3 2012年 148分
主演 ダヌシュ(製作&作詞&歌も兼任) & シュルティ・ハーサン(歌も兼任)
監督/製作/脚本 アイシュワリヤー・R・ダヌシュ
"あなたは…彼の1部分しか知らない"
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その日、突如死亡したラームの葬式が執り行われていた。
ラームの妻ジャナニは、物盗りの犯行でもなく事故死でもないような夫の不審死を受け止められず、ただ、虚空を見つめるだけ。その視線の先に、彼女はラームの影を見る気がしたのだ…。
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2人の出会いは、まだ12年生だった頃。
雨の中、登校途中に自転車が壊れて妹スミ共々困っていたジャナニを見つけたラームは、自転車を直しつつも彼女の美しさに一目惚れして、その日から彼女の通う塾に親友シャンカルと共に潜入して始終行動を共にするように。その後もジャナニのためならなんでもするラームに、徐々に心を許していくジャナニだったが、厳しい両親にはこの事実を告げることができず、さらに彼女は近々家族と共に米国移住しなければいけない身でもあった。ジャナニは、悩んだ末についに…!!
挿入歌 Why This Kolaveri Di
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*監督の従弟アニルドゥ作曲、ダヌシュが歌う挿入歌で、発表後に口コミで人気が広まって一斉を風靡した人気曲!
タミルのスーパースター ラジニカーントの娘にして、本作主演のダヌシュの妻でもあるアイシュワリヤー・R・ダヌシュの監督デビュー作(*1)となる、タミル語(*2)ロマンス映画。
日本では、2021年のインド映画同好会主催「インド大映画祭IDE2021」にて上映。
劇中、色々と「3」にまつわる要素は出てきているような…「3」に足りない要素が出てくるようなだけども、具体的にタイトルが何を指しているのかは…さて?(*3)
いやもう、ダヌシュの親族がダヌシュ映画を撮るとやっぱりこうなるのね、って言うくらい誰も幸せにならない怒涛の焼け野原映画。
出だしから不穏な主人公の葬儀に始まりながら、前半は少女漫画か! って感じの回想による甘々ラブロマンスを旦那主役にして撮るアイシュワリヤー監督の「ダヌシュの撮り方を心得てますヨ」ってドヤ顔してそうなアングルがたまらない。その愛に狂う一途な主人公が、後半には意外な困難に見舞われ、愛する妻に愛するが故に真実を告げられないまま、事態の最悪な展開を止められなくなる痛々しさが、滅びの美学的に美しく、切なく、物悲しい。
わりとパキッと前半と後半が分かれすぎてる感もあるけれど、青春ロマンスの幸福感に満ちた前半と言い、サイコサスペンス風味に転調するシリアスな後半と言い、それぞれのシークエンスは、基本に忠実ながらきっちりユーモアも交えて手堅い作り。初監督作にありがちな構えた野心みたいなものももちろんあるけど、しっかりポジティブな方向へつなげている映画制作手腕の確かさは、名優を集める周囲の協力と準備に底支えされたもんですかねえ(*4)。
その本作監督のアイシュワリヤー・ラジニカーント・ダヌシュは、1982年タミル・ナードゥ州セーラム生まれ。
前述の通り、父親はかのタミルのスーパースター ラジニカーント(本名シヴァージー・ラーオ・ガイクワド)。母親は歌手兼映画プロデューサーのラータ・ラジニカーント(別名ラータ・シヴァージー・ガイクワド。旧姓ランガチャリ)。妹に、グラフィックデザイナー兼映画プロデューサー兼映画監督のサウンダリヤー・ラジニカーントがいる。
00年に未公開映画「Ramanaa」の挿入歌を担当して映画界入りし、06年の「Pudhu Pettai」で衣裳デザインを担当。03年のタミル語映画「Whistle(ホイッスル)」で助監督を勤めると共に、挿入歌"Natpae Natpae"で正式に歌手デビューして、翌04年にタミル語映画界のスター男優ダヌシュと結婚する。
10年の「Aayirathil Oruvan(男の中の男)」でヒロイン演じるリーマ・セーンの吹替を担当すると共に、夫婦で挿入歌"Un Mela Aasadhan"を担当して、フィルムフェアのタミル語映画女性プレイバックシンガー賞ノミネート。12年に本作で監督デビューとなり、母方の従弟アニルド・ラヴィチャンダルを映画界に招いて音楽家デビューも飾らせている。15年には2本目の監督作「Vai Raja Vai」でシンガポール、タイ、ベトナム、日本ロケを敢行。同年にはJFA女性功労賞のニュースメイカー・オブ・ジ・イヤーを獲得。翌16年にはUNウィメン(国連女性機関)からインド親善大使に任命されて国際女性の日に国連本部にて古典舞踊バラタナティヤムを演じている(*5)。
前半の親に隠してデートする恋人2人の姿のいじらしさも可愛らしいながら、寺院詣の家族旅行に行ったヒロインを追いかける主人公ラームの一途な姿を、後半の対比にさせる脚本術も鮮やかなもの。劇中、恋(または人生?)の進展のために3回「父さん、大事な話がある」と問いかけられるたびに、父親の態度が大げさになっていくリフレインも可笑しく、親子劇として美しい。その対比ゆえに、最後の「父親へのお願い」の絶望感たるや、もう…。
前半の主人公の恋路を応援する友人クマラン(*6)と、後半に結婚後の主人公を支え続け全てを見守り続けることになる友人センティル(*7)、ヒロイン側を支える物言わぬ妹や友人たちそれぞれの「支え続ける親友像」もいやが上にも尊い。尊すぎるので、その辺ドツボになりそうな人は刮目して見よ!
…ま、主人公の変貌具合が突然すぎるなあとか、そこまで人を振り回して自己完結しないでよとか、思わなくもないけれど…。そして、いつも通りインド映画はペットに厳しいのは、まあ要注意ってとこですかねえ。
挿入歌 Come on Girls - The Celebration of Love (さあみんな、やって来い - 愛の祝福)
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受賞歴
2012 SIIMA(South Indian International Movie Awards) 主演男優賞(ダヌシュ)・作詞賞(ダヌシュ / Kannazhaga)・男性プレイバックシンガー賞(ダヌシュ / Why This Kolaveri)
2012 Filmfare Awards South 主演男優賞(ダヌシュ)・男性プレイバックシンガー賞(ダヌシュ / Why This Kolaveri)・音楽賞(アニルドゥ)
2012 Vijay Awards 主演男優賞(ダヌシュ)・男性プレイバックシンガー賞(モーヒト・チャウハン / Po Nee Po)・注目賞・オブ・ジ・イヤー(アニルドゥ)
2013 Asiavision Awards タミル語映画優秀賞(シュルティ)
2013 Times of India Film Awards 主演男優賞(ダヌシュ)
「3」を一言で斬る!
・病気治療の前に巡礼の旅に出る、と言ってたから入院の口実のためなのかと思ってたら、本当に巡礼に行くのね!(伏線なわけだけど)
2021.7.24.
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