インド映画夜話

Singam II 2013年 165分
主演 スーリヤ & ハンシカー・モトワーニー & アヌーシュカ・シェッティ
監督/脚本/原案 ハリ
"インド警察、ここにあり"




 チェンナイのドン マイィルを粉砕して警察を辞職したドゥライ・シンガム(通称シンガム=獅子の意)は、その活躍から内務大臣に極秘捜査を依頼され、その隠れ蓑としてトゥートゥックディでのNCC(国立士官学校)講師の任を拝命する。到着してみればトゥートゥックディの警察は腐敗し、密輸業者との癒着にまみれていた…。

 そのNCCの敷地内にある学校に通う少女サティヤは、校内で起こる様々な事件解決のために呼ばれたシンガムの活躍を見て思いを寄せて行くものの、彼に婚約者カヴィヤがいる事を知らないまま。シンガムの方も警察を辞めた理由を親に説明できないばかりに、父親の怒りを買いカヴィヤとの縁談を進められない状態にあった。
 その頃、街で支配力を増す密輸王タンガラージ(サティヤの伯父)と麻薬王バーイの対立が激化し、バーイの権勢拡大のために"インド洋の帝王"と呼ばれる国際的麻薬王ダニーがそこに介入し始める。大臣から依頼された密輸事件捜査で、サティヤの学校の雑用係スーサイの協力と共に、そのさまを観察していたシンガムはある真実をつかむが…。


挿入歌 Vaale Vaale

*映画冒頭一発目のアゲアゲミュージカル!
 ゲストダンサー出演は、「ジャスミンの花咲く家(Seethamma Vakitlo Sirimalle Chettu)」にも出演していた女優アンジャリ。


 2010年のポリスアクション・タミル語(*1)映画「Singam」の続編登場!
 イギリスやアメリカ、クウェートではインドに(1日だけ)先立って公開された他、フランスでも公開。後にテルグ語吹替版「Yamudu II」、ヒンディー語吹替版「Main Hoon Surya: Singham II」も公開された人気作。
 その人気にのってシリーズ第3作「Si3」が2017年に公開されている。

 冒頭、前作のダイジェストアクションから、NCC講師として潜入捜査を命じられるシンガムの新カットが入って、ノリノリのアイテムソングで始まるマサーラーポリスアクション!!
 前作に輪をかけての高密度映画で、そのカット割りやシークエンスの細かさや同時並行的に展開する物語と人物描写の情報密度の高さもあって、1秒たりとも画面から目の放せない360%全方位向けのスーリヤ推し映画になっている。
 前作がタミルを支配するマフィアボスとの戦いだったのに対し、本作はよりスケールを増した国際シンジケートを有する3組のマフィアボス&その有能な手下を相手に、新ヒロイン サティヤが話をかき回し、複数のコメディアンの唐突ギャグも軽快に、息つく暇ないほどのアクション&ギャグ&ロマンス&家族人情ドラマが展開する。
 前作である程度キャラが成長しきった感のあるシンガム&カヴィヤの完全無欠さをそのままに、その完全無欠さがより凶悪な事件を呼び寄せて行くストーリーテリングの身軽さはサスガでありまする。

 2作目になると前作ヒロインの座も危うくなるかと思ったカヴィヤ役のアヌーシュカ・シェッティも、思ったよりは物語に絡んできてそれなりに出番があるのが良きかな。
 とは言っても、一番のヒロインはやっぱ今作新キャラとなるサティヤ役のハンシカー・モトワーニーで、映画前半はお定まりながらお話をかき回すヒロインとして出番は多いし、後半は美味しい所を持って行くメインヒロインな感じ。まあ、ハンシカーの貫禄がどーも高校生(?)っぽく見えなくもないところはご愛嬌だけど。にしても、サティヤの通っていた学校は士官学校関連の学校なのか、ただ敷地内に併設されているだけの一般校なのか、どっちなのぅぅぅぅ? サティヤが士官候補生ぽい教育受けてる描写はどこにもなかったけどさ。

 この手のマフィアもの映画によくある、突然大量に出てくる登場人物の関係性を理解するのが、人数が多い分初見では混乱するかもですが(*2)、まあとりあえず舞台のトゥートゥックディの2大勢力の対立が、物語の進行によって色々に変化すると理解して行けばなんとか。他のに比べればわかりやすい方か?
・まずは、表向きは羽振りのいい貿易商を装いつつ裏で密輸業を一手に取り仕切るタンガラージ。地元の有力者を親戚に持ち地盤は盤石でサティヤの伯父でもある。
 演じるのは、1967年アラブ首長国連邦アブダビのマラヤーリー家系生まれたラフマーン(*3)。80年代からマラヤーラム語、タミル語、テルグ語映画界で活躍する男優。妻メヘルンニサを通じて音楽家A・R・ラフマーンと親戚同士(*4)。
・そのタンガラージに対抗する麻薬王がバーイ。シンガムの当初の捜査目標。有能な片腕サガヤムを使って海運関係も牛耳ろうとするマフィアボス。
 演じるのは、1956年ジャンムー・カシミール州キャスア生まれのムケーシュ・リシ。フィジーやニュージーランドで店舗経営やモデル業を初め、ムンバイの映画学校で演技を学んで俳優デビューした人。主にテルグ語、ヒンディー語映画で主演男優や悪役俳優として人気を博し、パンジャーブ語、マラヤーラム語、タミル語、ボージプリー語、オリヤー語映画でも活躍を広げている。
・バーイの有能な片腕として活躍するサガヤムもシンガムの敵の一人。
 演じるのは1957年タミル・ナードゥ州トゥートゥックディ(本作の舞台!)生まれのラージェンドラン(*5)。500作以上の映画でスタントマンを勤め、その仕事中に工場廃液を浴びたアレルギーによって頭髪と眉毛を失うも、それを武器に俳優業へ転身し悪役や助演俳優でキャリアを積んで人気を勝ち取っている。
・バーイの協力要請でトゥートゥックディにやってくるマフィアの総元締が"インド洋の帝王"ダニー。バーイやタンガラージを顎で使い回す国際的麻薬王。
 演じるのは1970年英国ロンドンのガーナ移民家庭に生まれたダニー・サパニ。イギリス映画を始めヨーロッパ各映画界で活躍し、インド映画には12年のヒンディー語映画「テーズ(Tezz)」に続き2本目の出演となる。

 こうしたトゥートゥックディに潜む犯罪者の撲滅のため、わりとあっさりNCC講師の名を借りた極秘捜査から元の警官に復帰して活躍するシンガムの方もご愛嬌ながら、隠す気ゼロだろ! って超絶アクションがカッコいいから気にもなりまへんわ! ドンドコやってしまえ!! って爽快感がスンバラし。まあ、アフリカ人相手に啖呵切るあたりは「それ言って大丈夫か?」とハラハラする感じに受け取ってしまうのは、その手の訴訟問題とかに敏感なハリウッドの感覚かねえ…。
 問題は、これからもシリーズ化されるであろうシンガムの活躍で、カヴィヤ演じるアヌーシュカの出番がどんどん減らされるのか、はたまた危機につぐ危機な結婚生活が待っているのかってことだけど、後者の確率が高そ…う?

挿入歌 Singam Dance (シンガム・ダンス)

*なんとなく、聞いたことのあるようなノリのダンスだなー(棒



「Singam II」を一言で斬る!
・犯罪者たちにメチャクチャなパワーを見せつけるシンガムに対して、『なんですか、あれは?』『あれがインド風テクニックだ!』と断言するマダガスカル警察。正しい(映画的にw)。

2018.7.6.

戻る

*1 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*2 原語が理解できないで英語字幕で見てるから、ってのも大きな理由だけど...申しわけナス。
*3 生誕名ラシーン・ラフマーン。ラグマーン、ラグーと言う芸名でも活躍。
*4 A・R・ラフマーンの妻サイラー・バーヌーとメヘルンニサが姉妹のため。
*5 別名モッタ・ラージェンドランまたはモッタイ・ラージェンドラン、ナーン・カダヴル・ラージェンドランとも。