主役ラメーシャンを演じたニーヴィン・パウリィは、1984年ケーララ州エルナクラム県アルバのシロ=マラバル典礼カトリック(*2)の家生まれ。父親はスイスで働いていたメカニックで、母親もスイスの病院に勤めていた看護士だったそう。
FISAT(連邦科学技術院)で電子通信エンジニアリングの学位を取得。在学中の03年、ローカルアルバム「Olive」製作に参加していたそう。卒業後、一時ベンガルールでソフトウェアエンジニアとして働いていたものの、父親の死去にともない08年に辞職し実家に戻った後、10年公開のマラヤーラム語映画「Malarvaadi Arts Club」のオーディションに参加。1度は落選したものの再オーディションで主役級に選抜されて映画デビューしてヴァニータ・フィルム・アワードのデビュー賞を獲得。同年にFISATの同級生と結婚する。その後もマラヤーラム語映画界で活躍し続け、12年の主演作「Thattathin Marayathu(ヴェールの影の下)」が年間最大ヒットを飛ばしてトップスターの仲間入り。翌13年にはマラヤーラム語+タミル語映画「Neram(時)」に主演してタミル語映画界にもデビューし、フィルムフェア・サウスの男優デビュー賞などを獲得。さらに本作の後、15年の主演作「Premam(恋)」の大ヒットによって名実ともにマラヤーラム語映画界のスーパースターとなっているそうな。
インド人の、国をあげてのクリケット愛を描きつつ、全体としては祖父・父親・息子の3代の親子愛・家族愛を描くインド映画の得意とする家族もの映画で、貧しい村人たちが物のない中でクリケットに熱狂する前半はノスタルジーの匂いの強い古き良き青春映画のよう。主人公の小学生時代に出てくる子役たちのマセた恋愛劇も嫌みに見えない可愛さなのが憎らしい。
クリケットに興じる男たちの友情具合もいい感じで、スポ根と言うより友情根的な熱さ(*4)が支配する牧歌的なシーンの多さも魅力。まあ、チームメンバーの設定年齢が何才くらいなのかが気になったりならなかったりだけど…(*5)。リーダー的な友人キャラが、家庭の事情でクウェートに出稼ぎに行ってしまって湾岸戦争に巻き込まれるなんて展開は、ヒンディー語映画「エアリフト(Airlift)」を見た後だと色々考えてしまうゼ。
そこから、それぞれに大人になってクリケットだけに熱狂する生活を捨てていく中盤から、「フェラーリの運ぶ夢(Ferrari Ki Sawaari)」のような父子による家族再生劇が中心になっていき、そこにクリケットを愛する数々の人々の協力・支援が主人公たちの持つクリケット愛や人生の再生劇に昇華していく。まあ、こっちも基本男の友情劇で、奥さんを初め周りの女性たちはほぼ置いてけぼり状態なのが家庭の平和のためにはいいもんなんだろか、と思わんでもないけども(*6)。
受賞歴
2014 Kerala State Film Awards 主演男優賞(ニーヴィン)・助演男優賞(アノープ・メノン)・監督デビュー賞
2014 Filmfare Awards 女優デビュー賞(ニッキー・ガルラーニー)・作詞賞(B・K・ハリナラヤン)・批評家選出主演男優賞(ニーヴィン)
2015 National Film Awards 音楽監督賞(ゴーピー・スンデル)