インド映画夜話

バーシャ! 踊る夕陽のビッグボス (Baasha) 1995年 145分
主演 ラジニカーント & ナグマ
監督/脚本 スレーシュ・クリシュナ
"バーシャ……お前はいったい、誰なんだ!?"

むんむん様企画のなんどり映画倶楽部10にてご紹介頂きました!
皆様、その節はお世話になりました。なんどりー!



挿入歌 Baatcha Paaru



 リキシャーワーラー(三輪タクシードライバー)のマニカムは、低賃金に苦しむ同業者を皆で支援する運転手たちのリーダー的存在。
 彼の望みは、亡き父の遺言…本人たちの希望通り、上の妹カヴィタに良い結婚を、弟シヴァを警察官に、下の妹ギータを医者にさせ、家族全員が平安無事でいる…を実現すること。決して裕福でないマニカム一家だったが、仲間たちの協力のもと不思議とお金に困らない生活を続けていた。

 ある日、リキシャーのお客に来た富豪の娘プリヤと仲良くなったマニカムは、彼女が忘れて行ったダイヤモンド入りの袋を届けに戻って彼女を驚かせる。しかしその後、その中のダイヤが1つ消えてると言うプリヤの父キーシャバは、部下たちにマニカムを襲撃させて彼のリキシャーをに破壊してしまうのだった!! だがマニカムはいっさい抵抗せず、ただ笑って見逃すだけ。プリヤは、父の所行を大いに恥じ入り、父が裏社会の麻薬取引で成り上がったギャングである事に気付いてしまう…。

 その後も街のドン キーシャバの横暴は続くも、なにが起ころうとマニカムは抵抗しないでいた。だが、ギャングたちの逮捕に乗り出す警官になった弟シヴァへの報復のため、妹がギャングたちに誘拐される段になって、ついにマニカムの怒りは爆発する…!!


挿入歌 Naan Autokaaran (オレは運転手 [運転手は、全ての逃げ道の相場を知っているのさ])



  原題は、ウルドゥー語(パキスタンの国語で、北インドはジャンムー・カシミール州の公用語)で「王」の意。

 タミル語(南インド タミル・ナードゥー州の公用語)映画界のスーパースター ラジニカーント主演の大ヒット作にして、数あるラジニ映画の代表作と謳われる大傑作タミル映画!
 1991年のヒンディー語映画「Hum」(アミターブ・バッチャン主演。ラジニも出演!)や、1990年のマラヤーラム語映画「Samrajyam」にインスパイアされた作品。元々は「Hum」のリメイク企画だったらしいけれど、諸般の事情で企画が動かず、そのまま新作映画企画となって製作されたとかなんとか。
 後に大ヒットを受けてヒンディー語吹替版が、2001年にはカンナダ語リメイク作「Kotigobba」が公開。さらに、2013年にヒンディー語版のデジタルリマスターによる映像・音響のリフレッシュ版が公開され、2017年には、待望のタミル語リマスター版が公開。

 日本では、「ムトゥ」に始まるラジニカーント映画ブームの中、1999年に初イベント上映され、その後もファンたちの人気に支えられながらイベント上映が続いた後、2001年に一般公開。自然発生的に観客が歓声を上げたり踊り出したりという騒ぎが起こる、いわゆる「マサラシステム」と呼ばれる大騒ぎ上映の、元祖お祭り映画となった。
 2017年、インド本国に先立ってタミル・オリジナルのリマスター版が上映され大きな話題に。

 最初のゆるいOPで油断してると、本編導入と共に一気に始まるリキシャーワーラーたちのインパクト大のミュージカルに全てを持って行かれる勢いで、そのパワーに圧倒される超絶級ラジニ映画。見るときは、皆と黄色いタオルは必須というのはホントですゼ!!
 お話は、リキシャー運転手と言う庶民の代表マニカムの活躍とギャングたちの暗躍。その合間合間にバーシャと呼ばれる謎の男の意味深なカットが入りながら、ヒロイン プリヤとのラブコメを挟んで行く。中盤でボンベイを舞台にしたバーシャの思い出を語った後、ギャングたちとの最終対決へとなだれ込んで行くギャング・アクションは爽快!
 同じ年に公開された「ムトゥ」に比べて、下町が舞台だからか硬派なイメージが強く、そのカットわりとか物語進行とかは必殺仕事人とかカンフーものに近い? 話の大枠も時代劇的なわかりやすさで楽しませてくれる(…分、「ムトゥ」にあるようなメルヘン的要素は薄い)。
 庶民派ラジニから、大激怒ラジニ、家族大好きラジニから、近所の気のいい兄ちゃんラジニ、そしてそして悪役顔の大ボスラジニが堪能できるラジニ七変化が楽しい楽しい。

 「ムトゥ」1本で日本でも有名になったラジニカーント(本名シヴァージ・ラーオ・ガイクワド)は、マイソール州バンガロール(現カルナータカ州ベンガルール)出身の映画俳優。
 9才で母親を亡くした後、様々な仕事をこなして行くうちに名物バス運転手となった所、その名調子を見込まれて舞台演劇に誘われて、マドラス・フィルム・インスティテュートで演技を学習。それをきっかけに映画界にも入り1975年「Apoorva Raagangal(珍しい音楽)」で映画デビュー。タミル語映画を中心にカンナダ語映画、テルグ語映画などに出演し主に悪役俳優として頭角を現した。その後、1977年のテルグ語映画「Chilakamma Cheppindi」で主役俳優に昇格し、同年のタミル語映画「Bhuvana Oru Kelvi Kuri(ブバーナは疑問符)」でそれまでのイメージを一新する善人役に挑戦。翌1978年作「Bairavi」でスーパースターの地位を獲得し、「Mullum Malarum(棘と花)」で初めてタミル・ナードゥー州映画賞特別主演男優賞を受賞。80年代以降数々の大ヒット映画に主演してその人気を不動のものとする。
 本作と同じ1995年公開作「Muthu」が、3年後の98年に日本公開されて大ヒットすると、その騒ぎはNewsweek誌でも報道される騒ぎとなったそうな。

 本作は、そう言ったラジニカーントの過去のフィルモグラフィを濃縮した映画…って位置づけなんじゃって思うほど、ラジニ推し200%な勢いで作られていて、劇中のミュージカル「Azhagu Azhagu」他、様々なコスプレラジニがこれでもかと登場する。その推しの強さは「わかっててやってんだろ!」とツッコむのも野暮ってほどだけど、なんのパロディですか? とツッコむ事もまた楽しw
 しかし、やはり注目すべきは主役ラジニと悪役ラグヴァランのすすけたあごひげだと思うの。そこまで盛大に生えてると、逆にカッコえええー!!!


挿入歌 Thanga Magan (黄金の男が [勇敢なライオンのようにやって来る])




受賞歴
Filmfans Association Award 主演男優賞
Cinema Express Award 主演男優賞




「バーシャ!」を一言で斬る!
・日本の人力車起源のリキシャーが、ここまで活躍する映画も前代未聞!! …かもしれない。

2014.1.24.

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