インド映画夜話

Oh My Friend 2011年 131分
主演 シッダールタ(歌手も兼任) & シュルティ・ハーサン(歌手も兼任)
監督/原作/原案/脚本 ヴェーヌー・スリラーム
"友情と愛情の、その差は一体どれくらい?"






 その日、チャンドゥは仕事中にかかって来た電話を聞いて、すぐ病院へ向かう。その病院の待合室で遊ぶ男の子と女の子を見ているうちに、彼は昔の記憶を思い返していた…
*********
 小学校でケンカばかりしていたチャンドゥとシリーは、2人1組で行なう学年参加ゲームでチームを組まされ優勝した事をきっかけに仲直り。以来、無二の親友になっていく。お互いを"ファルトゥ(役立たず)""キラー(人殺し)"と呼び合い、その時々で小学校のゲーム優勝の賞状と小さなトロフィーを交換していくように。

 その後、MBA(経営学位)所得のためムンバイの大学に進学したチャンドゥだったが、親の期待をよそにバンドデビューを目指してギター特訓三昧。そのままハイデラバードに戻って来た事に呆れてケンカになってしまうチャンドゥ父子をなんとか説得したシリーだったが、ある日2人の同級生だったリトゥ・シャルマーと偶然再会してチャンドゥは一気に彼女に一目惚れする!! その頃、2人の親はシリーの婚約の事で話し合っていた…。
「来月に米国から来るウデイと結婚の話を進めたいと思って。娘も賛成してますし」
「おめでとう。私たちも協力しますわ」
「もし、チャンドゥとシリーにその気があるのなら、2人を結婚させてもいいのだけれど」
「いや…チャンドゥとシリーは性格が違いすぎる。チャンドゥの人生はまだ分からないけど、シリーはもう自分の進むべき道を知っている。ウデイとなら仲良くやっていけるよ」


挿入歌 Oh Oh Oh My Friend (オー・オー・オ・マイ・フレンド)



 ヴェーヌー・スリラームの初監督作となるテルグ語(*1)青春映画。
 翌2012年にはタミル語(*2)吹替版「Sridhar」も公開。

 お話自体はよくある青春ラブコメながら、夢を追いかける大学生たちのサクセスストーリー、大恋愛劇や青春劇的展開を無視する友情劇と愛情劇の等価値化を描いていく、大学生世代主体なポップなテンポの良いスルっとした展開を楽しめる一本。

 終盤、親から「友情と愛情のどちらか選べ」とか「夫婦は親友にはなれないけど、親友は夫婦にはなれる」とか言った旧世代の考える恋愛観に対して、主人公たちが異を唱えるシーンに象徴されるように、インド映画によくある特定の恋人との人生を賭けた壮大なラブストーリーを念頭に置いた恋愛像を切って捨てる「今はもうそんな時代じゃないよ」と言う現代の若者文化を肯定する要素を散りばめた内容になっていて「おお、インドも青年文化がドンドコ育ってるネ」って感じではありまする。

 なんと言っても、この軽快な映画の魅力を生み出しているのが劇中の音楽を手掛けたラフール・ラージの伸びやかな楽曲の数々。
 そのラフール・ラージはケーララ州コーチン(現コーチ)出身の音楽家で、6才の頃から古典音楽を特訓し、工学系の学校を卒業後ロンドンにて電子音楽系の会社で働いていたとか。ヨーロッパでも人気のインド音楽家として名を馳せ、インド帰国後はCM音楽を経て07年のマラヤーラム語映画「Chotta Mumbai」にて映画音楽デビュー。その人気に推されて本作でテルグ語映画音楽デビューし、そのサントラは空前の売上を記録した。
 本作の後半の舞台がほとんどコーチンになってるのは、ラフール・ラージへのリスペクトを込めた設定とかですかねえ。その割には、ケーララのコテージシーンが無理矢理なコメディになってたけどもw

 主役チャンドゥ役のシッダールタ(・スリヤーナラーヤン)は、1979年タミル・ナードゥ州チェンナイ生まれ。映画監督を志望してマニ・ラトナム監督作の助監督として映画界入りして、02年にその映画「頬にキス(Kannathil Muthamittal)」でノンクレジット出演。勧められて受けたオーディションに受かって03年の「Boys」でクレジットデビュー。以降、タミル語映画、テルグ語映画を中心に、俳優業の他プロデューサー、歌手としてもマルチに活躍している。
 もう一人の主役シリー役のシュリティ・ハーサンは1986年チェンナイ生まれ。タミル語映画界のトップスター カマル・ハーサンの娘で、心理学を修了後、音楽を勉強するため米国カリフォルニアへ留学する。その間の97年、父親主演&監督作のヒンディー語映画「Chachi 420(道化伯父さん)」で歌手デビュー。00年に父親の出演作であるヒンディー+タミル語映画「Hey Ram(ああ、神様)」でカメオ出演し、その挿入歌1曲も担当。その後も映画音楽の歌手を勤めて09年に自身のアルバムも発売させている。同じ年に、ヒンディー語映画「Luck」で女優デビューも果たし、本作公開の11年には、同じくシッダールタと共演した「Anaganaga O Dheerudu(その昔、戦士がいた)」でテルグ語映画デビュー、「7aum Arivu(第7感)」でタミル語映画デビューして、フィルムフェア・サウスの女優デビュー賞を獲得。現在、女優、歌手の他、モデル、ダンサーとしても活躍中。
 チャンドゥの恋人になるリトゥ役には、ハンシカー(・モトワーニー)。1991年ムンバイ生まれ。ヒンディー語映画での子役を経て、主にタミル語映画で活躍している人で、本作公開の2年後にシッダールタと共に「Theeya Velai Seiyyanum Kumaru(炎のように働け、クマール)」で富山ロケのために来日してました。
 シリーの婚約者ウデイ役には、1986年ハイデラバード生まれでテルグ語映画界で活躍する男優ナヴディープ(・パッラポル)。04年の「Jai(ジャイ)」で映画&主演デビュー。翌05年に大ヒットしたタミル語映画「Arinthum Ariyamalum(知ってか知らずか)」にも出演して活躍の場を増やしている。

 チャンドゥとシリーが子供の頃から始めた"親友の証"としての特殊な握手が、劇中何回も印象的なシーンで使われていて、つい「へえ。今度やってみよ」とか思えて来ちゃう映画マジック(*3)。その握手で仲直りした2人の前に、シリーの婚約者ウデイが登場して握手が解かれた所に「BREAK」と書かれるインターミッション演出がウマい!! まあ、古今東西、友情関係の中にちょっとでも恋愛ごとが混ざると一気に人間関係がギスギスし始めるよね…ああ、人間とはメンドくさい。恋愛とかメンドくさいわ〜(今時の若者の意見w)。
 それはそうと、この映画に出て来る子役たちは(も?)とにかくかわいい。とにかくかわいい!!


挿入歌 Vegam Vegam (飛ばせ、飛ばせ [風のように])

*シリーとチャンドゥ発案による、シリー&ウデイの婚約者たちとチャンドゥ&リトゥの恋人たちのケーララドライブ旅行の図。



受賞歴
2011 Maa Music Awards 新人音楽コンポーザー賞(ラフール・ラージ)




「OMF」を一言で斬る!
・かくれんぼする時に、鬼役の子が"数を数える"んじゃなくて"決まった詩を暗唱"して始まるインド式かくれんぼ。…スバラしか!

2016.10.15.

戻る

*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 誰と? とか聞くな!