インド映画夜話

ジャンボ (Jumbulingam 3D) 2016年 125分?
主演 ゴークルナート & アンジェナー・キルティ & ベイビー・ハンシカー
監督/脚本 ハリ(製作総指揮/編集も兼任) & ハレシュ
"日本へ…3Dの旅!!"






 日本の富山県に住む日印ハーフの小学生ハムシは、ある日の下校途中に突如誘拐されてしまい、両親に多額の身代金が要求される…!!

 同じ頃、タミル・ナードゥ州に住む青年ジャンボ(本名ジャンブリンガン)は、村にやって来たマジシャンのヴィッタルに心酔して弟子入り。マジックの数々を学んでいたが、ドジで物覚えが悪いために周りからバカにされまくりの毎日を過ごしていた。
 ヴィッタル先生が東京のタミル人協会主催マジックショーに招待された事で、ジャンボは、唯一の肉親である母親を置いて先生と共に日本ヘと旅立っていく。そこでショー直前に急病で倒れた先生に代わり突如マジックショーの舞台に立つことになるが、焦るジャンボの一風変わったパフォーマンスは大爆笑を誘い、生まれて初めて喝采を浴びて大成功!
 ショーのご褒美に、次の公演まで他の助手と一緒に日本観光に出向くジャンボだったが、富山の山奥で助手のアイリーンともどもバスに置いてけぼりをくらい、無一文で言葉も通じない異国に取り残されてしまう。当てもなく東京を目指そうとする2人は、知らず知らずハムシ誘拐の身代金受け渡し場所にやって来る…!!


挿入歌 Whistle Podu

*ヨーコソ、ミンナサンダー♪

 全編、本格的日本ロケで(日本国内で)話題を呼んだタミル語(*1)3D映画。2014年の富山ロケ開始から、富山県のバックアップや主要登場人物を含めた100人以上(*2)の日本人エキストラの参加もあって、日本のニュースでも紹介されておりました。
 当初、タイトルは「Jumbo 3D」と発表されていたものの、タミル語タイトルでないといけないと言う事で途中から「Jambulingam(=主人公の名前)」に変更されたそう。

 監督は、ハリ&ハレシュこと、K・ハリ・シャンカルとハレシュ・ナラーヤンの2人。
 K・ハリ・シャンカルは、04年の「Azhagesan」で助監督兼ノンクレジット出演で映画デビューした人で、10年の「Orr Eravuu(一夜)」で製作・出演・編集・脚本を担当し、同じ映画で脚本・出演を担当したハレシュ・ナラーヤンともども、監督デビュー(*3)。以降、ハリ&ハレシュと言う監督デュオを組み、本作が4作目の監督作となる。
 主役ジャンボ役には、ものまね芸人から12年のハリ&ハレシュ監督作「Ambuli」で俳優&主演デビューとなったゴークルナート。同じくハリ&ハレシュ監督作「Aaaah」(*4)を挟んで3本目の主演作となる。
 ヒロインのアイリーンには、航空会社勤務からモデル兼女優に転身したアンジェナー・キルティ(別名アンジャナー)。14年の「Azhagiya Pandipuram」で映画&主演デビューし、本作が4本目。
 そして、もう一方の主役ハムシを演じたのは、これが映画デビューになる子役ベイビー・ハンシカー。八王子マサラフェスでの先行上映にも駆けつけて、話題を振りまいておりました。

 66年の「Love In Tokyo」や93年の「ボンベイ to ナゴヤ(Aye Meri Bekhudi)」など、劇中のほとんどが日本舞台のインド映画は過去にもあったものの(*5)、インド公開に先駆けて2016年に東京は八王子マサラフェスで世界初公開(*6)されたことで、インド本国より先に日本公開されたインド映画となった(*7)。その後、同年5月にインド本国及び市川妙典で3D公開決定!

 日本人からすると色々ツッコミ所満載な映画ながら、タミル語映画の中で日本がこう見えてくるのか…とか、インド人ダンサー&振付師と共に日本人が色んな衣裳で群舞してたりすると「おお、日本人ダンサーがホントにインド映画みたいに踊ってる!」と感無量だったりします。
 富山県の全面協力もあってか、風光明媚な景色もきっちりおさえて富山の観光ムービーとしてもよく出来てるし、そこから唐突感の拭えない伏線の数々があれやこれやと物語をこんがらがしてくれるのもご愛嬌。出てくる日本人もインド人同様に楽しそうに演じてるのも嬉しいし、日本人向けサービスなのか、やたらラジニ映画ネタがドカンドカン盛り込まれてるのも楽しすぎる。13年公開の富山ロケタミル語映画「Theeya Velai Seiyyanum Kumaru (炎のように働け、クマール)」でも使われたロケ地も出て来たりして、富山が、日本におけるタミル語映画の聖地として順調に成長して行ってるように見えるのもスバラしか。見てると、インド人でなくても富山に行ってみたくなりもす(*8)。

 インド側への日本アピールとしては、相撲レスラーや「ムトゥ」と名乗るサムライ(?)、温泉や観覧車、お寺、お墓、神事、着物、コンビニ、ラジニファン(注目シーン!!)、テツandトモの着メロ(なぜに!?)、パチンコとかも出て来て「ほぅ」って感じ(*9)。
 お寺(ロケは高岡市勝興寺)でハムシがお祈りしてる時に、「ブッダ」と呼びかけてるのがインド映画の中では新鮮。ちゃんと神様と仏様を区別してくれてマスヨ!!
 にしても、ヤクザが大量の拳銃で武装してるのは「闇市場で手に入れたもんかね」って百歩譲って納得するにしても、ハムシの親も自分やボディーガードに拳銃持たせてるのは、どんな仕事してる設定なんだろうー!


挿入歌 Naaney Naana

*ハイ、劇中の富山の名所、いくつわかりますかー!?







「ジャンボ」を一言で斬る!
・言葉の疎通に苦労するハムシのお母さんから「日本でタミル語も英語も通じないのがなぜなのか」を説明するシーンがあるけど、そんなに意外カー! 観光に来るときは気をつけてネー!!

2016.4.1.
2016.5.4.追記

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*1 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*2 タミル側のプレス発表によると。
*3 この映画は、さらにクリシュナ・シェーカルと言う人も監督を務めている。
*4 この映画、日本人キャストも参加してるんだってさ。
*5 タミル語映画界では初? 過去、タミル語映画でも日本ロケ映画はいくつかあるけども。
*6 1日1回の2日間ブルーレイ上映。
*7 それこそ史上初? 一部日本語字幕が乱れてしまっていましたけども。
*8 あ、でも大蛇に絡まれたり銃刀法無視のヤクザに追いかけられたりしたくはないなあw
*9 パチンコ店は、「ボンベイ to ナゴヤ」でも執拗に出て来たモチーフでしたっけw