インド映画夜話

弾む心を道連れに (Lekar Hum Deewana Dil) 2014年 140分
主演 アルマーン・ジャイン & ディークシャー・セート
監督/脚本 アリフ・アリー
"これで最後だろうから、お願いを1つ…いつでも、お前はお前らしく生きてくれ"






 大学生のカリシュマ・シェッティは、姉の結婚式を契機に「親の決めた結婚はしたくない」と決意。
 嫌々ながら自分の見合いが行なわれた翌日、同じ大学に通う幼なじみディノ(本名ディネーシュ・ニーガム)とカフェで盛り上がった勢いから「ゴアに駆け落ちして2人だけで生きていこう!」と家出してしまう!!

 家出途中で結婚式を済ませた2人だったが、家族の追跡の手を逃れて各地を転々。親戚の家、ゲストハウス、安宿…と来て、いつの間にやらマオイスト・ゲリラたちとジャングルのキャンプ暮らしに。生活資金も底をつき、先の見えない逃亡生活の疲労も限界に達し、ついに2人は大喧嘩の末に絶縁状態になって警察に保護され、家に連れ戻されてしまう。
 両者は、激怒する家族の前でこれまでの行為を反省し、結婚破棄の申請手続きのために裁判所で顔を合わせることになるのだが…。


挿入歌 Khalifa (リーダー)



 アリフ・アリー(*1)の監督デビュー作にして、本作が映画デビューとなる新人アルマーン・ジャインと、テルグ映画女優で本作がヒンディー映画デビューとなるディークシャー・セートを迎えた新人デビュー映画。
 日本では、2014年IFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて監督来日の上で上映された。

 大学生同士の暴走から始まる恋愛、古典的な駆け落ちとその破局、家族との対立と相剋、恋愛を通しての精神的成長…と言う昔ながらの恋愛映画の図式を、離婚申請の中での2人の友情と愛情の変化、(親族的結束ではなく)友情による後押しで進展する恋愛模様…と言う現代的・都会的な視点で描いていく映画で、基本的には新人監督・新人キャストのお披露目安全パイ恋愛映画。

 とは言え、前半の駆け落ちが、場所が変わるたびにどんどん2人の悲惨度がレベルアップしていく所は可笑しく楽しく、その暮らしの多様性は興味深いし、後半の離婚手続きのやたら煩雑なことや、カウンセラーを使って離婚を思いとどまらせようとするインドのお役所仕事もコミカルで笑える。どこまでがリアルでどの辺までが誇張なのかは、リアルなインドを知らない身としては想像するしかないんだけど、カウンセリングそのものが思い切りおちょくられてるのはやっぱり「そんなんで思いとどまるんなら申請なんかしねーよ」ってツッコミでしょか(*2)。
 あとで、インド経験者に「ムンバイからゴアまでバイク旅行って出来るんですか?」って聞いたら「まあ…バイクで行く距離じゃないよね。それでも今は道が整備されて直接つながってるから楽にはなったけどねぇ」と言われたのがスゴいぞインド。

 主役ディノ役のアルマーン・ジャインは、1990年ムンバイ生まれ。母親のリーマ・ジャインは、かの名優ラージ・カプールの娘。「マイ・ネーム・イズ・ハーン(My Name Is Khan)」「スチューデント・オブ・ザ・イヤー(Student of the Year)」などのADを経て本作で役者デビュー。やたら白い顔に、貼付けたようなぶっといまゆ毛が強烈でございました。
 ヒロイン カリシュマ役のディークシャー・セートは、1990年デリー生まれのモデル兼女優。大企業ITCリミテッドで働く父親についてインド国内外を転々と過ごした後、アジメールの女子大時代に勧められて受けたフェミナ・ミス・インディア2009でファイナリストまで上り詰めてフレッシュフェイス賞を獲得。ハイデラバードでモデル業を初めてすぐの2010年、テルグ語映画「Vedam(詠唱)」で映画デビュー。2011年には「Rajapattai(王の通り道)」でタミル語映画に主演デビューし、合計8本目の出演作となる本作がヒンディー語映画デビュー作となる。

 なんとなく色んな映画の要素をオマージュしてる感じもするけど、なんと言ってもA・R・ラフマーンの音楽と、ディークシャー・セートの元気さに全てが救われてる映画。前半の主役2人の幼稚さや脇役のとってつけたような話へのからみ方はイライラしなくもないけど、その分後半の必要以上の2人のケンカがなんとも小気味良くてステキ。うん。
 さらに注目は、エンディングに登場する"駆け落ち夫婦"たちのの皆様ですけど…あれは本当に本物?


挿入歌 Tu Shining (君は輝く [それはまるでダイヤモンド])







「弾む心を道連れに」を一言で斬る!
・あそこで飛び降りるかと思ったけど、飛び降りなかったね。とりあえず…まゆげ!

2015.3.6.

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*1 ロマンス映画監督として有名なイムティアーズ・アリーの弟。
*2 逆に言えば、長年タブー視されて来た"離婚"というのものを、ここまで"普通の事"として描いてるって所も注目。ま、結論的にはあれだけど。