インド映画夜話

Fashion 2008年 178分
主演 プリヤンカ・チョープラー & カングナー・ラーナーウト & ムグダー・ゴートセー
監督/製作/脚本 マドゥル・バンダールカル
"知ってるかしら? この街は、毎日200人の女の子がトップモデルを目指して集まってくるのよ?"





 北インドの連邦直轄領"美の都"チャンディーガル出身のメーグナー・マートゥルは、美人コンテスト優勝を機に、両親の反対を制してスーパーモデルを目指し一人ムンバイに出発する。

 ゲイのファッションデザイナー ローヒトやモデルのジャネットと知り合ったメーグナーは、彼らの助力でファッションモデル業界の様々な重鎮たちとのコンタクトをとり、助言を受け、励まされ、徐々に頭角を現していく。一方で、地方紙の下着グラビアに出演した事で世話になっていた叔父夫婦の家を追い出されたメーグナーは、モデル仲間のマーナヴ・バシーンに助けられ彼と同棲するようになり、自然2人は恋人同士に…。
 そんな中、彼女に注目していたトップモデル事務所オーナーのアニーシャー・ロイの勧めで、ファッション業界を操る世界的ブランド パナーシュ・インディアのオーナー アビジート・サリーンの後援を受ける事になったメーグナーは、彼の意向により念願の"ディーヴァ(女神)"と讃えられる国内最高のスーパーモデル パナーシュ専属モデルに選抜される! 彼女以前にその地位にいたヤク中で高慢なショナーリー・グジラールは、突然の解雇状を突きつけられ一気に転落人生へ…。

 ある日、偶然メーグナーの前に現れたショナーリーは彼女に忠告する。「目新しさがあるうちはイイだろうサ…いつだって最初は気分がいい。でも結局、いつかは飽きられるんだ。気をつけな。あたしには見えてるんだ。あんたの目の中にそれが…」
 その予言通り、頂点に上り詰めたはずのメーグナーの人生もまた、徐々に狂い始めていく…。


挿入歌 Fashion Ka Jalwa (ファッションは魅惑)

*ファッションショーその1。


 2000年度ミス・ワールドでもあるスーパーモデル出身のプリヤンカを主役に据えての、ファッションモデルたちの栄枯盛衰を描く映画。インドのファッション界を騒がせた、数々の実際の事件をオマージュ的に配置した社会派映画でもある。

 なにはなくとも、主役プリヤンカの演技力、パワー、美貌、そのオーラがいかんなく発揮された映画で、ラストのプリヤンカの、ファッションショー全体どころかスクリーンの向こうの観客・メディア全体を突き通すかのような鋭い眼力は、この映画を支える全てを象徴している。
 ファッション業界を描くにあたって、様々な舞台・衣裳・機材・スタッフを導入。衣裳デザイン担当のナーレンドラ・クマール・アーメドを始めとする20人以上のデザイナー&スタイリスト、30人以上のヘア&メイクアップ・アーティスト、多数の協賛企業が本場のモデルを使って行なうファッションショーのシーンの数々は圧巻。
 メーグナーを導く先輩モデルのジャネット演じるムグダー・ゴートセーもファッションモデル出身で本作が映画デビュー作ながら、一筋縄では行かない役を軽快にこなし、プリヤンカ、カングナーともタメをはる演技を見せてくれます。
 アングラ臭の強いヤサグレ演技をさせればおそらくボリウッド女優界トップの迫力を発揮する大型新人女優カングナー・ラーナーウトは、本作で数々の助演女優賞を獲得。彼女の演じる頂点から転落するスーパーモデルと言う役は、実在のモデル ギータンジャリを元にしているそう(*1)。

 今までのボリウッドではタブー視されていた同性愛、不倫、肌の露出(トップレス)、ベッドシーン、中絶なども次々と登場するけど「ファッション業界の裏側ってこんなだよ」と言う暴露的演出・脚本術が報道映画的な匂いも醸し出す。
 物語そのものはわりと典型的な作りではあるものの、そこで描かれる事件の数々が実際に起こった事件を元にしていると聞けば俄然映画の重みが違ってくる(どこまでが元ネタありなのかは知らないけど)。映画自体も、登場人物の感情面などはあまり映そうとしないで客観的に距離を置いた撮り方をしているのも、そう言ったコンセプトをうまく生かしている…んかな?

 劇中、さまざまなボリウッド業界人が特別出演する中、おもっきりでかでかとマドゥル・バンダールカル監督本人が登場するからビビる。そこにかぶる台詞が「彼は今、リアルなファッション業界を描いた映画を撮ってるんですってよ」とか楽屋落ちにもほどがありますッテバ!


挿入歌 Mar Jawan (人生を捧げましょう [貴方への愛ゆえに])

*ファッションショーその2。




受賞歴
2009 National Film Award 主演女優賞・助演女優賞(カングナー)
2009 Filmfare Award 主演女優賞・助演女優賞(カングナー)
2009 Star Screen Award 主演女優賞
2009 IIFAインド国際映画批評家協会賞 主演女優賞・助演女優賞(カングナー)
2009 Stardust Award 年間女優賞(プリヤンカ [Dostanaと共に])・助演女優賞(カングナー)
2009 Apsara Film & Television Producers Guild Award 主演女優賞・助演女優賞(カングナー)・新人女優デビュー賞(ムグダー・ゴートセー)
2009 Golden Kela Awards 最悪助演女優賞(カングナー)・野暮映画賞
Bollywood Hungama Surfers Choice Award 主演女優賞

2013.3.19.

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*1 90年代に活躍したトップモデルながら、人気の低迷と共に表舞台から姿を消し、その後、路上で物乞いしてる所を発見され世間を騒がせたとか…。