インド映画夜話

Tere Ghar Ke Samne 1963年 149分
主演 デーヴ・アーナンド(製作も兼任) & ヌータン
監督/脚本 ヴィジャイ・アーナンド
"たとえ空が落ちようと、地球が2つに別れようと、笑顔が消えようとも……僕は君の家の前にいるよ"





 その日、西洋風の富豪セス・カラムチャンドと伝統衣裳に身を包む富豪ラーラ・ジャガンナートは、デリーの行政主催の地所売却オークションで張り合い続け、人々の注目の的に。最終的に、一等地はジャガンナートが買い上げ、その裏の地所をセス・カラムチャンドがそれ以上の値段で買い上げることになり、犬猿の仲の2人の間の遺恨はくすぶり続ける…。

 買い取った土地に新居を構えようとする父親セスに代わって、担当建築家と交渉しようとする娘のシュレーハは、父が雇った米国帰りの若すぎる建築家ラケーシュ・アーナンド・クマールとのドタバタを繰り返しながら、なんとなく仲良くなって両親公認の間柄へ。

 …だがラケーシュは、あのラーラ・ジャガンナートの実の息子だったのだ!
 米国風に染まったラケーシュは父親ラーラの怒りを買い勘当されていたものの、母親の取りなしでなんとか和解。調子づいたラーラは、ラケーシュの力でカラムチャンドを越える邸宅を建てようと計画する。和解したばかりの父の手前はっきり「カラムチャンド家の設計をやってる」と言えないラケーシュは、家族とカラムチャンド一家双方の顔を立てつつ秘密裏に2つの邸宅の設計を進めていくことに…。


挿入歌 Dil Ki Manzil (心の行く先は [愛をただ知るだけの人のよう])

*初対面のシュレーハに浮浪者と間違えられたラケーシュは、彼女のオーダーを一蹴。憂さを晴らすため同僚のジェニーとキャバレーへ遊びにいくと、同じキャバレーにシュレーハと弟(兄?)のランジット(自称 ロニー)が現れ相席に。
 ここでラケーシュの怒りは氷解してシュレーハとの親交を深める所で、キャバレーの恋歌が始まり、2人のロマンスが本格的に始まった事を宣言する。



 タイトルは「君の家の前で」。
 40年代から活躍している名優、故デーヴ・アーナンドの数ある代表作の1つ。いつものお店で「デーヴ・アーナンドのモノクロ時代の映画ありません?」って言ったら出て来たのがこれ(*1)。
 監督は、デーヴ・アーナンドの弟ヴィジャイ・アーナンドで、この兄弟も有名な映画一族出身。ちなみにこの兄弟の妹(ヴィジャイにとっては姉?)にあたるのが、シェーラ・カンタ・カプール(*2)だったりする。

 なんとなく「お熱いのがお好き」とか「アパートの鍵貸します」なんかのビリー・ワイルダー映画を彷彿とさせる軽快な会話劇で進行するラブコメ映画。
 いちおうラケーシュ&シュレーハの他、シュレーハの弟(兄?)ロニー&ラケーシュの会社の窓口嬢ジェニー、ラケーシュの部下マダン&シュレーハの友人モティヤーと言う組み合わせで3組のカップルが同時進行的に結ばれていくんだけど、お話はずっとラケーシュ&シュレーハばかりを追うので、他の恋人たちは蚊帳の外状態。
 どっちかと言うと、両家のいがみ合う父親たちの方が出番も多くアクの強いキャラで、その頑固ぶりと衝突ぶりが色々と楽しい。どの国だろうがいつの時代だろうが、親子間の対立は「革新的な若者」と「保守的な大人」の構図になるんですな。
 それなりに「革新的な若者が世の中を動かしていくけど、伝統を無視しちゃあかんよ(でも物事は公正にね!)」的なお話になっているけども、何度も話を混ぜっ返す頑固な父親たちは、明らかにコミックリリーフ。後半はまぁ、恋人たちの障壁として君臨するわけだけども…台詞の応酬だけってのはどうもね…。

 スタイリッシュで小粋な紳士ラケーシュの飄々とした可愛さも絶妙(なにかにつけ、口を一文字にして人差し指を当てる仕草が微笑ましい)で、ヒロインのヌータン演じるシュレーハとのユーモアたっぷりのやり取りが、実に60年代の古き良き時代を反映して小気味よい。
 このヌータン(本名 ヌータン・ベール[旧姓サマート])は、歴代ボリウッドを代表する女優の一人だそうで、50年代〜90年代まで、生涯現役の女優として活躍した人物(*3)。元気娘のおこすツンデレっぷりは、この時代でもバリバリ現役な可愛さ。なんとなく、場面によってはオードリー・ヘップバーンを彷彿とさせるような、でないような…。

 にしても、ラケーシュの建設事務所は、クライアントにデザインを見せる時に模型は造らないのでしょか? 全部イラストで説明して「これがいい!」とトントン拍子に施行に入ってたけども…。


挿入歌 Tere Ghar Ke Samne (君の家の前に家を作ろう)

*両家のドタバタに巻きこまれてシュレーハと会えなくなり、両家の父親はいがみ合うのを止めない。疲れてきたラケーシュは、グラスの中の愛しの人の幻と歌いあう事で自分の望む未来を明確にしていく…。
 不思議にコミカルで、不思議に幻想的なロマンチックな合成映像がステキ。




2012.12.21.

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*1 もう1つ出て来たのが「Jewel Thief」…ってカラーやないけ! ホントは、50年代の映画が見たかったんだけど…。
*2 「エリザベス」「エリザベス:ゴールデン・エイジ」「女盗賊プーラン」などを手掛けた映画監督シェーカル・カプールの母。
*3 彼女の妹も有名な女優タヌージャで、そのタヌージャの娘が現在トップスターのカージョルだったりする。