Businessman 2012年 131分
主演 マヘーシュ・バーブ & カージャル(・アグルワール)
監督/脚本/台詞/原案/カメオ出演 プーリ・ジャガンナート
"怒りのもとに進め、怒りのもとに歌え、怒りのもとに励め"
"世間の声など、聞く必要はないー"
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ムンバイの警視総監アジェイ・バールドワージはその日、「この都市の裏社会を牛耳る首領どもは一掃された」と宣言し、警察機構による平和が樹立されたとマスコミを前に断言する。
同じ頃、ムンバイに到着した青年が1人。彼は、世界最大のスラム街ダラヴィ地区に住む友人を前に語る…「俺は、ムンバイの脅威となるため、この街を支配するためにやって来た…!」
彼は、すぐに口八丁で手下として働くギャング達と金を集め、ムンバイ警視総監の娘チトラ・バールドワージに近づいていく。さらに、借金を理由に土地を追われようとしていたダラヴィ地区の人々を前に「10日間で、あなた方の借金を帳消しにしてみせよう」と宣言!
「あんた誰だ? 地元の人間か?」
「いや…ハイデラバードから来たんだ。なにか問題か? ムンバイで名を残す人間は誰もが他所からきた人間だ。俺もこの街で名を残してやる。俺の名はスーリヤ…忘れるな、俺があんた等の借金を帳消しにできた時には、共にハグしあおう!」
スーリヤは、続いて地元の政治家ラルーに取り入って彼の市長選を支援する代わりに活動資金と言う名の大金を手にし、さらに手下達を使って銀行のダラヴィ地区の借金データそのものを消去させてしまう…!!
挿入歌 Pilla Chao
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*イタリア内戦時代に広く人気を博した有名なイタリア歌曲「さらば恋人よ(Bella ciao)」のパク……オマージュバージョン?
2012年度テルグ語(*1)映画界最高売上を叩き出したアクション・クライム映画。
タイトルの下に「GUNS DON’T NEED AGREEMENTS(銃に、同意は必要ない)」という副題が出て来る(*2)。
日本では、2012年に英語字幕版が埼玉県で自主上映。
2013年には、ベンガル語(*3)リメイク作「Boss」も公開されている。
タイトルから、クラーク・ケントばりの目立たないサラリーマンが突如ヒーローになって暴れる映画かと思ってたらさにあらず。
たとえ暗黒街が一掃されようと、金で人を操る政治家や権力者たちの腐敗がある以上世の中が変わらないと言う諦観の中で、それなら金と人の力の流れを変える社会変革"ビジネス"で世の中の腐敗に対抗しようと言う"新たなボス"を目指す男の戦いを描く、いつものプーリ・ジャガンナート演出の世直しギャング抗争もの映画でありました。タイトルの"ビジネスマン"ってそう言う意味だったのネ!
いわくありげな強気発言で社会を斬る主人公が、トントン拍子に自身の基盤を作っていく様はスピーディーながら、いつもの長台詞の掛け合いにノリノリの音楽、微妙に本音を隠した登場人物たちの腹の探り合いが長々と続く中で、話がどの方向へ向かっているのかよくわかんないうちに社会批判の直球説教もどんどこ盛り込まれて行って、同じジャガンナート監督&マヘーシュ主演作となる06年の大ヒット作「Pokiri(ワルい奴ら)」に比べて脚本の練り込み方が軽い感じを受けてしまうか。
各エピソードごとに挟まれる説教の本気度は高いものの、やたらめったら人々を教化しようと言う台詞が入ってくると、それはそれで説教臭さ嫌いの自分が「コメディアン雇えなかった分を、社会批判メッセージで埋め合わせようとしとんのかな?」とか余計な舞台裏事情を探ろうとしそうになって困る。
カージャル演じるヒロイン チトラなんか客寄せ用美人の枠を出ず、活躍は限定的。映画そのものが完全に腐敗した権力者への罵倒・意識改革に振り切っていて、政治も警察も信用できないインド社会だからこそ、ギャングヒーローが必要になってくるんだと言わんが為の主人公の悪ぶりようは、とってつけたようではあっても日本の不良漫画に通じる作風にも感じますわ(*4)。
音楽監督マニ・シャルマーの紡ぐ歌もノリノリではあるものの、なんか撮り方がマヘーシュ映画の方法論そのままな感じもして印象に残りにくいのもお手軽感を助長させるか。
まあ、いつものマヘーシュ演じるヒーロー像の堅持と思えば、庶民ヒーローとしての主演男優の売り方としては正攻法かつ客の見せたいものを素直に見せているとも言えますけど。このせいで「踊りが下手」とか言う評判が出来たとしたら、マヘーシュかわいそとは思う。うん。本作は、さらにアクションもまあ…うん、一本調子気味ではあるけれど。
劇中の罵倒語や社会批判の台詞に、結構過激な文句が入ってることが問題視されて年齢制限が設けられたり、抗議運動が巻き起こったりと騒動が付いて回ったと言う本作。それくらい過激な社会批判に振り切ったが故に、こんな作風となったと言うことでもあるのか。娯楽映画の中にあっても、色々な映画で叫ばれる社会の腐敗の度し難さは、本作で声高に唱えずにはいられないほどに根が深く、治療不可能な状況だからこそ、こんな映画が人気を勝ち取って支持されると言う社会の写し鏡的存在になっていくってことでもあるんでしょうかどうでしょうか。ただの部外者から見た深読みかしらん。
挿入歌 Bad Boys
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*メインで主演のマヘーシュと共に踊ってるのは、このシーンのみのゲスト出演である女優兼モデルのシュウェーター・バールドワージ。
映画公開後、本編の内容とともに歌詞が下品すぎると一部活動家から抗議が集中したそうな。
受賞歴
2012 TSR - TV9 Natinal Film Awards 監督賞
2013 SIIMA(South Indian International Movie Awards) 作詞賞(バースカラバトラ・ラヴィクマール / Sir Osthara)・男性プレイバックシンガー賞(S・S・タマン / Sir Osthara)
2013 Filmfare Awards South 女性プレイバックシンガー賞(スチトラ / Sir Osthara)
2013 Santosham Film Awards 主演男優賞(マヘーシュ・バーブ)・作詞賞(バースカラバトラ)・ラジオ・シティ・リスナー賞(スチトラ / Sir Osthara)
2013 Time of India Film Awards 女性プレイバックシンガー賞(スチトラ / Sir Osthara)
「Businessman」を一言で斬る!
・「俺はムンバイを支配するために来た!」と宣言する時に主人公が小指を立ててるのは、どういう意味?(インドでは、「トイレ行く」のサイン…だよね?)
2025.12.12.
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