インド映画夜話

Swades 2004年 195分
主演 シャー・ルク・カーン & ガーヤトリー・ジョーシー
監督/製作/原案/脚本 アシュトーシュ・ゴーワーリーカル
"ガンディーは言う…成功しないだろう、広まらないだろうと言う態度こそ、事態を悪化させる原因だと"




 米国のNASAで、GPM(Global Precipitation Measurement=雨量監視衛星)開発にたずさわるNRI(在外インド人)モーハン・バルガヴァは、仕事の合間を縫ってインドへと帰国した。仕事にかまけて長年連絡を絶っていた育ての親、カーヴェリーを米国移住させるために…。

 数年前に義母が女性に連れられてチャランプル村に行ったと聞いたモーハンは、本屋で村の場所を教えられるも道に迷いつつ、なんとか義母と再会を果たす。そこで彼女と同居している女性が、本屋で出会った女性であり、かつての幼なじみギーターだった事を知らされる。
 義母の米国移住説得のため村に滞在するモーハンは、その間に旧来的な村人たちの間に存在する、数々の社会問題を目の当たりにする。いつまでも解決しない停電、貧困、カースト差別、女性蔑視、児童労働や幼年婚など子供を巡る状況…それに向き合おうとせず、各自がバラバラなままの村人たちの態度にあきれるモーハンに対し、ギーターは一喝する…「それでも私たちは、国を草の根から良くしようと日々努力している。NRIの貴方のように国を捨てたりしない!!」


挿入歌 Yun Hi Chala Chal (旅を続けよう)


 タイトルは、ヒンディー語*1)で「祖国」。副題は「We, the People」。
 ヒンディー語映画の名作「ラガーン(Lagaan)」のアシュトーシュ監督が、その次の作品としてキング・オブ・ボリウッドのシャールクを迎えて製作した、社会派愛国映画(*2)。
 お話は、実在のNRI アラヴィンダー・ピララマッリとラヴィ・クチマンチたちが興したAID(Association for India's Development=インド開発協会)の活動から着想を得たとか。
 映画公開後、批評家たちから2003年のカンナダ語映画「Chigurida Kanasu」とその原作に内容が酷似していると指摘されたそうだけど、原案担当のM・G・サティヤはこれを否定したと言う。

 インド人らしくない米国育ちのエリートNRIの目を通して浮かび上がる、現代インドの悲惨な社会問題と、それでもそこで生きていく人たちの現状と解決の糸口を描く本作は、インド人自身が様々な国内問題に対し、やはりしっかりと自覚的であることを分からせてくれる。
 と同時に、モーハンに反発する村人の言でもないけれど、外国人が「こうすれば解決するのに」「ああすればなにも問題なのに」と簡単に言う解決策は、実際には複雑な利害が関与する現実問題にそぐわない点を無視している事が多く、より事態が混乱するだろう事も示唆し「結局は、自分たちインド人自身が動かなければなにも解決しない」と言う結論へと到達していく。
 こうしたテーマや、生き生きと描かれるチャランプル村の描写は、アシュトーシュ監督の前作「ラガーン」の製作コンセプトを継承した形になっていて、「ラガーン」で主役を演じ製作としてもたずさわったアーミル・カーンが作った「黄色に塗りつぶせ(Rang De Basanti 06年作)」「地上の星たち(Taare Zameen Par 07年作)」で描くテーマとも共鳴する感じ。

 まあでも、なんと言うか語り口がテーマありきのせいか、なんとも説教くさい映画になってしまっている。OPのタイトルの出し方とか、後半のダシャヘラー祭のラームラーリー(ラーマーヤナ劇)、駅の水売り少年、「Yeh Jo Des Hai Tera(この貴方の国こそ)」シーンのダイナミズムとかは見所いっぱいなのに、全体としてなんかもっさい印象を受けてしまって…ねぇ。小説とかだったら面白く読めただろうけど、映画だとなぁ…。

 ヒロインを演じたのは、1977年マハラーシュトラ州ボンベイ(現ムンバイ)生まれでモデル出身、これが映画初出演となるガーヤトリー・ジョーシー。2000年に東京で行なわれたミス・インターナショナルにて、インド代表として選出され、セミファイナリストまで登り詰めた人。
 学生時代にいくつかの広告モデルやミュージッククリップに出演して、シャールクとも面識があったそうな。本作では、批評家たちからその演技力を絶賛され数々の新人賞を獲得したものの、興行的には伸び悩んだためか私生活での事情のせいかその後映画界から遠ざかり、唯一09年のサルマン映画「Wanted(ウォンテッド)」に端役出演しているのみ。まあ、役柄でちょっと損した感じは、ねぇ…。

挿入歌 Pal Pal Hai Bhaari (あらゆる瞬間は重々しく [私たちは苦難と共にあり])

*村のダシャヘラー祭(インド最大の秋祭。アスヴィナ月[9〜10月]の10日目。叙事詩ラーマーヤナでは英雄ラーマが羅刹王ラーヴァナを倒した日として、善が悪に勝利した日を祝う)のハイライト、ラームラーリー(ラーマーヤナ劇)の場面。
 ギーター演じるシーター姫と、郵便局員ニヴァーラン演じる羅刹王ラーヴァナの問答のシーン。シーターが救いを求める偉大なる英雄ラーマはどこにいるのか。救いの声に答える偉大なる祖国の姿は…シーターとラーヴァナはお互いに問い続け、外野のモーハンは「ラーマは全ての存在の中にいる」と歌い上げる…。
 ここのラーヴァナの歌は、アシュトーシュ監督が声を当ててるんだそうな。


受賞歴
2004 National Film Awards 男性プレイバックシンガー賞(ウディット・ナラーヤン/Yeh Tara Woh Tara)・撮影賞(マヘーシュ・アーネイ)
2005 Filmfare Awards 主演男優賞・BGM賞(A・R・ラフマーン)
2005 IIFAインド国際映画批評家協会賞 作詞賞(ジャベード・アクタル/Pal Pal Hai Bhari)
2005 Golden Indian Film Awards GIFA主演男優賞・新人女優賞(ガーヤトリー・ジョーシー)
2005 Zee Cine Awards 女優デビュー賞(ガーヤトリー・ジョーシー)
2005 Star Screen Awards 新人賞(ガーヤトリー・ジョーシー)
2005 Stardust Awards 監督賞
2005 Bollywood Movie Awards 女優デビュー賞(ガーヤトリー・ジョーシー)
Film Cafe´ Awards 主演男優賞
Rupa Cinegoers Awards 批評家選出主演男優賞


「Swades」を一言で斬る!
・チャランプルでのシャールク、やたら背が高い…村人と比べてひと際手足が長い…ように見える。

2020.1.24.

戻る

*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*2 実は、最初はリティックに主役オファーしたそうだけど。