インド映画夜話

何かが起きている (Kuch Kuch Hota Hai...) 1998年 185分
主演 シャー・ルク・カーン & カージョル & サナ・サイード
監督/脚本 カラン・ジョーハル
"なにかが起きている…。亡き母の手紙。両親の青春時代。アンジェリは、父親のためにアンジェリを探す…"




ファンが作った偽トレイラー。


 ラフールが妻ティナと死別してから8年。2人の間に産まれた娘アンジェリは、父の愛を一身に受けて元気に育っていた。

 アンジェリの一番の楽しみは、誕生日ごとに渡される亡き母からの手紙。8才の誕生日に渡された最後の手紙には、大学時代の両親の出会いと、親友のアンジェリの事が書かれていた…。

 ラフールとアンジェリは、大学でも知られた親友同士。よくバスケ勝負でケンカばかりしているいいコンビ……ほとんどアンジェリの一人勝ちだけど。
 ある日、男勝りで有名なアンジェリは学長に「オックスフォードから娘が転校して来るから、面倒を見てやって欲しい」と頼まれる。

 学長の娘ティナが転校してきた日、いつものようにアンジェリにちょっかいかけていたラフールは、アンジェリの側にいる彼女に一目惚れ。3人は、すぐに親友同士となって大学生活を楽しんで行く。

 その後、ラフールはシェイクスピア講義の中で「"愛"とはなにか?」と聞かれて「愛とは…友情のこと」と言い切る。これを聞いたアンジェリは、初めて親友と思っていたラフールへの気持ちに気づき始めるのだった。しかし時すでに遅く、ラフールとティナの仲は深まる一方。アンジェリは、2人の仲を見るに耐えずに故郷へ帰ってしまう…。

 産まれてくる娘に親友の名をつけたティナは、自分がラフールとアンジェリの友情に壁を作った事を後悔していた。ティナの手紙は「お父さんとアンジェリを再会させてあげて」と強く繰り返す。幼いアンジェリは、母親の思いに打たれて父親をけしかけてアンジェリ探しを始める。
 しかしその頃、当のアンジェリには婚約者との結婚式が迫っていた…。


挿入歌 Saajanji Ghar Aaye (結婚式は帰ってきた)



 タイトルの意味は「何かが起きている」。通称「KKHH(または"クチホタ")」。ボリウッド史上に輝く、"全印が泣いた"傑作ラブロマンスである!

 ボリウッドの劇的変化は、90年代末期に起こる。
 それは丁度この「クチホタ」や「Dil Se..(ディル・セ 心から…)」「Hum Dil De Chuke Sanam(ミモラ 〜心のままに〜)」が公開された1998〜1999年頃。インド国内の経済政策の転換から映画産業も拡大発展して、ボリウッドは新世代に突入してきていた(*1)。

 この3作に共通するのは、製作資金の高騰と映像機材のハイスペック化(ほぼハリウッドと同レベルの水準)・基本ラブストーリーながら入れ子構造の複雑な脚本(前半と後半で大きく雰囲気を異にする構造の映画)で、それまでのボリウッドに輪をかけたド派手な撮影が可能になって、一気にワールドワイドの人気を獲得して行く事になる(*2)。

 「クチホタ」は、前半はハッチャケたアメリカナイズな学園ロマンスもの。後半は、幼いアンジェリのしむけるノスタルジックな再会と恋と三角関係のロマンス劇。主役は天下のシャールクとカージョル(*3)。

 前半のセカンドヒロイン ティナを演じるラーニー・ムケルジーはこの時まだ映画出演2作目ながら、めっちゃ綺麗! 美人で知的で洒落っ気もあって…と言うヒロイン像そのままに登場。あぁ、これ1本でスターダムにのし上がり、その後主演女優として活躍するラーニー姉様のお美しさよ。従姉妹に当たるカージョルとは仲が悪いそうだけど、それでも仲睦まじく親友を演じる2人にオラぞくぞくすっゾ。

 後半のセカンドヒーロー アマン演じるのはビッグ・カーンの1人サルマン・カーン(*4)。ハマり役なプレイボーイっぷりを遺憾なく発揮しながら、話に花を添えるだけで引くときは引く粋な婚約者を存分に演じている。「オレはハンサムだからな!」と、小粋にイケメンを演じながらキレのあるダンスを披露してくれる所は、さすがサルマン(*5)。

 日本では、2004年に東京国際映画祭にて「何かが起きている」のタイトルで上映された。


挿入歌 Kuch Kuch Hota Hai (なにかが起きている)

*恋の始まりに、脈絡なくヨーロッパに飛ぶ三者三様の幻想風景の混交。
 あぁ、現実と幻想が等価値化され、さらに別の人物の幻想が入り込んでくるインドの認識論の懐の広さよ…。



受賞歴
1998 Filmfare Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞(サルマン)・助演女優賞(ラーニー)・美術監督賞・脚本賞
1999 Zee Cine Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・助演女優賞(ラーニー)・音楽監督賞・女性プレイバックシンガー賞(Kuch Kuch Hota Hai)・作詞賞(Kuch Kuch Hota Hai)・年間活躍演技賞(ラーニー)
1999 Star Screen Awards 作品賞・監督賞・音楽監督賞・コメディ演技賞(アルチャナ・プーラン・シン)
1999 Bollywood Movie Award 作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・音楽監督賞・男性プレイバックシンガー賞(Kuch Kuch Hota Hai)・女性プレイバックシンガー賞(Kuch Kuch Hota Hai)・衣裳デザイン賞・振付賞
1999 National Film Awards 金蓮最優秀人気エンターテイメント賞・女性プレイバックシンガー賞(Kuch Kuch Hota Hai)
Sansui Viewer's Choice Movie Award 主演男優賞・主演女優賞

2010.4.28.

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*1 日本でインドブームを起こしたタミル映画の「ムトゥ」は90年代中頃。まだ、映画界が拡大する前の事である。それであのテンションかよ!
*2 KKHHもミモラも、インド国内外で大絶賛され、ディル・セのみインドではコケたものの外国で大ヒットを飛ばしたそうな。
*3 この2人は、以前にもコンビ主演で「Baazigar」「Dilwale Dulhania Le Jayenge」に出演してたりする…どちらも未見だけど…。
*4 彼にシャールクとアーミル・カーンを並べて、ビッグ・カーンと言うそうな。
*5 …って名前を聞くと、どうしても指輪物語を思い出してしまう私。