インド映画夜話

シャバーナーと呼ばれる女 (Naam Shabana) 2017年 147分
主演 タープスィー・パンヌー
監督 シヴァム・ナーイル
"ベイビー結成に先立つ、彼女の物語"




 オーストリアはウィーンにて、インド諜報部がマークしている国際的テロリストの武器商人ミハイル確保の作戦は失敗し、エージェントは全滅してしまった…。

 それから1年。
 ムンバイの大学生シャバーナー・カーンは、その格闘術で地区大会優勝を飾り、前から自分に好意を寄せてくる同級生ジャイの申し出を受けて夕食を共にする。彼からの愛の告白を受けて過去を語りだす彼女は、「父親のDVを母親と共に受け続けた事」「母を守るために父を殺して少年院に送られたこと」を告白。それでも自分を応援するジャイの気持ちを受け入れようとした矢先、酔っ払い4人組に絡まれた喧嘩をシャバーナーが受けたばかりに、ジャイが殺されてしまう…!!
 3ヶ月に渡って警察に犯人逮捕を懇願しに行くシャバーナーだったが、謎の電話から「警察は頼りにならない。犯人4人組が何者か、知っているかな?」と連絡が入る。戸惑う彼女に、電話の向こうの男は答える…「もし、我々の条件を飲むなら、君の希望に従い復讐の手助けをする準備がある。条件とは、我々の組織に君が入ること…よく考えてみたまえ」


挿入歌 Dil Hua Besharam (心が騒ぎ出している)

*実際に歌ってるのは歌手アディティ・シン・シャルマーだけど、映画内で歌手役を担当してるのは歌手兼モデル兼TV司会のシバーニー・ダンデカール。
 客側でメインで踊ってるソーナ役を演じているのは、インド=スウェーデン=ギリシャ・ミックスの女優エリー・アヴラム(別名エリザベート・アヴラミドウ)。


 2015年のヒンディー語(*1)映画「ベイビー(Baby)」に登場していた女性諜報員シャバーナーを主役に据えた、スピンオフ映画。前作監督のニーラジ・パーンデーイも、脚本&原案&プロデューサーで参加している。
 ヒンディー語映画界としては、本作が史上初のスピンオフ映画となったんだそうな(ホンマ?)。

 後に、タミル語(*2)吹替版「Naanthan Shabana」、テルグ語(*3)吹替版も公開。
 日本では、2018年にIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて上映。

 「ベイビー」中盤に主人公の相棒として大活躍した、タープスィー演じるシャバーナー・カーン(*4)が、如何にして極秘国家諜報員になって行くかを描いて行く前日譚的サスペンスアクション。
 主人公シャバーナーを導く隊長ランヴィール・シンに、名優マノージ・バジュパーイーが出演しているため、マノージが極秘国家直属機関の隊長を演じる「アイヤーリー(Aiyaary)」との繋がりもあるんか! …と一瞬疑ったけど、そこは全く別の物語になっていた。ふう、やれやれ。そのほか、「ベイビー」から引き続いての名優や、意外な有名人の出演もあって「ワォ」って唸るとこも多々あって嬉しい。まあ、前作の主人公アジェイの登場は、そこだけ主人公的存在が2人出てくることで、活躍の配分がなんか崩れてしまっているようにも見えたけども…。

 一般大学生だったシャバーナーが、過去を乗り越えようとした瞬間に起こった理不尽な殺人事件の復讐に走ることで、必殺仕事人のようなエージェントとしての素養を開花させるって物語はまあ、ワクワクする構成ではあるけれど、1万5千人以上いる候補者から隊長直々のテストによって速攻で実力派諜報員になって行く彼女の迷いのなさと性急さがなんとも(*5)。
 ニーラジ・パーンデーイ監督作の「ベイビー」や「アイヤーリー」に漂う殺伐さを継承する要素を見せつけつつも、アメコミヒーローや戦隊ものの外伝ストーリーのようなテンポの速さが辛気臭さを軽減させていて、スパイアクション映画として楽しく見える一本に仕上がっている。わかりやすさ優先の勝利…?

 「ベイビー」の後を受けて、ニーラジ・パーンデーイから監督を受け継いだシヴァム・ナーイルは、ジャールカンド州出身のTV監督兼映画監督。
 1982年からTVドラマや再現ドキュメンタリーの監督や編集で活躍。イムティアーズ・アリーが脚本を手がけた06年公開のヒンディー語映画「Ahista Ahista(ゆっくりと、ゆっくりと)」で劇場作の監督デビューを飾る。本作は、劇場公開作としては4本目の監督作となる。

 冒頭出てくる、シャバーナーが特訓している「KUDO(空道?)」なる謎格闘技とその競技風景が「ちょっと待て!」って感じではあるのがご愛嬌だけども、格闘技を身につけなければいけなかったシャバーナーの孤独と強さが、命の保証もなく、なんの見返りもない危険な任務に人生を捧げて行く悪魔の取引さながらの極秘組織への参入を後押しして行く、キャラとしての強靭さがカッコいい。
 まあ、「アキラ(Akira)」の主人公がこの組織に注目されてたら、あんな酷い目には合わなかったよなあ…とかいらんこと考えちゃうところもあるわけだけど。うん。

挿入歌 Zubi Zubi (ハイになって歌え)


受賞歴
2018 Zee Cine Awards 驚異的インパクト女優賞(タープスィー)


「シャバーナーと呼ばれる女」を一言で斬る!
・シュクラ役のアヌパム・ケール登場で劇場内に笑いが起こるのは…わかる、心底わかるよぉw

2018.11.22.

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*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*4 考えてみれば、イスラーム過激派を悪と描くこの映画にして、味方側で活躍するイスラーム教徒キャラだったのねえ。
*5 素人スパイの苦悩を描く「同意(Raazi)」とはえらい違いや…w
*6 屋内で靴を脱ぐのか脱がないのか等。
*7 多少メルヘン的なニュアンスも匂う?