インド映画夜話

人生は一度きり (Zindagi Na Milegi Dobara) 2011年 153分
主演 リティック・ローシャン & アバイ・デーオール & ファルハーン・アクタル(製作/台詞も兼任)
監督/脚本/原案 ゾーヤー・アクタル
" 人生はキャラバン。情熱で染め上げ……どこまでも飛んで行け!"





 その日、建築家のカビールと、インテリアデザイナーのナターシャの婚約が決まった。

 その婚約式の会場で、カビールの学生時代の親友イムラーンは「いつか"三銃士"と呼ばれた親友3人でスペインへ独身旅行に行こう」と言う昔の誓いを、今果たそうと提案。三銃士最後の一人、ロンドンで証券トレーダーをしているワーカーホリックなアルジュンを呼び寄せて、3人はバルセロナで久々の再会を果たす。
 婚約者を残して男だけの旅を満喫するカビール。仕事にかまけて恋人と別れてしまった傷心のアルジュン。実は育ての親とは別に本当の父親がスペインで画家をやっている事を知らされたイムラーン。三者三様の人生を見つける旅が始まった…。

 イムラーンの必要以上のはしゃぎようと久しぶりの友人との噛み合わない空気で、旅は当初からイムラーンとアルジュンの喧嘩で始まリ、不穏な空気。
 そんな中、カタルーニャ州北部コスタ・プラバで出会った印米ハーフの美女レイラに一目惚れしたアルジュンは、彼女がインストラクターを務めるスキューバ・ダイビングで今までにない感動を味わい、人生観を揺さぶられて行く。
 3人はレイラに着いてバレンシア州ブニョールのラ・トマティーナ(トマト祭)へ。この大騒ぎの狂乱の中、イムラーンはレイラの友達ヌリアといい仲になり、一方でレイラとアルジュンの距離も急接近。しかし、彼らと行動を共にするレイラとカビールの仲を疑ったナターシャが、いきなり一行に合流してきて一気に緊迫した空気に…。


挿入歌 Ik Junoon /Paint It Red (それは情熱、狂気 [赤く染めろ])



 通称「ZNMD」(または「ジンダギ」)。いままでスペイン語圏へのロケに消極的だったボリウッドにおいて、初の本格スペインロケを敢行した映画で、主役のファルハーンの姉ゾーヤーの第2作目となる監督作。
 日本では、2011年にラテンビート映画祭にて上映され、翌2012年のIFFJインディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパンでも上映された。

 最初にちょろっとインド(&ロンドン)が出てくる以外は、ほぼまるまるスペインの観光名所巡りのようなロードムービー。
 地中海のリゾート地コスタ・ブラバでのスキューバ・ダイビング、スペイン最大の祭りラ・トマティーナ、アンダルシア州セビリアでのスカイダイビングやフラメンコ(*1)、ナバーラ州パンプローナのサン・フェルミン(牛追い祭)などなど、スペイン観光局の協力のもと、スペインの魅力をこれでもかと伝えるにぎやかな観光地が次々と登場。独身貴族3人男が体験する人生讃歌は、情熱の国に住む情熱な人々によって盛り上がる!
 ボリウッドは、海外ロケでは昔から色々な場所に出向いてはいるけれど、今までスペイン語圏にはあんまり進出していなかった(*2)。おそらくは言語の違いやなじみの薄さかなんかだろうけども、3人の男たちが人生を見つめ直す物語に合わせるかのような情熱の国スペインの享楽的喧噪は、まさに本作とピタリ符合する「スペインいいとこ、一度はおいで」ってなもんだゼ、野郎ども。

 それまでなじみの薄い舞台の中で繰り広げられる物語も、従来のボリウッドの定型をなぞると見せかけて色々ひねってくるのは、ゾーヤー監督の前作「チャンスをつかめ (Luck By Chance)」に通じるものもあり、「チャンスをつかめ」がひねろうとして変な所がひねくれた映画になっているのに対して、本作ではより娯楽映画としての完成度を高めてくる演出の進化具合が単純に楽しい。
 アバイ演じるカビールが抱える結婚への一抹の不安、リティック演じるアルジュンの「経済的成功こそ人生の鍵」と言う信念の揺らぎ、ファルハーン演じるイムラーンの持つ実父への懐疑……どれも、従来のボリウッド的幸福表現から一回転した別の価値観を引き出して来ていて、一見定型な形のエンディングもよく考えると従来とは真逆な価値観に支配されて終了している。
 それらの物語を彩る、古式ゆかしいローマ風&現代があわさったスペインのカラッとした風景はとにかく異様にクール!(*3)
 旅先で偶然出会うインド系美女(インド映画のお約束!)とのロマンスも、レイラを演じるカトリーナ自身が印英ハーフなんだからまぁ「あってもいいかもねぇ」とは(ムリクリ)思えるけども、ヌリアとイムラーンの急接近はいくらなんでも願望的すぎないか……と思ってしまうのは「海外では、女性はモテるけど日本人男性はモテないよ」とか言われてしまう日本人的感覚でしょか。ケッ。

 日本人と言えば、ワーカーホリックなアルジュンを表現するために、旅先でも商談を始めようとする空気を読まないアルジュンの取引先に、いきなり日本人が出てきたのは笑う。
 相手のヤマモトさんもリティックも、明らかに外人発音だけどもそれなりに流暢に「もしもし」「ありがとう」「お元気ですか」とか日本語を話しているから微笑ましい。
 アルジュンの携帯を投げ捨ててしまったお詫びにイムラーンが買って来た、ピンクカラーの携帯を見て「なんでピンク? おいおい、オレはトレーダーであって日本の女子高生じゃないぞ!」と怒るリティックを見てると、日本ってどんなイメージやねん…とわかっていても言いたくなるわん。にしても、「もしもし」って相手の顔が見えてる時の挨拶として使うかなぁどうだろうなぁ。

 スペイン留学経験のある弟に見せたら「あれ? この旅行って1年間くらいやってんの? トマト祭りって8月の祭りだけど、牛追いって7月だよ?」とすぐツッコんできた。さすがは、留学中にバレンシアに通いまくるわ、友達と車でバレンシア〜セビリアまでぶっ飛ばしただけはあんね我が弟。まさにそれ、劇中の独身男旅行じゃねーか!


挿入歌 Senorita (セニョリータ)

*スペインのニュースで、ここでゲスト出演してるフラメンコダンサーが驚喜しながら「私、ついにボリウッドに出演できたのよー! 夢みたーい!!!!!」と叫びながらインタビューに答えておりましたわ。




受賞歴
2011 National Film Awards 振付賞(Senorita)・録音賞
2011 NDTV Indian of the Year Awards NDTVエンターテイナー・オブ・ジ・イヤー賞
2012 Screen Awards 作品賞・台詞賞・振付賞(Senorita)
2012 Apsara Film & Television Producers Guild Award 作品賞・監督賞・助演男優賞(ファルハーン・アクタル)・脚本賞・原案賞・振付賞(Senorita)
2012 Filmfare Awards 作品賞・批評家選出作品賞・監督賞・助演男優賞(ファルハーン・アクタル)・台詞賞・撮影賞・振付賞(Senorita)
2012 Stardust Awards スター・オブ・ジ・イヤー賞(リティック)
2012 Zee Cine Awards 原案賞・助演男優賞(ファルハーン・アクタル)・撮影賞
2012 IIFAインド国際映画批評家協会賞 作品賞・監督賞・助演男優賞(ファルハーン・アクタル)・原案賞・撮影賞・脚本賞・編集賞・振付賞(Senorita)・録音賞

2012.10.19.

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*1 セビリアはフラメンコや闘牛の本場!
*2 スペイン語が出てくるのは、リティック主演の2010年映画「カイト (Kites)」(+スペイン語は出てこないけどペルーロケのあったタミル映画「ロボット」)くらい?
*3 アルハンブラ宮殿等の有名なイスラム遺跡が出てこないのは意図的?