インド映画夜話

Housefull 2010年 155分
主演 アクシェイ・クマール & ディーピカ・パドゥコーン
監督/脚本 サジード・カーン
"物事を正当な方向に導く嘘なら…その嘘は、もはや嘘ではない! …はず"







 大凶男アールーシュの仕事は、マカオのカジノでツイテる客の運気を吸い取ること。どんなにツイテる客も、彼が側に来ただけでツキもなくなり有金全部をスッてしまうのだ!
 そんな自分に嫌気がさしたアールーシュは恋人へのプロポーズも大失敗し、傷心の中、幸運男のディーラーの親友バブー・ラーオ(通称 ボブ)を頼って単身ロンドンへ…。

 アールーシュが来た当初、ボブとヘータルのバカップル夫婦は彼の大凶ぶりに散々な目に遭うが、彼が結婚で自分の運気を変えようとしているのを知り、職場のカジノオーナー キショール・サームターニーが娘ディーヴィカの結婚相手を捜していることから、2人のお見合いを企画。ディーヴィカも2つ返事で結婚を承諾して、2人はイタリアのプッリャへ新婚旅行に出発した…のだが、実はディーヴィカには別に本当の恋人がいて、駆け落ちのチャンスをねらっていただけだったのだ!

 自分の不幸さにとことん愛想がつきたアールーシュは、海に潜って自殺を図るが、そこに身を挺して彼を救う美女サンディ(本名サンダーリヤ・バーギヤラクシュミー・ヴェンカテシュワリ・バサッパー・ラーオ)が出現!
 ホテルオーナーの嘘やボブ&ヘータル夫婦の気遣いもあり、なんだかんだで2人はお互いに愛し合うようになるも、英国軍人のサンディの兄クリシュナやヘータルと絶縁中の父親の登場とかで、事態はまたまた大混乱し始める…。


挿入歌 Oh Girl You're Mine



 タイトルは英語で「満員御礼」。
 大ヒットに乗って続編「Housefull 2」が2012年に公開された。

 全編これドリフかってくらいコテコテなコメディ。どちらかって言うとチャップリンあたりのサイレント時代のノリ? チャップリン・コメディへのリスペクトととるか、今のヴィジュアル全盛時代にこれをやってしまうボリウッドのおおらかさととるか…。個人的には、1つ1つのシークエンスが間延びしてるように見えるので、圧縮して緩急が欲しい所…だなぁ。
 監督を務めるのは、これが監督第2作目となるサジード・カーンで、振付師兼映画監督として大活躍中のファラー・カーンの弟だそうな。

 本作の前年に「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」で共に主演しているアクシェイとディーピカは、今回も純真な大凶男とそれをサポートする元気娘の役。
 この頃、ヒット作に恵まれないアクシェイの久々のヒットともあって、素直で素朴な不幸男と言う役を清々しいほどに演じきっている。
 ジェームズ・ボンドばりの、妙にわかりやすくゴテゴテした嘘発見機を持ち出すサンディの兄クリシュナ演じるアルジュン・ランパールも、アクシェイを食いかねないほどの迫力だけど、嘘発見機の脚本的な使い方が素晴らしかったからか、シブい脇役をクールに決めていたゼ。

 ヒロイン3人の中で異彩を放っていたのは、ヘータル役のラーラ・ダッタ。
 リテーシュとともにバカップル夫婦を存分に演じきり、何故かいつも胸元の空いたセクシー路線の衣裳で走り回り(*1)、ほとんど過剰演技に近い感も匂わせるコメディエンヌぶり。器用貧乏女優と言われるわけがわかった気もするけど、その健気な姿勢をボクは応援してるよ姉さん!
 サンディ役のディーピカは、まさに正統派ヒロインと言う位置で、演技もダンスも美貌もいかんなく発揮していたけど、実はマラリアからの病み上がりでのクランクインだったそうで…。映画って大変だね。

 お話は、前半は人間関係の設定を組み上げる段階で、色々なギャグシーンの応酬。後半は、それぞれのカップルの嘘がどんどん拡大してく様をおもしろおかしく描いていく感じ。
 英国王室すらもネタにして、しょーもないギャグを作り上げているのを見ると、あぁやっぱりボリウッドのコメディ映画のノリは、イギリスよりもアメリカ映画に近いなぁ…なんて思うわけです(*2)。
 前半に出て来る動物ネタなんかはわりとテンポよく強烈。猿とアールーシュのどつき合いが笑えて笑えてしょうがない。
 あと、イギリス育ちのディーヴィカ(演じるのは、やっぱりイギリス系インド人のジアー・カーン)が、新婚夫婦の部屋に入る時の儀式を悪気なくぶちこわすシーンもツボ過ぎ。

 本作は、公開直後に1998年のタミル語映画「Kaathala Kaathala」のパクリではないかと告訴され、裁判沙汰になったそうな。
 さらに、ポポッポー様からご指摘頂きました所、劇中のミュージカル「Aap Ka Kya Hoga」も、1981年の映画「Lawaaris」で使われた曲の無許可なカバーであると告訴され使用不可の裁決が下り、急遽そのシーンがカットされたそうな。
 その後、一旦使用許可が出て映画館上映では復活したけれど、DVD版では基本「Aap Ka Kya Hoga」はカットされてる…みたい?(このシーン、リテーシュと一緒に「Aladin」で主役を務めたジャクリーン・フェルナンデスがゲスト・ダンサーで出演してるんだけどねぇ)


挿入歌 Papa Jaag Jaayega (パパが起きちゃう)



受賞歴
2011 IIFAインド映画批評家協会賞 コメディ演技賞(リテーシュ・デーシュムク)
2011 Stardust Award スター・オブ・ジ・イヤー男優賞(アクシェイ Tees Maar Khanに対しても)・コメディ映画賞・コメディ演技賞(アクシェイ)
2011 Ghanta Awards 最悪監督賞・最悪助演女優賞(ラーラー・ダッタ[Blue、Do Knot Disturbと共に])
2011 Golden Kela Awards 最悪助演男優賞(アルジュン・ランパール 「We Are Family」と共に)

2012.2.24.


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*1 誰やねん、ミレニアム・ミス・ユニバースをカジノのバニー姿にしようなんて言ったヤツ。

*2 インド映画を語る時には、よく北インドはドリフ的、南インドは吉本的とかって説明されたりするけど。