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Dammu 2012年 155分
主演 NTR(ナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ) & トリシャー & カールティカ・ナーイル
監督/脚本 ボヤパティ・スリーヌ
"私は、神がなんらかの形で到来することを、信じている"
その昔、この地方を治める2つの地主一族の諍いが激化し、後代になってもその憎しみは消えず、1日とて死者の出ない日はない争いを続けていた。
最終的には、後継者のいないスーリヤヴァムシ家のスーリヤ・プラタープ・シンが敗北し、チャンドラヴァムシ家が一帯の支配権を手にしたのだが…
それから25年。
ハイデラバードで暮らす正義漢の強い孤児ラーマ・チャンドラは、友人との電話中に車に轢かれそうになって激怒するも、その運転手の美女に一目惚れしてしまってからは彼女を追い回す毎日が続く。その美女…サティヤもまんざらではない仲が続く中、暴力警官をふん縛ったラーマを見たサティヤは、恋人になってもいいと言って来た。…ただ1つ「自分と同じような名家の出なら」と言う条件をつけて。
もとより孤児のラーマには条件をクリアする手段はないかと思われた矢先、友人から「地方の地主一族が、跡取りとなる養子を探している」と聞いたラーマは、口八丁でヴェーラ・ドゥルガン城主(スーリヤヴァムシ家に仕えていた要人)の面接を乗り切り、すぐさまスーリヤヴァムシ家の養子に認められる。
「息子よ…かつて母から生まれた赤子は亡くなったが、子供自身は生きていたのだ。お前がその子自身になるのだ。この際、真実は意味を持たないから…。私は、神の御前にあって、この儀式に従うことを誓う…」
その日よりラーマは、名をラージャ・ヴァシレッディ・ヴィジャヤドワジャ・スリーシンハと改め、今やチャンドラヴァムシ家に対抗する術のないスーリヤヴァムシ家の屋敷の後継者として迎えられるのだった…。
挿入歌 O Lily
タイトルは、テルグ語(*1)で「勇気」とか「力」の意とか。
タミル語(*2)吹替版「Singamagan」、ヒンディー語(*3)吹替版「Dhammu」も公開。さらに、非公式バングラデシュ映画リメイク作「Rajababu - The Power」も公開されている。
冒頭からインパクト大な首チョンパシーンから始まる、2大抗争アクション映画な1本だけども、スーリヤヴァムシ家(*4)とチャンドラヴァムシ家(*5)の対立と和解を描くと言う意味では、カースト対立を乗り越えるとか、ヒンドゥー神話劇の現代翻案もののお話とかいうインド的なツボを押さえた物語にもなって…いるのかなあどうかなあ。なんか、どこかで見たことのある舞台設定に、どこかで見たことのある登場人物配置、どこかで見たことのあるシーンの連続で出来てるように見えて、それでいてあんまり物語が盛り上がらないまま終わった感じのお話ですわ。
マサーラー映画文法に則り、相変わらず主役NTR演じるラーマをいかにカッコ良く、頼もしく、美しく撮れるかに全力で振り切ってる映画ではあるので、主人公ラーマのカッコ良さに問答無用で引き込まれていけばいい作りではあるけれど、そのせいでヒロイン含むその他の登場人物が軒並み端役扱いになってしまってる感は強い。ラーマ自身も「口八丁で世の中を渡っていくお調子者やさぐれ野郎」と「正義感の厚い熱血人情家」を行ったり来たりしてるブレた性格設定になってる感もあるけれど、1人の中に2役入ったマサーラーヒーローのお得感演出としておいたほうがいいか…な? 初登場シーンの、ガラスのシャワーを受けて無傷のまま眼力だけで悪漢をボコボコにする問答無用さは大好きですゼ!
アクション・マサーラー映画の大ヒット作を連発するボヤパティ・スリーヌの本領発揮なアクションの数々と、何重にも意味を重ねて来る長口上と共に、映画を盛り上げてくれるノリノリの音楽もこの映画の魅力を大きくはね上げて来るポイント。
本作音楽監督を手がけるのは、1961年アーンドラ・プラデーシュ州イースト・ゴーダヴァリ県(*6)コヴールに生まれた、M・M・キーラヴァーニ(生誕名コドゥリ・マラカサマニ・キーラヴァーニ)。
父親は作詞家兼脚本家のコドゥリ・シヴァ・シャクティ・ダッタ。弟に作曲家カリヤニ・マリクと作家S・S・カンチがいて、親戚に脚本家V・ヴィジャイェンドラ・プラサードと映画監督S・S・ラージャマウリ親子、歌手兼音楽家M・M・スリーレーカーがいる他、妻M・M・スリーヴァッリは映画ラインプロデューサーを、長男カーラ・バイラヴァは音楽監督を、次男スリー・シンハは俳優をやっている。
1987年にテルグ人作曲家K・チャクラヴァルティとマラヤーラム人作曲家C・ラージャマニの助手として働き始め、著名な作詞家ヴェトリの指導を受けて「Collectorgari Abbayi」などの映画で映画音楽制作に携わる。1990年の「Kalki」で初音楽監督に就任したものの映画は未公開のままお蔵入り。その後、1991年のラーム・ゴーパル・ヴァルマー監督作「Kshana Kshanam(全ての瞬間)」で手がけた挿入歌全てがヒットチャートを席巻して一躍注目音楽監督になって、南インドを始めヒンディー語映画界からも声がかかるヒットメーカーに君臨する。同年に"マラガタマニ"名義で音楽監督を務めたタミル語映画デビュー作「Azhagan(美男)」で、タミル・ナードゥ州映画賞の音楽監督賞を獲得して以降、数々の映画賞、音楽賞を獲得。2022年の「RRR」では、インド国内のみならず米国アカデミー賞を始め世界中の映画祭で音楽賞を受賞する騒ぎとなった。
2023年には、国からパドマ・シュリー(*7)を授与されている。
いちおう話にドンデン返しが連続して「え? そっちに話を持ってくの?」って要素もてんこ盛りなんだけども、冒頭のヒロインとの恋愛もスーリヤヴァムシ家の養子に主人公がなっていく理由以外にあんまり機能してないし、そんな主人公が地方の派閥抗争の中でスーリヤヴァムシ家を盛り上げていく過程も結構やっつけ気味。最後の無茶なドンデン返しは「ウソー!!!!!!!!」ってビックリ仰天ではありましたけど、そこからのハッピーエンドも無理矢理すぎて「そんなで解決するなら、何十年も殺し合いしないでおいておくれよう」って感じでもある。その漫画的ハッタリ具合が、息もつかせぬ奇想天外さを生んでいるとは思えるので、次々と苦難に会いまくるNTR演じる主人公のテンポの良い喜怒哀楽をこそ楽しんでいればいい映画にはなっている。本作の4年前公開作「ヤマドンガ(Yamadonga)」あたりから痩せてきたNTRのシュッとしてはる動きの可愛さは、他の映画以上にアピールされてる気もするので、その一挙手一投足に耽溺するにはサービス満載な映画ですわ。決めポーズのいくつかは太ってた時の方が様になってた感じもある気がするので、いつか「このシーンは、太ってたNTRの方がいいか、痩せたNTRの方がカッコええか」選挙を開催したいもんです。ええ。ファンの間で票が割れそうに思われるのも、なんでそうなるのか探っていく楽しみになるとオモフノー(無責任に)
挿入歌 Vaastu Bagunde
「Dammu」を一言で斬る!
・本当の王族だと、手綱を持っただけで馬は従うものなんね…。
2026.3.27.
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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。スリランカとシンガポールの公用語の1つでもある。
*3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある。
*4 日種族。太陽神の孫でアヨーディヤー王朝を創建した伝説上の王イクシュヴァークを始祖とする、古代インド王族の系譜。
プラーナ文献によれば、叙事詩ラーマーヤナの主人公ラーマやシータ、仏陀が生まれた釈迦族などがこの系譜。
*5 月種族。月神の孫であり、太陽神の血を引く母から生まれたプラティシュターナ王プルーラヴァスを始祖とする、日種とは別系統の古代インド王族の系譜。
叙事詩マハーバーラタの主要人物たちであるバラタ族、牧夫神クリシュナを輩出したヤドゥ族などがこの系譜。
*6 現トゥールプ・ゴーダヴァリ県。
*7 第4等国家栄典。
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