インド映画夜話

Bachchan 2013年 145分
主演 キッチャ・スディープ & パルル・ヤーダヴ
監督/原作/脚本 シャーシャンク
"怒れる男が、帰って来た"



ヒンディー語吹替版予告編



 2011年7月13日昼、カルナータカ州の州都ベンガルール。
 警察署でマヘーシュ・デーシュパーンデー警部を、続いて病院でシュリーニワーサ・アイアンガール医師を暴行殺害し逃亡する男が現れた! 警察の必死の追跡でようやく逮捕された男は、尋問官ヴィジャイクマールにその動機を語り始める…。

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 彼の名はバラト・ナトワーラル。バラト不動産会社社長で、一部ではその誠実さと腕力、長身の目立つ姿から、彼をヒンディー映画スターになぞらえて"バッチャン"と呼ぶ。今日も、契約無視の悪徳不動産会社のジャヤラージ一味を、たった一人で粉砕してクライアントを救出。その完全無欠さは、誰も止められない…。

 しかし、このトラブルを警察に黙殺された彼は、それから何度も自分を妨害してくる迷信の固まりマヘーシュ警部や、どこへ行こうと何故か「死にたくなければ甘い物口にするな」としつこく彼を追い回すシュリーニワーサ医師に悩まされて行くことに。
 その執拗さは次第に度を越えて行き、ついには幼なじみの会社秘書アンジャリとの結婚を妨害された上、二重結婚詐欺だと公衆の面前で詐称される。これにショックを受けるアンジャリは自殺を図り、瀕死の彼女を搬送した病院ではシュリーニワーサ医師が待ち構えて彼女の治療を拒否。彼女を見殺しにしたのだ!!
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 この証言に衝撃を受け、捜査を開始したヴィジャイクマール警部の前で、関係者は口を揃えて語る…「そんな事実は知らない」…「会った事もない男だ」…「アンジャリは生きている」!!


挿入歌 Onchuru (ねえ [愛について語りましょうよ、バッチャン])

*このシーンの入りはいきなりなので「へ?」ってビックリ。さらに、歌の開始早々アミターブ主演映画「Don」の名台詞「メーフード〜ン」が出て来てさらにビックリ。
 歌は、女性ボーカルをインドゥ・ナガラージが、男性ボーカルはスディープ自身が歌ってるそうな。



  タイトルは主人公のあだ名で、70〜80年代のキング・オブ・ボリウッド "怒れる青年像"を体現した俳優アミターブ・バッチャンからとられたもの。彼の通称"ビッグ・B"もしっかりテーマソングに入れ込んでるのはさすが。

 「マッキー(Eega)」で日本でも注目される名優キッチャ・スディープが暴れまくる、カンナダ語(*1)アクション映画! 公開されるや大ヒットして、ヒンディー語吹替版やテルグ語版吹替版も公開された他、ドバイ、ドイツ、オーストラリア、アメリカなどでも公開。批評家の間で、歴代スディープ主演映画のベスト1に上げる人もいるとか。
 スディープの話で盛り上がってる時に「これを見るべき!」とカンナダ語映画ファンからお勧めされた一本。

 本編開始からいきなり壮絶なアクション&カーチェイスで始まるもんで「これはGhajini(ガジニー)的な話なんだろな」と思って見ていたら、中盤から次々に話をひっくり返され、あれよあれよと話は二転三転して行くサスペンス調アクションへと早変わり(*2)。
 初のカンナダ語映画視聴だったけども、テルグ語映画ばりの爆発アクションにヒッチコックみたいな騙し絵映画が加味された、爽快な傑作となっている。ま、CGや合成処理がまだチャチく見える部分も若干ある感じだけども、合成してそうにないシーンで結構危ない事してるシーンもあって「うわ。これどうやって撮ってるんだろ」と気になる所もチラホラ。…油断できねぇ映画ですわ。

 話は、つかみのアクション&カーチェイスから、バラトの回想による平和な頃のラブコメに徐々に悪夢的な不条理が顔を出す前半、ヴィジャイクマールの捜査がすぐに迷走し始める中盤を挟んで、全ての事の真相と怒濤の結末ヘと向かう怒れるスディープ120%推しな、スディープによるスディープ映画になっている。

 所々に「メーフード〜ン(俺がドンだぜ)」とか「お前の人生はアグニーパス(火の道)だ!」とか「バッチャンの彼女はレーカーだろ?」「『Silsila(鎖)』見た事あるかい?」とか、バッチャンネタもドカドカ投下されていて、アミターブ全盛期を知っている人にはより楽しいんじゃなかろか…と思うけど、その辺の知識が不足してる私には、アンジャリを指して「やあ、レーカー」と言われて「あ、ヤバいフラグが立った」くらいしかわかんなかったってばよ!(*3)

 身長185cmと言うスディープは、たしかに188cmのアミターブに迫るスタイルで、その長い手足、まばたきしないでかい充血目玉、無茶なワイヤーアクション、その怒りの眼力はまさに神話時代から受け継がれるインドの怒れるヒーロー。不条理な世の中を、自分の腕力1つでぶちこわすヒーロー像を復活させるのはコイツだけだぜ! …って言う声が聞こえてきそうな、キング・スディープ宣言映画…だったりする?(自信ナシ)
 ヒロイン、悪役、コメディアンがそれぞれ複数登場し、特別出演でヴィジャイクマール役にテルグ語映画スターのジャガパティ・バーブが出て来る豪華な布陣ながら、映画を通して常にスディープに睨まれてるイメージがついてまわる王道スター映画でもある。
 話の展開によって、主人公バッチャンが「なにに怒っているか」がどんどん変化し対象が大きくなって行く所がキーとなり、その怒りに身を任せて戦うバッチャンの孤独をも現しているのが、映画を傑作足らしめる所…でしょか。最終決戦後のバッチャンの表情と、その周囲の人々の態度との差が絶妙!


挿入歌 Sadaa Ninna (私の姿が、永遠に貴方の眼の中に見える)

*スディープと一緒に踊ってるのは、マラヤーラム語映画を中心に南インド映画界全般で活躍する映画女優バーヴァナ。






「Bachchanh」を一言で斬る!
・人を遠い無人地帯に呼びつけてシリアスな話をするのに、笑顔で出迎えないでおくれー!

2014.5.17.

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*1 南インド カルナータカ州の公用語。その娯楽映画界を俗にサンダルウッドと呼ぶ。
*2 まあほら、「Ghajini」に出演してる人もいるしさあ…とむなしい抵抗。
*3 アミターブとジャヤーとレーカーの三角関係&その後のレーカーの私生活上の不幸が、当時定番のゴシップネタとして賑わっていたってのは…さすがに知ってるのだ。フン!