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Sonar Kella 1974年 136分
主演 ショウミットロ・チャタルジ
監督/脚本/原作/音楽 サタジット・レイ
"僕の家、道、黄金の寺院が見える"
その夜も、6才の少年ムクル・ダルは、親の制止も聞かずずっと絵を描き続けていた。
「これが孔雀だった僕。その家ではラクダを飼ってた。その家は戦争に巻き込まれた。その兵士たちは、宝石でいっぱいの黄金城塞にいるの……」
息子の様子を心配した両親がムクルを病院に連れていくと、ムクルの語る前世の記憶は世間を騒がせるほど詳細に聞き出された。その話に興味を持った心理学者へマンガ・ハジュラがムクルの言う黄金城塞はラージャスターンにあるから一緒に行こうと打診すると、その話を聞きつけた宝石目当ての詐欺師たちは密かにムクル誘拐を企てる…。
近所に住む別のムクル少年誘拐未遂事件が起きたと聞いた父親は危機感を覚え、私立探偵フェルー(本名プラドシュ・チョンドラ・ミットロ)にムクルの保護を依頼する。
早速フェルーは助手の従弟トプシ(本名トペシュ・ランジャン・ミットロ)と共にムクルの状況を調べ上げ、ジャイプールへ旅立ったムクルとハジュラ博士を追って出発。車内で知り合ったミステリ作家ジャタユ(本名ラルモハン・ガングリー)も一行に加わっていく…。
その頃、ジャイプールに到着したハジュラ博士は、同行を申し出た男2人(ムクル誘拐を企てている詐欺師オミヤト・バーマンとマンダ・ボース)に崖下へと突き落とされ、バーマンはハジュラ博士に成り代わってムクルと誰よりも先に黄金城塞にたどり着く計略を巡らせていた…。
サタジット・レイとスバス・ムコーパダヤーイー企画の児童向け雑誌「Sandesh(伝言)」上に掲載されたレイ監督の手で発表された探偵小説「Feludar Goendagiri(フェルーの冒険)」から始まる、シェアード・ワールド小説「探偵フェルー・シリーズ」の、ベンガル語(*1)映画化作品。
1971年に発表された、シリーズ6作目の同名小説(*2)の映画化となる。
アルファベット題では「Shonar Kella」とも。
本作の後、シリーズ11作目を映画化した続編「エレファント・ゴッド(Joi Baba Felunath)」が1979年に公開されている。
前世の夢を夜な夜な書き溜めていく少年から始まるミステリアスな映画冒頭はワクワクさせられる娯楽作な雰囲気。
と言いつつ、サタジット・レイ初期監督作のような深閑とした画面表現は健全であるため、探偵娯楽映画の側面と文芸テイスト芸術映画の側面が衝突してしまって、映画全体としては終始おっさんたちの腹の探り合いを見させられてる映画になっている。まあ、ベンガル人はいつもあんな感じに議論しあいながらダベりながら、腹の探り合いをし続けているというリアリズムが映されているだけかもしれないけれど。
監督デビュー作「大地のうた(Pather Panchali)」から、子供を重要ポジションにおいて撮る映画も多いサタジット・レイが児童文学も手がけていたと聞いて「どんなお話になるんだろう」と興味が湧いていた中だったけど、この映画に関しては少年ムクルは物語のきっかけで物語のラストを閉める役割を担ってるとは言え、終始受動的で周りの大人たちのいいなりに動くしかない状態なので、「子供の目線で」とか「子供の見る世界」のような児童文学的テイストは本作では特に注目されない。シリーズ初の映画化作品と言うこともあってなのか、ずっと主人公の探偵フェルー(*3)にカメラは寄り添っていく。
「前世の記憶を持つ少年」という存在について、ある程度「そんなことある?」みたいなツッコミがないではないものの「そういうもの」として全面的に受け入れて「じゃあ、その前世の舞台はどこだろう」「その宝石で飾られた城行って一攫千金しよう」という点が重要視されるのは、インド的というのかベンガル的というのか。
原作小説シリーズの主要人物の1人トプシを演じたのは、本作で映画デビューしたシッダルタ・チャタルジ。本作の続編「エレファント・ゴッド」でも同じトプシを演じたことで代表作となり、"トプシ"がニックネームになったそう。
その後映画界を離れて公認会計士の資格を得て、起業家、投資顧問会社代表を務めている。2009年のベンガル語映画「Hitlist」「Madly Bangali」から俳優活動を再開(*4)。ベンガル語映画界で散発的に活躍している。
もう1人の主要登場人物ジャタユを演じたのは、1925年英領インドのベンガル管区ブルドワン県(現 西ベンガル州バルダマーン県)のソナパラシ村生まれ(*5)のサントシュ・ドゥッタ。
刑事事件弁護士として働く一方でコメディアンとしての人気を得て、1958年のサタジット・レイ監督作「哲学者の石(Parash Pathar)」でノンクレジット出演。翌1959年の「Headmaster(家長)」で正式に映画デビューする。本作のジャタユ役が当たり役となって大きな人気を勝ち取り、サタジット・レイ自身が小説の中のジャタユをサントシュをモデルに書き直したと言われているほど。以降、ベンガル語映画界で活躍。
1988年コルカタにて物故される。享年62歳。その死後、サタジット・レイをしてサントシュ・ドゥッタ無くしてフェルー映画を作ることは不可能だと述べられている。
にしても、本作は探偵フェルー・シリーズに初めてジャタユが登場するエピソードというのが、映画化された要因の1つだったり……する?(*6)
前世の夢に出てきた「黄金城塞」の話を聞いて即「ラージャスターンにあるから行こう」と言いだした時点でオチは見えてるようなものだけど(*7)、映画の魅力の半分くらいは、ベンガル人側から見た旅情かもし出すラージャスターンの風光明媚さが持っていっている、"インクレディブル・インディア"をアピールする観光ムービーとしての側面が一番強いかもしれない(*8)。
ムクルをさらって一攫千金を狙う詐欺師2人組の陰謀も、特に陰謀と呼べるほど計算されてるわけでもないし、ハジュラ博士に成り代わったバーマンにムクルは簡単に懐いているし、フェルーが2人を追跡してきていると聞いても特に対策を立てるわけでもなく、口八丁で乗り切ろうとするあたり、サスペンスとしても盛り上がるどんでん返し的な要素も薄い。「みんなでジャイサルメールを見に行こうね!」って要素がやっぱり一番強いんでないかなあ…。
まあ、死んだと思われたハジュラ博士のその後を時々挟んで、フェルー一行、ムクルと悪役2人組、ハジュラ博士の3組の進行状態が最後に1つになった時の効果は「あ、それがやりたかったのね」って感心してしまう効果を引き起こしていたけれど。
にしても、ジャイサルメールみたいな有名な大規模城郭遺跡ってベンガル地方にもあるんでしょか? そこを舞台としたミステリってのも見てみたいですわー(探せばあるかも)。
受賞歴
1975 National Film Awards 金蓮脚本賞(サタジット・レイ)・金蓮監督賞(サタジット・レイ)・金蓮注目ベンガル語映画賞
1974 Government of West Bengal 作品賞・監督賞・脚本賞
「SK」を一言で斬る!
・ジャイサルメール駅とジャイサルメール城って、わりと近いのね!(城がデカすぎて、近くに見えるだけ? 遠近感がわからなーい!!)
2026.8.21.
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*1 北インドの西ベンガル州、トリプル州、アッサム州、連邦直轄領アンダマン・ニコバル諸島の公用語。バングラデシュの国語でもある。
*2 著者はサタジット・レイ?
*3 劇中の発音では、フェルダと聞こえるときも多い。
*4 前者では、シッダルタ・チォットパダーイ名義で出演。
*5 カルカッタ生まれとも。
*6 本作では、事件の脇で茶々入れてる道化役的なんだけども。
*7 ラージャスターンには、光り輝くゴールデンシティと呼ば……フゴフゴ。
*8 当時、そんなキャッチフレーズはなかったけど。
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