インド映画夜話

Coolie 1983年 167分
主演 アミターブ・バッチャン & ワヒーダー・レーマン & ラティ・アグニホートリ
監督 プラヤーグ・ラージュ & マンモハン・デサイ
"神は全てを導きたもう…。立ち上がれクーリーよ! イクバールの元に!!"



挿入歌 Accident Ho Gaya

*すでにこの時代から、走る列車の上で踊ってるよ…。インド人は縦横無尽だなぁ。

 10年の刑期を終えて、ザファール・カーンが出所してきた。
 彼は、昔の恋人サルマを訪ね、かつて結婚を邪魔された復讐に彼女の父親を襲撃! ダムを決壊させてサルマの村を壊滅に追い込み、彼女だけを救出する!

 この災害から生き残ったサルマの息子イクバールは、同じように家族を失った叔父の元で駅のクーリー(日雇い労働者)として働き始めるが、すぐにサルマを連れ出そうとするザファールを見つける。
 しかし記憶喪失のサルマは反応せず、ザファールによって殺されかけるイクバールだったが、叔父と亡き祖父の形見の鷲アラーラカによって命を救われるのだった…。

 ザファールによって、サルマの子と偽られて育てられた孤児のサニーは、ロンドンに留学後、十数年後に新聞記者としてインドに帰国した。
 サニーは幼なじみの少女ディーパとの再会を楽しみにしつつ、駅のクーリーの生活改善デモを取材するうち、クーリーのリーダー格に成長していたイクバールと親交を深める。

 イクバールは、叔父を侮辱して痛めつけた資産家(政治家?)のデ・コスタ氏の屋敷に乗り込み、クーリーの現状と彼の不正をサニーのカメラに暴露して屋敷を破壊! 氏の一人娘ジュリーを無理矢理自分の家に誘拐していくのだった!!
 すぐに解放されたジュリーだったが、その後もなんだかんだとクーリーたちと関わっていくうちに彼女は、徐々にイクバールを理解していくようになる…。




 タイトルの意味は「日雇い労働者」。中国語で「苦力(クーリー)」と言うのと同じ意味(言葉的には、どっちが先?)。

 わりと泥臭ーいアクション主体の映画…なんだけど、色々と話が脱線しまくるし、例によってとりあえずなんでも入れちゃえー! と言う、ロマンスあり、(結構強引な)ギャグあり、社会派あり、ファミリーあり……な直球娯楽作。なんとなく、往年の香港映画のノリが透けて見えるような。

 貧しくも熱く怒れる男アミターブが、にっくき資本家をバッタバッタとなぎ倒すシーンは爽快だけど、「ここが、アミターブが撮影中に重傷を負ったシーンですよ!」とわざわざ映画内で紹介するのはどないやねん?
 なんでも、撮影中の事故で重傷を負ったアミターブの長期入院中、インド中で彼の回復を願う祈祷と礼拝が巻き起こり、病室には時のインド首相がお見舞いにきたとかなんとか…(なんスか、その影響力)。

 ここで出てくるクーリーは、基本、駅の荷物運び役のポーターのことだった。
 列車が到着すると、一団となって乗客の所に走り出して荷物を担いでチップをもらって来るけども、それ以外は皆で車座になって煙草吸ってるか(駅にそんなおっさんらがいたらコワいぞ…)、メッカに向かってお祈りしてるか…割りとお気楽な描写がされていたけど、実際はどうなんでしょうねぇ。ま、低賃金で線路沿いのあばら屋住まいの悲惨な暮らしのために、イクバールたちが立ち上がるわけだけど。

 そういや、駅のアナウンスが最後を「シュークリア(アラビア語で"ありがとう")」でしめていたり、巡礼の旅についての話が出てきたり、コーランが重要アイテムだったりと、イスラム教徒が多数出てくる話だったけど舞台はどこ?(*教えて頂いた所、ムンバイとのことでした)
 アラーラカが持ってきたイスラムの文様のようなものや、最後のアミターブの血文字がなにを意味してるのか、よくわからないよぅ。

 一番の迫力は、なんと言ってもキング・オブ・ボリウッドのアミターブだけども、個人的にはサルマ役のワヒーダー・レーマンの序盤の強い母親演技がツボ。
 火のついた薪を振りかざしてザファールを追い返そうとするあたりは、ザファール役のカデル・カーン(本作では脚本も担当!)の顔に火が当たりそうでドキドキですわぁ。ま、その後は記憶喪失&失語症で終盤まで見せ場らしい見せ場もなくなるわけだけど…。

 ヒロインのジュリー演じるラティ・アグニホートリの、メイクばっちりな濃いい顔は、角度によって今のカリーナ・カプールにも見えて……くる?
 どんな人なんかなぁと調べてみれば、「Hum Tum」で主人公の母親役で出ていたとは! 時代はまわるのぅ…。

挿入歌 Hamka Isak Huan Hai Yaaron


2010.12.3.




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