インド映画夜話

戦士 (Magadheera) 2009年 165分
主演 ラームチャラン & カージャル・アグルワール
監督/脚本 S・S・ラージャマウリ
"勇者よ。お前はいつの日か、愛を取り戻しに暗闇から舞い戻るだろう…お前は戻ってくるのだ。あの太陽のように!!"






 西暦1609年。ラジャスタンの王国ウダイガルは滅亡した。
 アラヴァリ山脈にて、王女ミトゥラヴィンダと戦士バイラヴァは結ばれぬまま非業の死を遂げる。断崖絶壁から落下する王女を、せめて彼女の手に触れたいと願い追いかけるバイラヴァは、共に遥か下の山々へと姿を消した。その想いは届かぬままに…。

 それから400年。
 バイクレーサーのハルシャは、雨のハイデラバードの街中で、偶然触れた女性(=インディラ・ヴァルマ。通称インドゥ)の手から失われた記憶を刺激され、そのショックを再度確かめようとその女性を探しまわる。「その人だったら知ってるわ。友達だもの」と騙る当のインドゥに振り回されるハルシャだったが、知らず知らず2人は惹かれあうように…。

 しかしその頃、ヴァルマ家とウダイガル遺跡の所有権を争うギャングのボス ラグヴェール(インドゥの母方の従兄)がインドゥに一目惚れ。家同士の対立の原因である自分の父親を殺して(!!)インドゥの父親プラティープに近づき婚約を確定するが、インドゥに触れようとするたびに奇妙な幻影に悩まされるように。それは彼の前世の記憶だと言う導師ゴーラの言に従い、前世で自分の恋路を邪魔した男を捜し出そうとする。彼の男の名はバイラヴァ…現代に転生したその名は、ハルシャ!!


挿入歌 Dheera Dheera Dheera (ああ、勇者よ [私は私を抑えられない])

*以下の文章含めてちょっとネタバレ気味注意。
 ウダイガル王国の王女ミトゥラヴィンダ・デヴィ(インドゥの前世)の結婚相手を争う賭けレースで、軍司令官のラナデーヴ・ビラ(ラグヴェールの前世)より先に王女のチュンニー(? =ショール)を持ち帰った宮廷警護官の戦士カーラ・パイラヴァ(ハルシャの前世。名前は、激怒するシヴァ神の別名に由来)。王女は、見事自分の想い人が勝利した事で、その喜びの幻影の中を遊ぶ。



 タイトルは「勇者」とか「偉大なる戦士」。
 日本公開される「マッキー(テルグ語原題 Eega)」の監督が、その3年前に手掛けたトリウッド(=テルグ語映画 [*1])の傑作で、公開されるや大ヒットを飛ばし、タミル語(*2)吹替版「Maaveeran」、マラヤーラム語(*3)吹替版「Dheera - The Warrior」も公開された。
 日本では、2015年の「インド映画同好会 大映画祭」にて上映。

 お話は、基本は現代を舞台とするハルシャとインドゥのラブコメ&アクションながら、冒頭と中盤に400年前の絢爛豪華な前世シーンが挿入され、ただでさえ派手派手なスクリーンがさらに華やかに彩られておりました。
 主役のラームチャランは、ぬわんとテルグのメガスター チランジーヴィーの息子!! 07年に映画初出演&主演した「Chirutha」に続いて主演2作目。前作で数々の新人賞を獲得した後を受けての本作で、最初は、俊敏だけど濃いい兄ちゃんだなぁ…(公開当時25才)とか思ってたら、馬に乗って爆走しだしたあたりからメチャカッコよく見えて来たから拍手喝采。父親のチランジーヴィーのようなオーラや眼力はまだまだ感じられないものの、身体のキレは抜群だし表情も多彩だし、なによりもバイラヴァちょーカッコええ!!
 ヒロイン演じるカージャルは、ムンバイ出身のモデル兼女優。ヒンディー映画「Kyun! Ho Gaya Na...」の端役で映画デビューした後、テルグやタミル語映画で活躍してる人で、本作で始めてフィルムフェアに主演女優賞ノミネートされたそうな。現代っ子のインドゥの時も前世のミトゥラの時も可愛さ全開に魅力を振りまいておりましたが、ラームチャランもそうだけど、現代的な顔が前面に出てくるんで、どーも中世時代劇になると多少浮いた感じが…。
 ま、なんだかんだ言って、映画が終わる頃には「カッコえええー&カワエええーー!!!」とノックアウトされてるわけですが。不敵なミトゥラ王女様万歳!!

 現代のドタバタ劇自体はそんな新鮮味のない、テルグ娯楽映画の基本に忠実な展開をしていくわけだけど、毎度ながらテルグ映画演出は、アクション・CGによる特殊効果・画面レイアウト・役者の演技のキレが過剰なほどサービス満載。
 それはないだろって地形のアラヴァリ山脈やウダイガル宮殿、突然の爆発や豪雨やそよ風、一歩間違うと冗長になってしまう(…なってる?)インドゥの恋愛ゲームやコメディアンたちのコントシーン、不可思議奇天烈な特殊効果の数々…設定やつじつまなんて知った事か、オレたちはどっぷり楽しみたいんじゃ! …って割り切り方が率直すぎて拍手喝采。

 17世紀の世界も絢爛豪華で派手派手ながら、歴史マニアが見たらツッコミ所満載な感じのゲーム的世界。翼ライオンの石像も、山腹の巨大神像も、ミトゥラ王女が趣味で描いてるバイラヴァの絵(映画の看板イラストみたいな…)も、その時代にそんな写実的でいいんだろか…とかとか気になってしまいまする。ま、インド美術は中世期にも、(誇張はありつつ)結構リアルな彫像とか残ってるけどね。
 気になると言えば、ウダイガルに戦争を仕掛けるシェール・カーン率いる蛮族軍って、ひょっとしてムガル帝国あたりがモチーフ…なんてことはあるんでしょか?(*4) 1609年と言えば、ムガル最盛期の第4代皇帝ジャハーンギールの時代で、ラジャスタンには、今も観光地として有名な都市ウダイプルの周辺に、ムガルから半独立したメーワール王国があったそうだけど…?(*5)
 それにしても、どこまでも真っ白な塩原?(流砂が唐突に出てきたけど…?)の美しさったらもう。あれはどこなんだろー!


挿入歌 Jorsey ([どこで花が咲こうと僕はそばに。常に先回り] 早く手折って)

*ゲスト出演してるダンサー女優は、主にヒンディー映画で活躍してる女優兼モデルのキム・シャルマー。



受賞歴
2009 Nandi Award 人気注目映画賞・監督賞・編集賞(コータギリー・ヴェンカテーシュワラー・ラーオ)・美術監督賞(ラヴィンデル)・振付賞(K・シヴァ・シャンカル)・音響賞(ラーダクリシュナ)・衣裳デザイン賞(ラーマ・ラジャモウリ)・特殊効果賞(R・カマル・カンナン)・特別批評家選出賞(ラームチャラン)
2010 CineMAA Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞・作詞家賞(コータギリー・ヴェンカテーシュワラー・ラーオ)・美術監督賞・男性プレイバックシンガー賞(アヌージ・グルワーラー)・撮影賞(K・K・センシル・クマール [Arundhatiと共に])
2010 National Film Awards 振付賞(K・シヴァ・シャンカル)・特殊効果賞(R・カマル・カンナン)
2010 Filmfare Awards South 作品賞・監督賞・主演男優賞・音楽監督賞(M・M・ケーラヴァニ)・男性プレイバックシンガー賞(アヌージ・グルワーラー/Panchadara Bomma)・撮影賞(K・K・センシル・クマール)




「Magadheera」を一言で斬る!
・インターミッションの入り方が絶妙! 「10分の休憩の後……400年前でお会いしましょう」

2013.10.4.
2015.9.26.追記

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*1 テルグ語=南インド アーンドラ・プラデーシュ州の公用語。
*2 タミル語=南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 マラヤーラム語=南インド ケーララ州の公用語。
*4 イスラム風の衣裳や名前、マーンスィンと言うアクバル大帝の側近と同じ名前の側近…とか。
*5 ま、そこまで設定を掘り下げていないかも…だけど。