インド映画夜話

タイガー〜伝説のスパイ〜 (Ek Tha Tiger) 2012年 132分
主演 サルマーン・カーン & カトリーナ・カイフ
監督/脚本 カビール・カーン
"狂いもしない愛、それは愛などではない"






 今日も世界のどこかで、各国諜報部の水面下の死闘と謀略が繰り広げられている…。
 RAW(Research and Analysis Wing=インド諜報部)最高のエージェント"タイガー"は、イラク北部ザーホーでISI(Inter-Services Intelligence=パキスタン諜報部)にRAWの機密情報を流す裏切り者を始末し帰国していた。
 帰国早々のタイガーに指令された次なる任務、それはアイルランドはダブリンのトリニティ大学教授のNRI(在外インド人)、キドワイ博士の監視。疑惑の段階ではあるが博士は、自身の開発したインドミサイル最新部情報をパキスタン側に流している疑いがあると言う。上司はタイガーに再三忠告する。「今回は誰も殺すな。お前が関わると必ず死人が出るんだからな!!」

 奇人として有名なキドワイ博士は、作家マニーシュ・チャンドラーを名乗って近づこうとするタイガーをあっさり無視。しかたなくタイガーは、博士宅で家政婦アルバイトにやってくるダンス科在学のインド系大学生ゾヤに近づき、博士の自室に入ろうと画策する。だが、スパイ一筋の人生を送ってきたタイガーは、素直に自分の夢を追いかけるゾヤとのやり取りで次第に彼女に感化され始め、いつの間にか彼女を愛するようになっていく…。

 しかし、そんな平和な日は長く続かない。ダブリンの宿泊先で突然何者かに襲撃されたタイガーは、同僚のエージェント ゴーピーと共にやはりダブリンにISIが多数潜伏している事実を確認する!!
 ゾヤの学校のダンスコンサートに教授と共に招待されたタイガーは、そのコンサート中、ゴーピーの「博士の家から機密情報が送信されている」と言う知らせを受け、会場を後にして無人のはずのキドワイ邸に駆けつける。だが、そこに待っていたのは…!!


ED Mashallah (神のご意志によって)

*もう、音聞いただけで自然と身体が動いてしまいまする。中東ミックスの妖しげさときたら、なんと素晴らしいことか…。


 2012年度ボリウッド公開作の中でぶっちぎりの最大ヒットを飛ばした、5カ国に渡るスパイアクションの超大作登場!
 日本でも2013年にボリウッド4の1作として一般公開。公開前に監督のカビール・カーンが来日してニュースになっておりました。

 カビール・カーン監督は、ドキュメンタリー映画から出てきた人で、ドキュメンタリー時代にはインド独立闘争チャンドラ・ボースの軌跡や、現代のタリバンの暗躍などを題材にした映画を制作。ディスカバリーチャンネルでも放送されていたそうな。2006年に「Kabul Express」で娯楽映画界に入ってから、社会派な題材を入れ込んだ娯楽映画を制作し続けている新進気鋭の映画監督。監督作3本目にしてボリウッド最大ヒットメーカースターのサルマーン・カーン主演作を担当するあたり、相当な実力者である…?

 本編は、最初のイラクを舞台とした(ロケはトルコらしい)ムチャクチャなアクションを導入にして、前半はダブリンでのゆったりしたロマンス劇、後半からイスタンブールでの2人の再会と愛の逃走劇と言う構成で、世界を股にかける印パのスパイ大合戦に拍手喝采。

 元恋人同士のサルマーンとカトリーナのコンビは、全く問題ないどころか最高でんがな。よくもまぁ、ヒーローだけでなくヒロインにも上階からのダイビングなんかさせちゃうよね!(本人かどうかは知らんけど) まさに映画全編サルマーン&カトリーナのためにあるようなノンストップ・アクション活劇大恋愛映画。
 それぞれの諜報部の丁々発止なやり取りや、「誰も殺すな」と言うキーワード通り愛の逃避行で世界中を駆け抜ける二人が、追手を(できるだけ)殺さずに振り切るあたりも粋でございますが、いつの間にか二人の凄腕エージェントを追ううちに、因縁の印パ両諜報員が結託して抜群のチームワークを発揮する所もナイスすぎて大笑い。

 サルマーンの同僚のRAWエージェント ゴーピー演じるランビール・ショーレイのツッコミ加減や必死になってパキ側と先を争って主役二人に追いすがる姿が微笑ましい感じで、どっかで見た顔だなぁ…と思ってたら日本公開された「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」のハシ導師やってた人だったのねぇぇぇ!!

 前半のタイガーが見せる、日常生活でのスパイの暮らしも微笑ましく新鮮。
 イケてないオッサンを演じるサルマーンが似合いすぎるのもアレだけど、無駄にぶっとい筋肉を見せびらかしつつ「いやいや、正体も口に出来ない小市民ですから」ととぼけるゆるさがええ感じ。
 ゾヤとの関わりで、今まで「国のためだから」と自分を犠牲にして来たことを自覚したタイガーが、ついには再会したゾヤとの禁断の愛のために、あっさり国(&仕事道具の携帯)を捨てて逃げる姿は壮快。いまだに爆破テロが後を絶たない緊張の印パ関係を背景にしながら、そのどちらの肩を持つでもなく「誰もが幸せに暮らせる日が来ることを」待ち続け、それまで延々と逃げ続けると宣言する伝説のスパイたちに、幸多からんことを!


挿入歌 Banjaara (彷徨い人よ)

*このアイリッシュとインディアの混交した音楽と色彩の美しさよ! なんてオレ得な映像でしょー!!



受賞歴
2012 People's Choice Awards India 作品賞・主演男優賞・主演女優賞・アクション男優賞(サルマーン)・ソング・オブ・ジ・イヤー賞(Mashallah)
2012 BIG Star Entertainment Awards 年間最優秀娯楽映画賞・スリラー映画男優賞(サルマーン)・アクション映画女優賞(カトリーナ)・娯楽音楽賞
2013 IIFAインド国際映画批評家協会賞 特殊効果賞(パンカジ・カノープル他Tata Elxsi)
2013 Zee Cine Awards ソーシャル・メディア賞(サルマン/「Dabangg 2」と共に)
2013 Star Screen Awards 観客選出主演男優賞(「Dabangg 2」と共に)
2013 Ghanta Awards 最悪主演男優賞(「Dabangg 2」と共に)

2013.6.14.

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