インド映画夜話

Student of the Year 2 2019年 146分
主演 タイガー・シュロフ & ターラー・スターリヤー & アナンニャー・パーンデーイ
監督 プニート・マルホートラ
"眼を見開け。それが真実なら、見えてるものはお前のものとなる"




 ウッタラーカンド州マスーリーの、ピショーリラール・チャマンダス高校から名門聖テレーザ学園へ、スポーツ特待生奨学金を得て編入してきたローハン・サチデーヴの目的は、この学園に在籍している幼馴染の恋人ミア(本名ムリドゥラ・チャウラー)と再会すること。

 そのミアとの再会の場で、学園理事長の娘シュレーヤー・ランダワーと対立してしまったローハンに、ミアも「昔とは違うの」と素っ気ない。その日から、学園の女王シュレーヤーの嫌がらせが始まるものの、そんな事を一蹴するかのようなスポーツでの成績を叩き出すローハンに、周りの見る目も変わりミアも昔のようにローハンと付き合いだしていく。
 しかし、カバディの授業で意気投合したシュレーヤーの兄にして2年連続の"スチューデント・オブ・ザ・イヤー"保持者マーナヴ・ランダワーの誕生日会に招待されたローハンの目の前で、ローハンと同じ奨学金進学組が富裕層のマーナヴたちに馬鹿にされ、嘲られ、暴力事件にまで発展する様を見せつけられてしまう…。

 その後、大学主催のダンスコンテストにミアと出場するローハンだったが、その会場でミアを落下させてしまい、彼女が目指していた優勝を取り逃がしてしまった。しかも、その夜そのミアがダンスコンテスト優勝のマーナヴとキスしているところを見てしまったローハンは…


挿入歌 Jatt Ludhiyane Da ([君がデリー出身の都会人でも気にしない。だって僕は] ルディヤーナー出身の野生児だから)

*Jatt とは、パンジャーブ語で(独立心の強い)田舎出身者の意味だそう。ここでは、より広く(首都に住む都会人に対する)誇りあるパンジャーブ人の意、だそうな。


 日本でも公開された、2012年の「スチューデント・オブ・ザ・イヤー(Student of the Year)」の7年ぶりの続編となる、ヒンディー語(*1)学園スポ根映画。

 監督は、前作のカラン・ジョハールから、2010年の「I Hate Luv Storys(アイ・ヘイト・ラブストーリー)」で監督デビューした期待の新人プニート・マルホートラに交代している(*2)。

 前作から舞台を継承し、同じロケ地に設定された架空の高校(*3)を舞台にした三角関係青春劇。主役ローハン演じるタイガー・シュロフは、トップスターとして映画の看板になる有名人だけど、ヒロイン2人は本作が映画デビューとなる期待の新人俳優というのは前作と同じ構造(*4)。
 突然の前作キャラのゲスト出演とかもないではないから、話は繋がっているシリーズではあるけれど、映画としては独立したものになっていて、タイトルの「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」も、前作は競争を煽る学内イベントだったものが、今作では州内の複数の学校同士が競い合う州内イベントに規模が拡大。前作挿入歌とかも使って、シリーズとしてのシンクロ演出も見せつつ、しっかりと独立した映画に仕立ててある。

 本作公開時29才のタイガー・シュロフが高校生に見えるのか、という問題はさておき(*5)、主要三角関係が男2女1だった前作に対比させた男1女2のクリシュナ神話構造になったことで、元気一杯の男の子を演じるタイガーの大人顔もある程度緩和され…てるかなあどうかなあ。

 主人公のお相手ミア役を演じるターラー・スターリヤーは、1995年マハーラーシュトラ州都ムンバイ生まれ。
 ヒンドゥー教徒のグジャラート人の父親とパールシー教徒(*6)の母親の元に生まれ、双子の妹(姉?)と共に英国王立舞踏アカデミーでクラシックバレエ他様々な舞踏を修得。7才の頃から歌手としても活躍していてオペラやコンサートにも出演。ムンバイの大学でマスメディアの学士号を取得している。
 2010年からディズニー・チャンネル・インディアの「Big Bada Boom」で司会を担当。2012年の「Best of Luck Nikki」など、ディズニー・チャンネル放送のTVシリーズに出演して行くかたわら、様々な楽曲制作をこなしていく中でターラー制作の楽曲"Slippin' Through My Fingers"がアルバム「Blame It On Yashraj」に収録。ロンドン、東京、インドのラヴァサとムンバイでレコーディングとソロコンサートを開催しているそう。
 2019年のディズニー映画「アラジン(Aladdin)」のジャスミン役最終選考まで残ったものの落選。本作で映画&主演デビューを果たし、Zeeシャイン新人女優賞を獲得。フィルムフェア新人女優賞ノミネートもされている。同年から、モデル業もこなして注目されつつヒンディー語映画界でも活躍中。

 三角関係のもう一方、シュレーヤー・ランダワーを演じたのは、1998年マハーラーシュトラ州都ムンバイ生まれのアナンニャー・パーンデーイ。
 父親は、個性派俳優として名を馳せるチャンキー・パーンデーイ。母親は衣裳デザイナーのバヴァナ・パーンデーイ。親戚に男優アーハン・パーンデーイ他有名人が多数いて、幼い頃から女優になる夢を持っていたと言う。
 インターナショナルスクールに通う中の2017年に、ファッション誌ヴァニティ・フェア主催の新人モデル舞踏会「ル・バル」に出場。そのままモデル業を続けていく中で、本作で映画&主演デビューし、同年公開の主演作「Pati Patni Aur Woh(夫と妻と彼女と)」と共に多数の新人女優賞を獲得。以降もヒンディー語映画界で活躍中。2022年の主演作「Liger」の同時製作テルグ語版で、テルグ語映画デビューもしている。

 前半と後半でヒロインの立ち位置が逆転するどんでん返しは効果的ながら、派手派手なお金持ち学園生活のドタバタが話の主眼なので、登場人物の恋愛模様や過去のしがらみあたりは軽めにとどまっている感じ。その辺が、興行成績が振るわなかった原因みたいだけど、アメリカ風なスクール青春ものとしてはやりたい事は思い切りやり切ってる軽妙なノリが楽しい楽しい。前作よりも恋愛要素が軽めになってるのは、時代の流れってやつなのか脚本・演出の興味がそっちに行ってないからなのか。新人お披露目映画であると同時に、タイガー主演作としてタイガーの魅力を前面に出しまくった結果という気もしないではない。

 タイガー演じるローハンがスポーツ特待生なので、スポ根路線で話をグイグイ引っ張っていけるのは、前作と同じながら、そんなとこでアクロバティックな動き入るの? みたいなタイガーの身のこなしの軽さをアピールするシーンがこれでもかと入るのは微笑ましくもカッコええ。突然態度が変わるミアの裏側がわりと軽く扱われたのがもったいない感じではあるけれど、演じるターラーのせいというよりは、やっぱ恋愛要素にあんま尺を割かない脚本側の都合な気もしないではない。まあ、出てくる高校生がどいつもこいつも10代に見えないよ、って大人スタイルな見た目の反映だったりしそうな、そうでもないような話運びでしたけど。
 タイガー自身はあんまり気に入ってなかったみたいだけど、本作のようなチョコレートボーイ的な役柄もそれなりに絵になってるので、こっちのタイガーも今後見てみたい気もしてくるくらいには注目作でっせ。



挿入歌 The Jawaani Song (我らの歌)

*突然ゲスト出演で、ハリウッドスターのウィル・スミス登場!


受賞歴
2020 Filmfare Awards 女優デビュー賞(アナンニャー・パーンデーイ)
2020 Zee Cine Awards 女優デビュー賞(アナンニャー・パーンデーイ & ターラー・スターリヤー)
2020 IIFA(International Indian Film Academy) Awards 女優デビュー賞(アナンニャー・パーンデーイ)
2020 Lions Gold Awards 女優デビュー賞(アナンニャー・パーンデーイ)
2020 Bollywood Film Journalist Awards 女優デビュー賞(アナンニャー・パーンデーイ)


「SOTY2」を一言で斬る!
・何度となくインド映画内で見てるけど、いまいちカバディのルールが分からぬぅ(キックありなの?)

2025.10.3.

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*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある。
*2 この人は、「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」に主演したヴァルン・ダーワンの親戚筋の人だったりする。
*3 前作と同じく舞台の学校は「College」と書かれているけれど、イギリス英語における「パブリックスクール」の意で、大学ではなく「寄付で運営される私立の中高校」の意…ですよね? 主人公のもといた学校も「College」とか呼ばれてたけど…。
*4 男女比率が逆転してはいるけど。
*5 本人的には、アクションスターの自身のイメージに反する役だったと後悔してるそうだけど。
*6 イラン系のゾロアスター教徒のインドでの名称。