Googly 2013年 143分
主演 ヤシュ & クリティ・カールバンダ
監督/脚本/台詞/原案/カメオ出演 パヴァン・ワデヤール
"予測不可能な恋の歯車は今、回り始める"
その日、国際的に名を馳せる実業家シャラトが意識不明のまま病院に搬送された。
同じ救急車に同乗してシャラトの緊急手術を見守る女性スワティは、差し迫る危機を予見しながら、涙ながらに彼との出会いを振り返る…。
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かつて、マイソール(*1)の薬学生だったスワティは、努力の甲斐あってバンガロール(*2)の大学で開催されるインド経済会議に大学代表として出席する事になった。
その中で彼女は、会場の大学首席ながらも全教授陣・生徒たちに恐れられる男子学生…シャラトを目撃する。女嫌いで有名なシャラトは、女子生徒からの人気も高いながら孤高の存在。いつもと同じくふざけた調子で学生経済会議に参加して居眠りを始めるのだが、彼を起こしに来たスワティの顔が、その瞬間からシャラトの目に焼き付いてしまう…!!
その後の独特のスピーチでお互いを意識し始めた2人は、学生会議の内容やお互いの恋愛観の違いなどを話題に仲を縮めて連絡先を交換するようになるも、ふとしたすれ違いの時にそばにいた男子学生へのシャラトの暴力を見たスワティは、それまでの恋愛関係を否定し、彼に罵声を浴びせて関係を絶ってマイソールへと帰ってしまう…。
その後、怒りの収まらないシャラトはマネジメント業に集中し、2年の間に世界的な実業家に成長して外国で暮らすようになっていた。
しかし、彼は何度となくスワティに電話をかけようとして果たせないまま。父親との電話の際にも「スワティには悪いことをしたと思っているんだ」と心情を吐露しながらも、そのスワティへの連絡には踏み切れないでいた。
「インドには帰れないよ、父さん。だって、あれは僕の初恋だった。彼女を忘れるなんて僕にはできない…」
挿入歌 Googly Gandasare Keli (グーグリー、聞けや野郎ども)
タイトルは、英語で「(予想と違う方向へ)カーブする球」の意で、クリケットで用いられる用語。劇中、主人公が自分の性格について要約する時に出てくる単語になっている(*3)。
タイトル下に、英語で「Love Spin !!!」の副題がついている(*4)。
2013年度最高売上を記録した、カンナダ語(*5)映画。
2019年の同名ベンガル語(*6)の公用語)映画とは別物、のはず。
冒頭から、不穏な形での主人公2人の危機を描くマサーラー演出的な始まりをする映画ながら、お話は完全に古き良きラブコメのそれで、映画賞にも輝いたカッコええアクションシーンは中盤とラストの2回のみ登場という、そこまで血なまぐさい要素は出てこない良心設計。
ある意味では、アクションにこそ映える主演ヤシュの長身&長ーい手足があんまり活かされないお話ではあるものの、その分饒舌な自分語り大好きな主役2人の可愛らしさがどこまでも続いていく爽やか青春映画であり、黄金パターンな恋愛の進展を彩る喜怒哀楽のバランスがちょうど心地よい、基礎のしっかりした恋愛劇。
前半はヒロイン スワティの視点で大学生の恋愛模様が描かれ、そこでのすれ違いから別れてしまう2人のその後を描く後半は、悔恨に沈むシャラトの視線で人生の浮き沈みを描いていくヒューマンドラマ的なノリの映画へと変わっていく。
まあ、劇中に出てくる経済フォーラムにおける大学生たちのスピーチ大会が、なにを評価してなにを議論しているのかよくわからない主役2人の世界のみに集中したお飾り舞台になってるのがなんだかなあだし、2回に分けて登場するアクションも付け足し感が満載ながら、なければないで寂しいし、ヤシュのサルマン・カーン・パロディネタも楽しすぎて「もっとやってー」って言いたくなるくらいにはノリがいい映画で、スワティ演じるクリティ・カールバンダの絶世の美女度もヤシュに負けず劣らずの存在感を発揮し、お話的にも両者を等価値で(ある程度強引さはあるけれど)描かれる目端の広さが、その恋愛青春劇を美しく盛り上げる基礎体力が麗しい。
その主人公シャラトを演じた"ロッキング・スター"ヤシュ(生誕名ナヴィーン・クマール・ゴウダ。*7)は、1986年カルナータカ州ハーサナ県ブーバナハリ村生まれ。父親は道路交通公社に勤める運転手だそう。
幼い頃から俳優を志望して、舞台演劇やダンスコンストなどの学内イベントに参加していたものの、公務員にしたい親の指示で高校進学。それでも俳優の道を諦めないで両親を説得し、16才で州都バンガロールに単身移住(*8)して助監督で映画界入り。劇団ベナカにも入団して男優兼雑用スタッフとして働きつつ演技を特訓。舞台俳優活動をしながら芸術学位を取得。同じ年にTVシリーズ「Uttarayana」に出演してTV男優として活躍し始める。以降、TV界での活躍で得た収入を元手に両親をバンガロールに呼び寄せて同居。映画界からもオファーが来始めるものの、7本のオファーを脚本を見た上で断ったため、「傲慢な新人」と叩かれていた。
その後、ついに2007年公開のカンナダ語映画「Jambada Hudugi(誇り高い女の子)」に出演して映画デビュー。TVドラマでの彼の活躍を見た男優シャーシャンクの推薦を受けて、続く08年の「Moggina Manasu」に出演して、フィルムフェア・サウスのカンナダ語映画助演男優賞を獲得。同年公開作「Rocky(ロッキー)」で主演デビューを果たす。以降も、浮き沈みはありながらカンナダ語映画界で活躍し続けて多数のヒット作とともに多数の映画賞を獲得。年間最大ヒットを飛ばした本作と同じ2013年には、「Chandra(チャンドラ)」にゲスト出演、「Raja Huli(ラージャ・フリ)」に主演している。
2016年に、TVドラマ時代から共演の多い女優ラーディカー・パンデットと結婚して世間を賑わせ、翌17年に夫婦で非営利の社会福祉団体YashoMarga財団を設立して数々の福祉事業に協力している。
2018年の主演作「KGF: Chapter 1」と2022年の続編「KGF: Chapter 2」の記録破りの大ヒットによって、全インド的な人気を獲得。カンナダ語映画界における最高額出演料の俳優に君臨し、ファッションレーベル「Villain」を立ち上げ、プロのカバディチーム「ベンガルール・ブルズ」代表も務めている。
本作の監督を務めているのは、1987年カルナータカ州トゥマクール県クニガル生まれのパヴァン・ワデヤール(本人曰く、ベラガヴィ県アトゥニ・タルク出身とも)。
商学士を取得後、バンガロールの会社に8ヶ月間勤務した後に映画界への転職を志望して、2010年公開作「Pancharangi 」から助監督を務めて映画界入り。2012年の「Govindaya Namaha(ゴーヴィンダ様に敬礼を)」で監督&プロデューサー&脚本&作詞デビューしてSIIMA(国際南インド映画賞)監督賞他を受賞する。
翌13年には本作監督を勤めて同じ映画賞を獲得するとともに、監督デビュー作のテルグ語(南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語)リメイク作「Potugadu(英雄)」でテルグ語映画界で監督&脚本&作詞&カメオ出演デビュー。2014年のヴィルー・ヴェーレンドラ監督によるカンナダ語映画「Preethi Geethi Iyaadi」で本格的に主演デビューもしていて、以後もカンナダ語映画界で活躍中。
映画前半のシャラトの「女嫌い」設定が、ただの「運命の人を待っていた」以外には特に機能しない設定なのが「?」ではあるし、そこに至る「僕は恋愛はしても結婚しない」の自分語りにやや「大人から見た無理矢理な若者像」が見えなくもないんだけど、そこに興味を示して特異な恋愛観にストイック性を見出してくるヒロイン スワティのいじらしさも可愛いから全部許したくなる。うん。両者共にデカい目玉をぎょろぎょろ動かす姿の麗しさよ。
ヒロインが追いかけ回す恋愛を描く前半に対しての、ヒーローがヒロインを追いかける恋愛を描く映画後半の感情のすれ違い具合も黄金パターンでありながら切なく、どこまでも2人が可愛いんだから、演出の勝利か芝居の勝利か、はたまた撮影の勝利か。その障害となるのが、2人の頑固さであるところに大人になった側から見た「素直だったあの頃」を見る大学生たちへの憧憬ってものもあるだろか…と思ってしまうのは深読みのしすぎか。
なんにしても、その長身で愛嬌を振りまく主演ヤシュのおとぼけ演技は、なんか第2のラーナー・ダッグバーティ的にも見えてくる感じ…とか言うと、それぞれのファンに怒られるだろかどうだろか。
挿入歌 Eno Eno Aagide (なにかが起きている…)
受賞歴
2014 SIIMA(South Indian International Movie Awards) 監督賞・作詞賞(パヴァン・ワデヤール)・撮影賞(ヴァイディ・S)・格闘シーン振付賞(ラヴィ・ヴァルマ)
「Googly」を一言で斬る!
・頭怪我してる人の頬に平手打ちは、さすがに全アウトだとオモフ。うん。
2025.7.19.
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