インド映画夜話

Lafangey Parindey 2010年 155分
主演 ニール・ニティン・ムケーシュ & ディーピカ・パドゥコーン
監督 プラディープ・サルカール
"無法地帯に育った……飛び立つ力を蓄えながら"






 "ワン・ショット・ナンドゥー"ナンダン・カームテーカルは、ムンバイの貧民街ティラク・ワーディー地区在住の違法賭博ボクシング・チャンピオン。彼は、目隠ししながらも一発で相手を逆転KOさせる凄腕で、賭博総元締のマフィアのボス ウスマーン・アリのお気に入りだった。
 ある日、ウスマーンの依頼で彼の右腕アンナー(兄貴の意)の車の運転を請け負うナンドゥーだったが、マフィアの抗争からアンナーと逃亡するはめになり、焦った彼はいきなり歩行者をはねてしまう!

 一方、同じ下町に住む少女ピンキー・パールカルは、ナンドゥーの仲間の幼なじみでショッピングモール店員。彼女の夢は、タレント発掘番組「インディア・ゴット・タレント」のダンス・コンテストで優勝して、貧民街から飛躍すること!
 その日、同僚アジャイとローラースケートダンスの特訓をしていたピンキーは、雨の帰り道、突然、(ナンドゥーの運転する)暴走車にはねられ意識不明の重体に!!
 翌日、アンナーの死を知らされたナンドゥーは、さらに自分のせいでピンキーまでも重症にさせていたことを知らされ罪悪感に苛まれる…。

 一命を取り留めたピンキーだったが事故で視力を失い、それがもとで職場をクビになってダンスの夢も潰えてしまう。
 ナンドゥーはそんなピンキーを見ていられず、無理矢理にでも彼の得意とする"視覚に頼らず周囲の状況を把握する技術"を彼女に教え込んで彼女の希望を再建させようとする。そんなナンドゥーをピンキーは、自分のダンスパートナーに迎え入れると言い出すのだった!

 だが、その頃ピンキーの事故とアンナーの死亡事件を調査していた警察は、単独犯と思われたアンナーの車に別の男が乗っていた事実をつかんでいた…。


挿入歌 Dhatad Tatad

*冒頭から音がデカいので注意。
 劇中に登場するお祭り(ジャンマシュタミ祭?)、同じく視覚障害者たちが活躍する「ブラインド・ミッション(Aankhen)」にも出てきてましたわぁ。その後の2つの棒を打ち鳴らしてる祭りはなんじゃろな?(お教え頂きました所、ダンディアとのこと。ありがとうございます!)



 タイトルの意味は「荒くれ者と鳥」または「荒くれた鳥」。
 本作は、1978年のアメリカ映画「アイス・キャッスル」や、1999年のタミル語映画「Thulladha Manamum Thullum(飛ぶことのない心、いつかは飛ぶだろう)」をヒントにしたインスパイアもの。
 監督は、以前に思い切りコケた「Laaga Chunari Mein Daag」を手がけたプラディープ・サルカールと言うことで、多少「まーた駄作の予感…」とか思ってたけど、公開されるや見た人の感想文は高評価な傑作と言う事で、期待大で臨んだ一作。

 主役を務めたニール&ディーピカもハマり役で、気っ風のイイ下町育ちを存分に演じきっていてグー。特にディーピカは、盲目のダンサー役と言う難しい役柄を的確に表現してノリノリな感じ。さすがスポーツ一家出身だけあって、身体能力を要求するポジティブな演技は彼女の独壇場ですわ(ノリノリなスケートダンスは、今回が始めての挑戦だったそうな)。2人とも、こう言う役での活躍をもっと見てみたい所。

 罪の意識に苦しむナンドゥーと、いきなり失明して生活が一変したピンキーだけども、そこから過度にお話的に暗くなることもなく、ある程度の所で踏ん切りをつけてどんどん前に進みだす所がなんともプラス思考で、見ていて気持ちいい。日本だったらもっと悲壮感みたいなものが全編から匂うものになるだろうなぁ。
 ま、ダンス経験のない闇ボクサーと、ダンス経験ありとは言え目の全く見えないダンサーが、ああもトントン拍子にうまく行くかね?と思わなくもないけど、ロマンス映画の本作でそこをツッコむのは野暮っちゅーもの。
 それよりも、目隠し格闘技が得意な男と、技術はありながら失明によって道を断たれたダンサーと言う2人の劇中での対比関係を、うまいこと最後まで描き切ってる所は映画構成としてグー。ただ警察の捜査は緊張感を高めながら後半に失速。公開時間の短縮のためでしょか? 個人的には、もう一波乱あってもよかった気も。

 物語そのものは、わりとシステマチックに作られていてよく言えば堅実、別の言い方では意外性はさほどないんだけれど、下町調の芝居の数々(ムンバイの方言の一種だそうな)や、基本善人ばかりの登場人物のぶつかり合いとか、主役二人の勢いにつられてグイグイこっちも入り込んでしまいまする。
 チョイ役でいきなりジュヒー・チャウラーがゲスト出演してきたのはビックリしたでよ。お姉様、変わらずお元気そうで。

 オープンセットとは言え、舞台となったムンバイの貧民街ティラク・ワーディー地区の雰囲気もなかなかに素晴らしい。実際はもっと色々あるだろうけど、雑然とした界隈で生活する無数の人々の生活の様子や数々のお祭(夏〜秋にかけての?)の様子が活気があって美しい。
 そういや、インド映画には珍しくサッカーやってるシーンもあったけど、近所の子供が「あれ、なにやってんの?」「トライバル・フットボール(インドローカルルールのサッカー?)だろ」と言ってるのもオモロい。


OP Lafangey Parindey (無法者と鳥)





受賞歴
2011 Golden Kela Awards 最悪タイトル賞

2012.6.22.
2012.7.1.追記

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