら(「Tagore」ネタはわかった!)。

 最近インドで大問題になってる婦女暴行ネタを話に取り入れてるわりには、ノリの軽い映画で「それはそれで楽しいけど、それでいいのか?」と思ってると、いちおー中盤以降どんでん返しに次ぐどんでん返しが起こり、一大復讐ものへと変わって行く中で色んなものが詰まったボリュームたっぷりな映画になっておりました(*5)。
 まあとにかく、インド映画の中で描かれる政府関係者ってのは、どいつもこいつもろくなヤツがいないネー…もっとも、この後20011年の「Shakti」では、イリヤーナーが大臣の娘役を演じたりしてるわけですが…。
 そして、やっぱり悪には徹底的に容赦しないのがテルグでござる。うむ(*6)。

 タイトルの「ゲーム」は、狭義には物語後半にスリクリシュナが仕掛けるとあるゲームを指すんだけど、より広い意味では「人生はゲーム、さあ勝ちに行こう」と言う人生讃歌なタイトルソングや、それを反映した主人公の危険を顧みない生き様、ゲーム感覚で人を襲う悪役ヴィッキーへの警鐘の意味もあ…ったりすんかね?(弱気)

 それにしても、冒頭スリクリシュナが育ったこじんまりとした映画館の、映写用窓枠のお洒落なんだか目立ち過ぎなんだかの飾り付けはイイネ!


挿入歌 Kakinada Kaaja (カーキナダ市の優美なる悦楽)

*どうしても、蚊取り線香かオズへ続く道の上で踊ってるように…見え…






「Aata」を一言で斬る!
・シッダールタって、耳動かせるのね!!

2014.8.29.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 インドの連邦公用語。
*4 東インド オリッサ州の公用語。
*5 多少…いや結構強引な所もあるので、納得できるかどうかは…その人次第と言う事で。
*6 って言うほど、凄惨なシーンも残酷なシーンもないけど。