インド映画夜話

Bodyguard 2011年 131分
主演 サルマン・カーン & カリーナ・カプール
監督/脚本/出演/原案 シィッディーク
"彼は本当のことしか言わない"
"…時にはウソも言うようだがな"




 "私のラブストーリーは、電車の旅から始まって…まだ続いてるかのよう"
 "それは必然か偶然か、旅の最初はジャイシングプルから始まったの…"

 人身売買業者に拉致された少女40人を救出した"タイガー・セキュリティー"所属のボディガード ラブリー・シンは、その依頼主であり、母親の命の恩人でもあるジャイシングプルの地主サルタージ・ラーナーの信頼を受け、彼の娘ディヴィヤーの護衛任務につく。

 大学を卒業してロンドンでの結婚式まで彼女を守る契約で、外出時のディヴィヤーの護衛と家庭内での護身術特訓コーチとして常に彼女と行動を共にするラブリーだったが、そんな真面目すぎる彼を敬遠するディヴィヤーは、なんとか彼を遠ざけられないかと妨害工作に走り、携帯電話を使って架空の女性チャヤーを演じてラブリーの気をそらそうと画策する。
「大学に来たあなたに一目惚れしたのよ。もっとお話がしたくて…」
「貴方の好意は嬉しいが、今は電話を切りなさい。依頼主に危険が迫っている」
「危険? そんなのどうだって…」
 その時、クラブ内のディヴィヤーに襲いかかる男たちが…!!


挿入歌 Bodyguard (ボディガード)


 シィッディーク監督自身による、2010年のマラヤーラム語(*1)映画「Bodyguard(ボディーガード)」の、ヒンディー語(*2)版リメイク。英題「My Love Story」。
 ハリウッドや日本その他の同名映画やTVドラマとは別物。

 元映画は、本作以前の2011年にやはり監督自身によるタミル語(*3)版リメイク「Kaavalan(ボディーガード)」が公開されている他、本作と同年にカンナダ語(*4)版リメイク「Bodyguard」、2012年にはテルグ語(*5)版リメイク「Bodyguard」も作られている。
 本作は、台湾の金馬奨にて初上映されたのち、インド本国より1日早くクウェートで、インドと同日公開で英国、アイルランド、オランダ、米国他でも公開された。

 タイトルとサルマン主演作ということで、「ダバング(Dabangg)」的なアクション大作かと思ったら、アクションシーンは豪快ながら話の中心ではなく、基本的にはヒロイン ディヴィヤーが架空の女性を騙って主人公ラブリーを翻弄するドタバタロマンス劇になっていた。
 そのため、アクションその他のシークエンスがとってつけた感じに見えてしまって、ラストのどんでん返しも「え? それでいいの?」って感じ。とはいえ、おとぼけ真面目キャラを演じるサルマンはハマり役で、後の「バジュランギーおじさんと小さな迷子(Bajrangi Bhaijaan)」と言い、こう言うキャラが結構似合うんだねサルマン! って感心しつつそっち系も色々見てみたい。ディヴィヤー演じるカリーナも、わがままお嬢様をお美しく演じていて、他の映画より心なしかお綺麗ですことよ。

 主人公ラブリーのボスがカリーナ・カプールの大ファンと言って、そのブロマイドを出して来た後に「間違えた。こっちが今度の護衛任務の相手」とそのカリーナ演じるディヴィヤーの写真出して来たりと、舞台裏ネタも結構ぶち込まれていて、ディヴィヤーが携帯電話上で騙っていた架空の女性チャヤーの声を、カリーナの姉カリシュマー・カプールが演じていたとか、ラブリーの所属するボディガード会社"タイガー・セキュリティー"が実際にサルマンが利用している会社の名前をそのまま持って来てたりとか、内輪のお遊びもたくさんなんだそうで。

 原案&監督&脚本を務めたのは、1960年ケーララ州コーチ生まれのシィッディーク(・イスマーイール *6)。
 幼馴染のラール(本名M・P・マイケル)と組んでモノマネ芸で活動していた所を、映画監督兼プロデューサーのファーズィルに見出されて、シィッディーク=ラールと言う脚本デュオを結成して1986年のマラヤーラム語映画「Pappan Priyappetta Pappan(パッパン、愛しのパッパン)」の原案&脚本で映画デビューする。
 以降、マラヤーラム語映画界にて助監督や脚本(&端役出演)を手がけていく中で、シィッディーク=ラールとして89年の「Ramji Rao Speaking」で監督デビュー。96年の「Hitler(ヒットラー・マダヴァンクッティ)」からは単独監督&脚本デビューして活躍していく。1999年の監督作「Friends」の同名タミル語リメイク作でタミル語映画監督デビューとなり、その後も自身の監督作のリメイクでタミル語映画界でも監督作を次々発表。本作でヒンディー語映画監督デビューとなる。

 元映画も、あらすじを確認するかぎりではそこまで大きな変更点はないよう。
 コメディ監督として名を馳せるシィッディーク監督の作風と、サルマン映画としてのアクションマサーラー風味が、多少チグハグな形でまとめられていると言うことなのか、わりとしつこいコメディと切ない系ロマンス劇が、冒頭・中盤・ラストのアクションで繋げられたような映画になっている。
 最初はお遊びレベルで騙っていた架空の女性の口上に乗っての告白が、やがて本当の恋愛感情になっていくディヴィヤーの切なさは後半になればなるほど存在感を増していくんだけど、それ故に思いを伝えられないディヴィヤーに変わってラブリーの恋愛があんな形で進んじゃって納得できるもんかねえ…とか、そこからのハッピーエンドが無理やりすぎませんか、とか思わんでもないけども…まあ、ディヴィヤーが満足ならそれでいいのか…なあ…ウーム。

挿入歌 Desi Beat (国産ビート)


受賞歴
2011 BIG Star Entertainment Awards 最優秀娯楽アクション映画賞・最優秀アクション男優賞(サルマン)・最優秀ロマンス女優賞(カリーナ)・最優秀女性シンガー賞(シュレーヤー・ゴーシャル/Teri Meri)・最優秀娯楽音楽賞(ヒメーシュ・レーシャンミヤー)・最優秀スクリーン・カップル(サルマン&カリーナ)
2012 Awards of the International Indian Film Academy 女性プレイバックシンガー賞(シュレーヤー・ゴーシャル / Teri Meri )
2012 Stardust Awards 男優スター・オブ・ジ・イヤー賞(サルマン / 【Ready】と共に)
2012 Golden Kela Awards 最悪歌曲賞(Teri Meri)
2012 The Ghanta Awards 最悪主演男優賞(サルマン / 【Ready】と共に)・最悪助演女優賞(ハーゼル・ケーチ)
2012 Zee Cine Awards 特別(監督デビュー)賞
2012 Apsara Film & Television Producers Guild Awards 女性プレイバックシンガー賞(シュレーヤー・ゴーシャル/Teri Meri)
2012 ETC Bollywood Business Awards 最高収益男優賞(サルマン)・最高収益女優賞(カリーナ)・年間最高収益賞・最優秀プロデューサー賞(アトゥル・アグニホートリ)・最高収益監督賞
2012 Lion Gold Awards 人気音楽監督賞(ヒメーシュ・レーシャンミヤー)・人気作詞賞(シャビール・アーメッド)
2011 Airtel Super Star Awards スーパースター映画賞・スーパースターヒーロー賞(サルマン)・スーパースター歌曲賞(Teri Meri)・スーパースターカップル賞(サルマン&カリーナ)・スーパースター音楽賞(ヒメーシュ・レーシャンミヤー&プリタム)・スーパースターロマンスシーン賞・スーパースター台詞賞


「Bodyguard」を一言で斬る!
・ディヴィヤーに邪魔されたとはいえ、わりとボディーガードの衣装はラフでいいものなのね…。

2019.1.18.

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*1 南インド ケーララ州の公用語。
*2 インドの連邦公用語。主に北インドの言語。
*3 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*4 南インド カルナータカ州の公用語。
*5 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*6 "イスマーイール"は父称名。