インド映画夜話

Youth 2002年 169分
主演 ヴィジャイ & シャヘーン・カーン
監督/脚本 ヴィンセント・セルヴァ
"結婚前に愛し合えるなんて、私は信じない"
"本当の愛は、結婚後にお互いで育てるものよ"


挿入歌 Old Model Laila (ライラーとマジュヌーは古典的な恋人同士)


 料理人シヴァの結婚式は、当日に「私は料理人とは結婚したくない」と書置きを残して家出した従姉妹の新婦アルナの失踪によって中断されてしまった。

 失意に沈む叔父一家を励ましつつ、チェンナイに上京するシヴァは、アルナの兄プラブーを頼り、彼の職場のホテルで職探しを始める。
 その晩、暴漢に襲われる美女サンディヤーを助けて感謝のキスを受けたシヴァは、それをきっかけに彼女と仲良くなって愛するようになるが……招待を受けたサンディヤーの誕生日パーティーの席上で、彼女は「婚約者を紹介します」といって、シヴァとは別の男プラタープを皆に引き合わせるのだった…!!


挿入歌 Adi One Inch Two


 2000年のテルグ語(*1)映画「Chiru Navvuto(笑顔とともに)」の、タミル語(*2)リメイク作。

 自由恋愛とお見合い結婚の狭間で揺れるインドの若者たちの恋愛模様を描くロマンス映画。
 結婚式で始まり結婚式で終わる、家族ドラマ&恋愛ドラマとしての基本をなぞりつつ、親の顔を立てて見合い結婚を理想とするヒロインを襲う陰謀、見合い結婚を否定して逃げ出したセカンドヒロイン アルナが経験する不幸、自由恋愛を夢見る主人公たちの姿勢に水を差すインド社会通念…と、結婚をめぐるそれぞれの価値観の衝突から、インド青年層の変化を描こうとしている青春劇であり、見合い結婚の価値をそれなりにアピールしつつも自由恋愛結婚の方を希望として描いている、まさ青年文化(公開当時の)をメインターゲットとしてる映画って感じではある。

 相変わらずの、長台詞の応酬が多い劇進行の中、まだアクション主体に舵を切ってないヴィジャイの「本気になると強いけど、根は優しく他者をリスペクトする主人公」の爽やかさ全開っぷりが今となっては楽しい(*3)。

 やたら「私はモデルよ」アピールの強いヒロイン サンディヤーを演じるのは、モデル出身のシャヘーン・カーン。
 MVやモデル活動を経て、86年のTVドラマ「Love Match」に出演して女優デビューとなり、93年のインドを舞台にした英国映画「Bhaji on the Beach」で映画デビュー。本作のリメイク元である00年のテルグ語映画「Chiru Navvutho」でインド映画デビューし、その時の役名サンディヤーの名前でクレジットされることもあるとか。「Chiru Navvutho」のカンナダ語(*4)リメイク「Premakke Sai」でも、同じサンディヤー役を演じている。
 本作以降は、女優業としては主にTVドラマや外国映画・短編映画で活躍中。

 後半のセカンドヒロイン アルナを演じるのは、1985年カルナータカ州バンガロール(別名ベンガルール)のマラヤーリー系家庭(*5)生まれのシンドゥー・メーノーン。兄に、VJ兼男優のカールティクがいる。
 幼少期から古典舞踊バラタナティヤムを習っていたことがきっかけで、映画監督K・V・ジャヤナムから依頼されて、94年のカンナダ語映画「Rashmi」に子役出演。99年の「Prema Prema Prema」で若干13才ながら主演デビューし、本格的に女優業を始める。01年には「Bhadrachalam」でテルグ語映画に、「Uthaman」でマラヤーラム語映画に、「Samuthiram(海)」でタミル語映画にそれぞれデビュー。以降、マラヤーラム語映画界を中心に南インド映画各界とTV業界で活躍中。

 インド映画では珍しい料理人主人公ということで(*6)「ついにグルメ系インド映画が見れるかも!」とか思ってたこちらの期待は、冒頭の主人公紹介シーンでの料理シーンのみで完全に無視されてもーた。あとはせいぜい、ヒロインとのデート中にディナーを自分で用意するシーンがあるくらいで、料理人設定はあんま生かされなかったですな(*7)。
 そんな庶民代表な主人公と、大金持ちのヒロインとの恋愛は、その生活レベルの格差とかは特に注目されず、終始爽やか青春もので押し通してるのも良きかな。男を翻弄させる系美女のヒロインも、なんだかんだで善人でしかなく、女性を利用しようとする悪役以外は皆グレてないのも爽やか青春劇故でしょか。その善人同士の家族が織り成すすれ違いドラマが、なんとも素晴らしくこちらの心を撃ってくれるわけですが。

挿入歌 Santhosam Valkaiyin (喜び、それは人生の強さ)

*結婚詐欺や家庭内暴力に晒されて、表情1つ変えない顔で家に戻ってきたアルナが、シヴァたちの軽口に一瞬笑顔になったことを見て、皆でアルナを元気づけようとするの図。



「Youth」を一言で斬る!
・デートにまず必要なアイテムは、キャップとアイスクリームなのか! φ(.. )メモシテオコウ

2020.9.20.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 ある程度アクションシーンはあるけども。
*4 南インド カルナータカ州の公用語。
*5 マラヤーラム語を母語とする家。
*6 探せばあるだろうけど…すぐ思いつくのは「ウスタード・ホテル(Ustad Hotel)」くらい? 他に料理人要素のある映画は、主人公がハウスビジネスとしてお菓子作りをしている「マダム・イン・ニューヨーク(English Vinglish)」とか、ヴィジャイがパン職人を演じる「テリ(Theri)」とかちょいちょいあるけど。
*7 ホテルでの仕事も、本屋の雑用だしぃ。