インド映画夜話

Shakti 2011年 162分
主演 N.T.R(ナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ・ジュニア) & イリヤーナー・デクルーズ
監督/原案/脚本 マヘール・ラメーシュ
"我々は貴方を知らない。しかし、我々は貴方が現れるのを待っていたのだ"



挿入歌 Thalia Thaliya (タリア・タリヤ)



 時に1984年のエジプト。
 世界を支配すると言うインドの秘宝を奪取しようとした争いで、夫ムクタールを失った族長ファクトーニは復讐を誓う。息子ラカーを戦闘人形に仕立て上げ、ルドラ・トライデント(英雄ルドラの三又槍)とジワラムキー・ダイヤモンド(炎女神ジワラの宝石)を求めてインドへの侵攻を計画していた。
 その数年(6年?)後。インド政府高官マハーデーヴァラヤは、生まれて来た娘が秘宝ジワラムキー・ダイヤの加護を受けている事を知るのだった…。

 時は移り2011年のインド。
 内務大臣となったマハーデーヴァラヤは、聖僧から「娘御に知らせずに、ダイヤを持って一緒に巡礼祭クンブ・メーラに行き、ガンガー(=ガンジス河)の水でダイヤを清める事」を命じられる。
 その頃、宝石の加護を受ける娘アイシュワリヤー・マハーデーヴァラヤ(通称アイスー)は、父の手によって厳重警護のもと育てられていたものの、そんな家庭生活を嫌い秘密裏に家出を敢行。友達との国内旅行に出てしまう。…彼女の知らぬうちに鞄の中にジワラムキー・ダイヤを携え、無意識のうちにインド各地の聖地をめぐるように…。

 アイスーを追って、父の捜索隊の他、アイスーの持つダイヤを狙うエジプト勢力、そのエジプト勢と取引するルドラ・トライデントの持ち主ジャナキー・ヴァルマ(自称ジャッキー・ザ・グレート)一味が迫る中、彼女の元にツアーガイドとして現れた天下無敵の男…その名はシャクティ!!


Yamaga Unde (君の美しさは[世界の8番目の不思議])



 Jr. NTR主演のファンタジー大作テルグ語(*1)映画!
 タミル語(*2)吹替版「Om Shakthi」、ヒンディー語(*3)吹替版「Ek Tha Soldier」も公開。

 わりと無茶な設定盛り沢山なアドベンチャー・ファンタジーで、その物語展開や無駄に壮大な設定の数々、次々起こるどんでんがえしと「日本のRPGとか少年マンガなノリの映画」と紹介されたのも納得の映画でございました。画面的には、「ハムナプトラ」とか「インディ・ジョーンズ」を目指したようにも見えてきたり。

 いきなり始まる、80年代のはずなのに古代エジプト風な敵勢力側による状況説明と(*4)、OPクレジットを利用したインド(+スリランカ)の全18カ所の聖地紹介(*5)と言う壮大な語り口で引っ張りながら、現代っ子アイスー演じるイリヤーナー・デクルーズの魅力をたっぷり見せつけていってからの、Jr.NTR登場までが結構長かったのが意外。
 あれかね?旅行会社とコラボして「シャクティ・ツアー」とか企画が動いてたり…しないかねぇ。

 聖地巡りの冒険も、時間の関係か予算の関係か出てきたのはジャイプル、ジョードプル(のメヘラーンガル城)、"東洋のヴェネツィア"と称されるシュリーナガル、ハリダワール、唯一南インドのハンピくらいだったけど、インド最大の巡礼祭クンブ・メーラが題材として取り入れられてて「ほほぉぉぉぉ〜」って感じ(*6)。
 叙事詩「マハーバーラタ」の出来事が起源とされ、あの玄奘三蔵も旅の記録として残していると言うクンブ・メーラは、ガンガー他の聖河での沐浴のために一度に数千万人(*7)のヒンドゥー教徒が集まると言うんだからオソロシイ。劇中の映像のどこまでが実際のクンブ・メーラの情景なのか判断は出来ないけれども、よくもまあそんな所を映画に入れようと思ったなあ。

 監督を務めるマヘール・ラメーシュは、テルグのメガスター チランジーヴィーの親戚にあたる(!!)役者兼脚本家兼映画監督。警察官の家に生まれて、土木工学を修めてからしばらくボツワナのマリーナ・アミューズメント建設場で働いていたとか。
 2000年のテルグ語映画「Baachi」から助監督として映画界に入り、2002年に「Bobby」では役者デビュー、2005年のカンナダ語(*8)映画「Veera Kannadiga」で監督デビューを果たした人(*9)。2008年にはJr.NTR主演の「Kantri」でテルグ語映画監督デビュー(&作詞デビュー)し、本作が通算5本目の監督作となる。

 興行的にはコケたとか言うこの映画、たしかに色々詰め込みすぎて後半面白さが失速してる感はある。主演のJr.NTRとイリアーナはメチャかっこええのに、敵側のエジプト人役にソヌー・スードとかをゲスト出演させてるわりにはあんま魅力的に描かれていないのが、映画の人気を落としてる原因か。壮大な設定と中央地下神殿の荘厳さ(*10)が噛み合ってないのも弱い。
 インド亜大陸を巻き込んだ、神話伝説をからめた「暗黒神話」的なパズル要素があればもっと話を盛り上げる事が出来たかもなぁ。まあ、なんだかんだ言ってこれ見てると、前々から勝手に夢想してる「インド版八犬伝って作ってみたら面白そう」って願望が実現できそうな気になってくるのが、個人的に好感度大。うん。いつか、そんなファンタジーが見てみたいゼ!!


挿入歌 Prema Desam (愛の国の姫君よ)







「Shakti」を一言で斬る!
・18カ所の聖地の選定基準と、その祭神の詳細が知りたい!! 劇中ではジャガンマータとか言ってたけど…。

2014.7.25.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 インドの連邦公用語。
*4 君ら、騎馬隊でエジプトからインドまで来てたけど、どんだけ遠いと思ってんだよ!?w
*5 テルグ文字が読めないので、詳しい情報が理解できないのが悔し!!
*6 4カ所の聖地で3年ごと持ち回り開催のこのお祭り、実際にハリダワールで行なわれた直近の年は2010年だそうだけど。
*7 最近だと1億人以上!!
*8 南インド カルナータカ州の公用語。
*9 この映画はJr.NTR主演作「Andhrawala」のリメイク。本作でもJr.NTR登場シーンで「彼を見てると、Andhrawalaのヒーローを思い出すわ」って楽屋オチな台詞が出てきまするw
*10 インディ・ジョーンズなんぞ目じゃないカッコ良さ!!