インド映画夜話

Munna 2007年 167分
主演 プラバース & イリアーナー・デクルーズ
監督/脚本/原案 ヴァミシ・パイディパリー
"ムンナ…お前がどう思おうと、皆はお前を必要としている"
"犠牲になった人々が奴を恐るなら…お前は、人々に勇気を与える存在なんだ"


挿入歌 Kadhulu Kadhulu (その角を突き上げてみろ)


 1989年のハイデラバード。
 赤十字運営の孤児院によるストリートチルドレン保護の車に、率先して乗り込んできた少年がいた。彼の名前は、ムンナ…。

 そして現在。
 ハイデラバードはカーカーの支配の下、新たにアトマと言う別のギャングボスとの対立にさらされ、その抗争とそこから引き起こされる公害を止めようとする内務大臣スリーニーヴァサ・ラーオに、人々は一縷の望みをかけるしかない状態だった…。
 そのハイデラバードの大学に通うようになっていたムンナは、友情に厚い青年に成長していた。友達の恋路を応援して、友人を傷つける人物には鉄拳制裁を食らわす彼はある日、学内を威圧する新入生が「カーカーの息子」と知らされると途端に目の色を変える…!!


挿入歌 Chammakkuro (輝く月が [私にまとわりつくわ])

*主人公ムンナ役のプラバースとともにメインで踊ってるのは、ゲスト出演の女優兼モデルのシュリヤー・サラン。


 タイトルは、主人公の通称名。
 ヴァミシ・パイディパリー監督デビュー作となる、テルグ語(*1)アクション映画(*2)。

 後に、ヒンディー語(*3)吹替版「Bagawat - Ek Jung」、タミル語(*4)吹替版「Vetri Thirumagan」、同名マラヤーラム語(*5)吹替版も公開され、2012年にはバングラデシュ映画リメイク作「Amar Challenge」も公開。
 54年の同名ヒンディー語映画とは別物。

 「ムンナ」という主人公名で有名なのは、88年のヒンディー語映画「Tezaab(酸)」とか03年の「Munna Bhai M.B.B.S.(ムンナー兄貴と医療免許)」とかがあるけれど、テルグ語映画界ではどんな感じなのかいな、とか思いつつ見てみたら、ギャング抗争リベンジムービーを主軸にしたやたらと血生臭いアクション映画で、中盤以降のどんでん返しっぷりが爽快に畳み掛けてくれるものの、なんとなく全体的にドスの効いた啖呵とアクションの振り幅だけが目立ってしまう、ややバランスの崩れた感じの一本でありました。

 OPの数年刻みでハイデラバードの抗争具合が激しくなって行く様を効果的な伏線として使い、2大ギャングの派閥争いとそれを止めようとする政治家の裏工作のえげつなさはさすがって感じで「相変わらず、インド映画に出てくる有力者はヤバい奴ばっかですな」とか思ってたら、後半にドンドン抗争具合が激化して「え?」が「ええ?」になり「ええええええ!!!」と話が盛り上がって行くドラマツルギーは見事。
 ただ、そう行った物語的仕掛けが先走りしてる感が強く、2大ギャングの頭目カーカーとアトマの様々なしがらみと裏工作設定を作りすぎてるきらいもあって、物語としては設定ありきで話が置いてけぼりにされる感じもある。それぞれの人物関係やその過去のしがらみ等をいろいろに作り込んでくるのは、監督デビュー作故の気合の入りすぎから…なんかしらん? 本作以降、大ヒット作を連発するパイディパリー監督の若さを堪能できる一本って感じ(*6)。

 主役ムンナ演じるプラバースは、しっかりきっちりマサーラーヒーローを演じまくり、その長い手足を存分に生かして画面を暴れまわる様はほんと爽快。その分、ミュージカルにおけるダンスがややその恵まれた体格を持て余してる風に見えてしまうのは、単純に振付が悪いせいかねえ…。予告編見てる時には「なんでインド映画の主演男優は、やたらボサボサロン毛時代があるんだ、似合わないのに」とか思ってたヘアスタイルも、劇中で見てるうちはそんなに気にならないので良し。うん。
 劇中の挿入歌はそこまでではないけれど、BGMは結構カッコよくて耳に残るほど印象的。主人公の復讐劇を彩るマントラのような歌声もそれぞれの場面でカッコええ。対する各ミュージカルは、歌とダンスはともかくとしてもそれぞれのファッションと画面を彩るスタイルはディスコ風、ストリート風、ラジャスターンの民族舞踏風、ウエスタン風と各種各様に工夫を凝らした個性化がなされてるのも注目ポイント。
 総じて、各シーン・各カットにいろいろなアイディアが詰め込まれてシークエンスごとに決めシーンが複数ガッチリ作られてる野心作と言った感じでしょか。マサーラー文法の常道に従いつつ、色々にこの映画独自の演出法を作り上げようとしているかのような一本ですわ。

挿入歌 Vastaava Vastaava (愛する人よ、こっちに来ない? [さあ、情熱的なキスをして])


受賞歴
2007 Filmfare Awards テルグ語映画女性プレイバックシンガー賞(サダーナー・サルガム / Manasa)


「Munna」を一言で斬る!
・殺人事件現場の捜査で駆り出される、カメラに鼻くっつけてくる捜査犬カワイイ。

2020.9.11.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 この次が「Brindavanam(ブリンダーヴァナム屋敷にて)」で「誰だ!(Yevadu)」と続く。
*3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*4 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*5 南インド ケーララ州の公用語。
*6 …と年寄りめいた事を通ぶって言ってみる…認めたくないものだな。