インド映画夜話

カクテル (Cocktail) 2012年 146分
主演 サイーフ・アリ・カーン(製作も兼任) & ディーピカ・パドゥコーン & ダイアナ・ペーンティ
監督 ホーミー・アダジャーニア
"家族だから、親友だから、愛してるから……私から離れていって。二度と顔を見せないで…"





 デリーから初めてロンドンにやって来たミーラー。彼女は、結婚後渡英したまま戻らない夫クナールを探していた。しかし、やっとの思いで再会できたクナールは「結婚持参金を使ってロンドンに来たかっただけ。お前みたいな遅れた国のヤツとは関わりたくない」と彼女を追い返す!

 トイレで泣いていたミーラーは、そこで英国育ちのNRI(在外インド人)でクラブクイーンのヴェロニカと出会う。富豪の娘でありながら家族を知らずに生きて来た彼女は、ミーラーに同情して自宅に招き入れ、全てに耐えて自分が悪いのだと思い込もうとするミーラーに英国風の価値観を与えて彼女の人生の展望を開かせ、すぐに家族のように暮らし始める。間もなくミーラーは、ロンドン最大の広告会社に就職が決まって大喜び…。

 そんな中。ミーラーは、最初のロンドン空港でいきなりナンパして来た迷惑なチャラ男インド人ゴータムを街中で発見。すぐ後で彼を気に入ったヴェロニカが、いきなり当のゴータムを家に招き入れて同棲し始めたからミーラーは吃驚仰天! しかも今度は、話を聞いたゴータムの母親カヴィタ・カプールが乗り込んで来たからもう大変。その場の嘘でゴータムは「結婚するつもりなのは(派手な)ヴェロニカじゃなくて(地味な)ミーラーの方」と言ってしまい、カヴィタも古風なミーラーこそ嫁に相応しいとその気になってしまう。
 3人は、以前から計画していた南アフリカはケープタウン旅行にカヴィタも連れていく事になるが、ここで"ゴータムの恋人のふり"をし続けるミーラーは、彼から図らずも自分の魅力を存分に聞かされ、初めてお互いに惹かれあう自分たちを発見する。
 一方、そんな二人を端で見ていて楽しんでいたヴェロニカは、ミーラーの持つ伝統的インド人の立ち居振る舞いを身につけて、本気でゴータムと結婚しようと考え始めていて…。


挿入歌 Tumhi Ho Bandhu ([貴方の愛で、世界も癒され変わっていく] 貴方は日没の人 [貴方は黄昏…貴方はただ一人の親友])

*ケープタウンのダンスパーティーにて、旅先の解放感とゴータムの恋人のふりでたまったストレスから、ミーラーは生涯初めて飲酒して、初めて表舞台で踊りだして、ついにはその場の主役になり変わる! ミーラーのインド式ダンスは、やがて周りの白人たちも巻き込んでパーティーはインドスタイルに盛り上がる…。
 映画の転換点となるシーンでもあり、インド人が如何に自分たちのスタイルに誇りを持ち、グローバルになるはず! と意気込んでいるかがよくわかる名シーン! …そして、その輪に入ろうとしないヴェロニカも意味深で、後半の展開を暗示する。



 「今時の恋愛 (Love Aaj Kal)」を製作した主演サイーフのプロダクション イルミナティ・プロ製作作品で、同作でも主演したサイーフ&ディーピカに、さらに新人ダイアナ・ペーンティを主役に迎えた、女2人&男1人の友情を描くラブコメ映画。脚本は「今時の恋愛 (Love Aaj Kal)」で監督を務めたロマンス映画の巨匠イムティヤーズ・アリー。
 日本では、2012年のIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)で上映され会場を爆笑で沸かせた。

 「Love Aaj Kal」ともども、非常にドライかつポップなラブコメ映画。
 とにもかくにも、出演者全員が楽しそうに可愛らしく演じていて、嫌みなく3人の友情の進展具合を楽しめる1級作品に仕上がっている。
 育った環境の違う3人が、偶然に出会う事で巻き起こるドタバタと恋の進展は、自分の中に渦巻く様々な感情に翻弄され、様々に混ざりあう人間関係がより事態を新しい方向へと進めていく。ま、基本リッチなインド人のゴージャス恋模様な訳ではあるけども。コメディの作り方が、以前のボリウッドよりも洗練されて来てるのも新鮮。

 サイーフ&ディーピカは、今までのキャリアの中でも最高に近い出来なんではなかろか。本作が映画デビューとなるトップモデル出身のダイアナ・ペーンティも、自然で2人に負けず劣らず表情豊かでお美し。なんでも「Rockstar」でヒロインの座を争っていたとかなんとか言うけども、こっちのミーラーのような配役の方が悲劇的な「Rockstar」よりも似合ってて結果オーライになってるかも…しれない。
 それぞれの登場人物のファッションも見所で、当初インド伝統服に身を固めたミーラーが現代の都会人的に変わっていく所もイイ。もともとトップモデルだからなに着ても着こなせる人なんだけどネ。

 男女の同棲から始まる友情物語と言えば「Dostana(2008年版)」なんてあったけども、こちらもロマンスと言うよりは、3人の友情が織りなす人間関係の妙を繊細に描く作品。
 どっちかと言うと、チャラ男のゴータムは狂言回し的な立ち位置にあって、ミーラーとヴェロニカの友情と恋と家族的空間の間に揺れる相剋が主軸か。狂言回しな分、「Love Aaj Kal」よりもチャラ男演技に気負いのない自然な演技で笑いを取るサイーフが、いいヤツに見えるから不思議。

 インド的な自分に引け目を感じながらもアイデンティティをそこに確立しているミーラーと、享楽的な人生を送る事で父親への当てつけとしながら実は家族同然に話し合える親友を求めているヴェロニカと言う、対極のキャラの紡ぐ友情のあり方は、じつに繊細で自然で楽しそう。まぁ、そのために後半がどシリアスなキッツい展開になって行くわけで、その結果としてのあの結論は、女性側から見てOKなのか? …とか思わんでもないですが。
「…そうだね。もう一人彼氏的キャラがEDとかでゲスト出演すれば面白かったかも」
「あ、それイイ。シャールクやサルマンが贅沢にアイテムボーイ扱いで出てきたら、それは新しいかも!」
 …とか、変な事で盛り上がって映画館をあとにしたのはここだけの秘密。うん。

 恋愛論と家族論が対立するとき、どう決着をつけるべきか…と言う展開で言えばイムティアーズ・アリーの得意中の得意とする物語。小物の使い方もニクいぐらいうまいから困るんだこれが!


挿入歌 Daaru Desi (それは地酒のように [僕らは友情でハイになる])





2013.1.25.

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