インド映画夜話

Ashok 2006年 164分
主演 N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア & サミーラ・レッディ
監督/脚本 スレンデル・レッディ
"気は優しくて力持ち! 今、アショクの復讐が始まる!!"



挿入歌 Oka Chinni (笑顔があれば [戦争だってなくせるよ])


 カブークハナの車両修理工場で働くアショクは、血気盛んな正義感の強い男。しかし、短気すぎて過去に数々の暴力事件を起こしため、家から勘当されてしまっていた。

 ある日、地方行政官(婚姻書類担当)のアショクの父に結婚詐欺を邪魔された地元ギャングが、家に乗り込んできて妹サンディヤを連れ出そうとするが、駆けつけたアショクはギャング全員をボコり再起不能にする!! …のだが、過去の事件の数々から父のアショクへの怒りはおさまらず、アショクは家に戻れないまま…。
 工場に戻ったアショクは、親友ラージャたちに慰められながら街で大騒ぎする中、偶然そこに通りかかった美しいアンジャーリに一目惚れ! 最初はアショクを怖がっていた彼女も、次第にその気になって2人はいい感じに…。

 ちょうどその頃、街のギャングたちの抗争が激化。政界進出をねらう殺し屋KK一味による反発者への粛正が始まっていた。
 KKの兄パンダはある襲撃時に、偶然通りかかったサンディヤを傷つけてしまい、怒るアショクに一発でのされて大激怒。同じ頃、KKは別の襲撃に巻き込まれたアンジャーリに一目惚れしてしまう!
 KK兄弟は、アンジャーリといい仲のアショクを結託して襲撃するもののアショクの怪力になす術もない。そこで母親ヤダマは、アショクの家族を脅して彼をデリーへと遠ざけ、アンジャーリーの父親をだまして晴れて彼女との結婚を進めようとする。アショクの父も、彼を永遠に突き放すためにその計画に乗ってしまい…。


挿入歌 Gola Gola



 日本では奇妙の人気を誇る名作登場!
 動画サイトにミュージカルシーンがアップされて人気に火がつき、フジテレビのバカデミー賞でネタ紹介されるやネット上で大人気に。大量のシンクロムービーのネタ元映像に使われまくったトリウッド(=テルグ語娯楽映画)作品である。
 日本では、本編未公開&DVDすら発売されてないため見る機会なんて絶無なのに、そのキレッキレのミュージカルシーンが(一部で)衝撃を持って受け入れられ、大人気になってしまった(*1)。

 主役はテルグ映画一族出身の大スター N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア(*2)。同名のテルグ・スーパースターを祖父に持つテルグ映画界の御曹司である! 本作公開時は若干23歳!!
 ヒロインのアンジャーリには、テルグ映画(=トリウッド)、ヒンディー映画(=ボリウッド)、タミル映画(=コリウッド)等で活躍中の人気女優サミーラ・レッディ。
 悪役KKには、同じくテルグ、ヒンディー、タミル映画界で人気の悪役俳優ソヌー・スードが、音楽監督にはテルグ映画界で数々の音楽を担当する大人気音楽監督のマニ・シャルマーが就任。
 公開と同時にテルグ語圏(アーンドラ・プラデーシュ州とその周辺域)で大ヒットし、人気に乗ってお隣のタミル語圏(タミル・ナードゥ州と周辺域)でタミル語に吹替えられて公開された。

 お話的には、根は善良で怪力男な快男児アショクをめぐる"これでもかこれでもかこれでもかぁぁぁぁ!!!!!"と言うほどの試練の連続な、流血アクション・ラブロマンス・コメディ・ファミリー・お涙頂戴・悲劇・カーチェイス・ミュージカル……ま、例によって「ラーマーヤナ」構造を下敷きに、全てのジャンルが網羅された超ド派手な高密度お腹いっぱい映画。とにかく、話の展開が早くてそれぞれのシーンでの出演者の技の見せあい具合が楽しいショータイム。
 台詞がやたら早口に聞こえるけど、テルグ語のリズムってあれが普通なのかどうなのか? 凄惨なアクションシーンもミュージカルの群舞のキレ具合も、派手派手な所は素晴らしくテルグ的。

 にしても、いちいちカット割りがカッコ良すぎる。ムチャクチャな流血アクションの数々や、爆発する車の数々や、ギャングたちのカットインからアショクの空中殺法から、計算されたド派手な演出の数々は息つく暇がないほど。まぁ、街中で昼日中に数百人のギャングが刀振り回したり、銃ぶっ放したり、男や女を集団で追っかけたりとかどんだけ治安悪い世紀末都市なんだよって感じではありますが。
 主役アショクの家庭が父親至上なのに対して、殺し屋KK一味がKKの母親絶対の家と言う対比も面白いけど、たとえ人の命なんぞ歯牙にもかけない殺し屋たちも、親には歯向かわないと言うのがにんともかんとも。
 劇中、何回かヒンディー映画「Dhoom」の主題歌"Dhoom Dhoom"がかかってるシーンがあるけど、テルグ語圏でもあれって流行ってたんでしょか?


挿入歌 Mumtaju Mahalu (ムムターズ・マハル)

*タイトルの「ムムターズ・マハル」とは、インドを代表するムガル時代の建築タージマハール廟に埋葬されているムガル皇后の名前。彼女の死を嘆き、彼女への愛の大きさを現すために皇帝シャー・ザハーンはかの歴史的建造物を造ったのである。
 ちなみにロケはトルコのカッパドキアで撮ったとかなんとか。





2012.6.8.

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*1 かくいう私もこれで本格的にインド映画にハマった一人。ま、大量のシンクロムービーのせいで本編の動画や情報を検索しづらくてツラいんですが…。

*2 通称 Jr. NTRとかN.T.R. Jrとか。本名 ナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ。