Paiyaa 2010年 151分(152分とも)
主演 カールティ & タマンナー
監督/脚本/原案 N・リングサーミィ
"大丈夫。もう怖がらなくていいさ"
就職活動でバンガロール(現ベンガルール)に来た青年シヴァは、友人たちからも心配されるほどのぶっきらぼうな性格。
仕事を休んで彼の就職面接のお膳立てをした親友たちをよそに、シヴァは行く先々で偶然出会うとある美女に一目惚れしてしまい、彼女の後を追おうとあっさり面接を反故にしてしまう始末。
ある日、友人の親から借りていた車を返しに駅まで来ていたシヴァは、そこで件の美女を連れた男から「おい運転手、マドラス(=チェンナイ)まで行けるか?」と尋ねられて「…大丈夫。マドラスまで連れていきますよ」と返事をしてしまう。
夕方までにマドラスにつかなければと言う男の指示で車を飛ばすシヴァだったが、ガソリンスタンドにて男が車から降りたスキに「お願い。車を出して」と言ってきた美女の言葉に乗って、男を置き去りにしたまま2人はその場を離れて行く。それから飛行場、駅と彼女の言われるままに移動するシヴァだったが、彼女はどこでも何かから逃げ出すように「車を出して」とシヴァに懇願する。ついに「どこか高い場所に連れてって。そこで飛び降りるから」と言い出す彼女を不器用ながら説得するシヴァは、事情を話してくれれば力になると約束。そんな彼の態度を見た彼女は、熟考の末に「ボンベイへ連れて行ってほしい」と依頼するのだった。
最初こそ、身の上話を拒否する彼女だったが、ボンベイへの長い旅路の中でのシヴァの態度を見続けたことで、彼女は徐々に心を開き始める…「お母さんは予想もしてなかった。お父さんが私に見合い結婚させようだなんて。2人は恋愛結婚だったんだもの。マドラスで父の会社が大きくなった時、別の女性が父の人生に入って来たの。お母さんはそのことを隠していた。でも、ある日、父が私に言ったわ…あの人の弟がお前の結婚相手だって。それで両親は激しい喧嘩になって…その夜、お母さんは眠ってしまった。2度と目が覚めない眠りの中に…」
挿入歌 En Kadhal Solla (君の心の中にいる場所なんか欲しくない)
タイトルは、タミル語(*1)で「男の子」。
2001年の「Aanandham(喜び)」で監督デビューした、N・リングサーミィの6作目の監督作。
のちに、テルグ語(*2)吹替版「Awara」が、ベンガル語(*3)リメイク作「Jaaneman」、カンナダ語(*4)リメイク作「Ajith」も公開されている。
強面カールティが恋に奥手の青年を演じ、それを引っ張るヒロイン演じるタマンナーとの小気味好いドライブデートが主眼の映画……と思ってたけど、やっぱり映画中盤からマフィア抗争ものな追いかけっこになっていくのは、売り出し中の若手アクション俳優してたカールティの面目躍如って感じでしょか。
とか言いつつ、映画の印象はずっとカールティとタマンナーがイチャイチャしているラブコメ・ドライブの方の絵面が強く、アクション映画やヤクザ映画なんかのマサーラー要素が入りつつも2人の青春劇が完全に話の中心。ラスト近辺もアクションがわりとおざなりで、2人それぞれのすれ違い、なんだかんだ言って息のあったコンビ具合の方に注目する楽しいロードムービー・ロマンス。
人付き合いが苦手で誤解を受けやすい主人公の不器用さ、そんな主人公が一途に追い続ける美貌を持つヒロインの抱える家庭事情、主人公の親友たちの盛大な振り回されっぷりも話の展開にアクセルふかし続けてグイグイと前進し続け、都合の良すぎるヒロインとの長いドライブデートを楽しみつつ、なかなかその仲を進展させきれない主人公シヴァのいじらしさが可愛い楽し麗しい。
監督&脚本を務めたN・リングサーミィ(本名ナンマルヴァル・リンガサーミィ)は、1967年タミル・ナードゥ州ティルヴァールール県クダヴァサル(別名コダヴァサル)生まれで、タンジャーヴール県クンバコナム(別名コーンバコナム、クダンタイとも)育ち。
映画監督を志望して、長年母親から聞かされていた事件を元にした脚本を用意。それが映画プロデューサーR・B・チョウダリーに見出されて、2001年のタミル語映画「Aanandham」で監督&脚本補を務めて映画デビュー。フィルムフェア・アワードのタミル語映画作品賞ほか多数の映画賞を獲得する。以降もタミル語映画界で監督兼脚本家として活躍していて、2007年の「Deepavali(ディワリ祭)」でプロデューサーデビュー。2022年には「The Warriorr(ザ・ウォリアー)」でテルグ語映画監督デビューもしている。
当時まだ主演作3本目のカールティ(公開当時33歳)のムスッとした仏頂面が、誰も見てないところで「彼女とのデートだぜ、やっほぅ!」と満面の笑みに変わる子供っぽい愛嬌も微笑ましい。ダンスやアクションにややぎこちなさを感じなくはないけれど(*5)、のちの「囚人ディリ(Kaithi)」とかではあまり見られない、恋に恋する様を存分にアピールする爽やか青年像が、見てるうちになんか様になって見えてくる映画マジック。
そんな秘めた恋心をうまく表現できない「自分、不器用ですから」なダンディズムに一切気づかない鈍感系ヒロイン チャルーの名前が判明するのが、偶然の道連れのお調子者シティ派(死語)イケメンが名前を聞いてくる映画開始40分過ぎてからと言うのも、器用に立ち回れない主人公の「男とは、かくあるべし」な思い込み故のすれ違いを生んで可笑しさを誘う。
心に傷を負ってるわりには、家族の話をする以外の時は元気なチャルーの快活さが、主人公シヴァの心の開き具合とシンクロしていく息のあったコンビ具合を発揮し、中盤以降のギャングたちとの追いかけっこから徐々にバディ化していく進展具合も美しい。もはや、ギャングたちとの不穏な追いかけっこも友達以上恋人未満な主役2人を飾るスパイス程度の味付けになっている感もあり、どこまでも凸凹な友情を深めていく2人を見ていたくなる爽やかな旅路でありますわ。運転できないふりをして、「どーせ運転できないんだろ」な態度を見せるシヴァに得意顔で運転してみせるチャルーの茶目っ気もいい感じ。シヴァ目線で進むお話とはいえ、映画の魅力の半分以上を持っていくチャルー役のタマンナーの可愛らしさ全開具合は、シヴァ役のカールティや強面ギャングたちにも伝播していって映画全体を可愛らしくしていってるかのよう。
ああ、願わくば私もそんなドライブデートしてインドの自然を存分に満喫してみたーい!(*6)
挿入歌 Thuli Thuli (雨粒のように [彼女は現れ、跡形もなく消えた])
受賞歴
2011 Edison Awards 女性プレイバックシンガー賞(サインダヴィ)
2011 Big Tamil Entertainment Awards 音楽監督賞(ユーヴァン・シャンカル・ラージャ)・作詞賞(ナ・ムトゥクマール)
2011 Vijay Music Awards 人気歌曲音楽監督賞(En Kadhal Solla / ユーヴァン・シャンカル・ラージャ)・リスナーズ・チョイス・オブ・ジ・イヤー賞(Thuli Thuli / ユーヴァン・シャンカル・ラージャ & ハリチャラン)
2011 Vijay Awards 人気歌曲賞(En Kadhal Solla)
2011 Vijay Music Awards ミルチ・リスナー選出賞2010(ユーヴァン・シャンカル・ラージャ & ハリチャラン / Thuli Thuli [同じ映画内挿入歌の、ラフール・ナーンビアール / Adada Mazhaidaに対しても])・人気歌曲賞2010(En Kadhal Solla)・人気歌曲音楽監督賞(ユーヴァン・シャンカル・ラージャ / En Kadhal Solla)
Mirchi Music Awards ベストアルバム・オブ・ジ・イヤー賞・リスナーズ・チョイス歌曲・オブ・ジ・イヤー賞(En Kadhal Solla)・リスナーズ・チョイス・ベストアルバム・オブ・ジ・イヤー賞
「Paiyaa」を一言で斬る!
・とにかく急発進、急停車しすぎでタイヤが心配になりますよ(カーチェイスもので言うな、って話ではあるけれど)。
2025.8.22.
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