チャーリー (777 Charlie) 2022年 164分
主演 チャーリー & ラクシット・シェッティ(製作も兼任)
監督/脚本/台詞/カメオ出演 キランラージ・K
"ふたりでいこう、どこまでも"
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ー運がよければ、あなたの元に犬が現れ、心を動かしすべてを変える。
違法ブリーダーの元から逃げ出したラブラドール・レトリーバーの子犬が、長い放浪の果てにカルナータカ州マイスール(旧マイソール)のチンマヤ団地までやって来た。
この団地に住む男ダルマ(本名ダルマラージ・ダッタンナ)は孤独な男。幼い頃に家族を亡くしてから、誰とも関わらず、誰の助けも求めず、工場と家を往復するだけの毎日を送り、周囲に溶け込もうとしない世捨て人である。
近所からも恐れられて"ヒトラーおじさん"呼ばわりされてるダルマに懐いて来た、ラブラドールの子犬を邪険にするダルマだったが、バイクとの接触事故で大怪我をした子犬を見捨てておけず、そのまま獣医アシュウィン・クマール先生を訪ねて治療を施し「ペット禁止」の団地内で飼主が現れるまでだけの約束で子犬を飼う決心をする。
その日から、平穏だったダルマの家は子犬の荒らし放題の家に変わってしまった。最初こそ、子犬と喧嘩するダルマだったが、徐々に犬中心の生活に愛着を持ち始め、新しい飼い主を獣医から紹介されても拒否するまでになっていく。飼育犬登録も完了し、唯一ダルマが趣味として楽しんでいるチャップリン映画に因んで「チャーリー」と名付けられた子犬との共同生活も軌道に乗っていくように。
……そんなある日、ダルマはチャーリーが嘔吐して倒れているところを発見。すぐにアシュウィン先生に診療してもらうのだが…「血管肉腫だ。投薬では治らない…癌なんだ。遺伝子の変異だろう。悪徳ブリーダーは近親交配させる。そのせいだよ…」
OP Escape Song (エスケープ・ソング)
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原題は、主人公の犬の名前(*1)とその登録番号。「777」は、インタビューやメイキングを見ると「トリプル・セブン」と読むみたい。
似たような名前の映画として、2015年マラヤーラム語(*2)映画「チャーリー(Charlie)」他多数あるけれど、全て別物。
2011年の「Kaavala」で監督&脚本&役者デビューした、キランラージ・K監督の6本目の監督作カンナダ語(*3)映画。
インドと同日公開で、アラブ、アイルランド、シンガポールなどでも公開されたよう。日本でも、2024年に一般公開され、DVDやBDも発売されている。
冒頭の違法ブリーダーの家からのチャーリーの逃亡劇から、引き込まれる画面と幻想的な風景、ノリノリのオープニングソングで人生賛歌を歌い上げるところで映画の方向性はハッキリと示される映画。
同系色の中に佇む一軒家の構図、ドライアイスに嬉々として飛び乗るチャーリーや羽毛を撒き散らすチャーリーなど、その画面自体にしっかりと伏線要素を入れてくる計算高さも組み上げられているところなんざ、ため息ものですわ。
映画の前半は、犬の起こした交通事故で家族を亡くした人間側主人公ダルマと、どこまでも生きることに正直な主人公の子犬(*4)チャーリーとのぎこちない交流を描き、後半は余命短いチャーリーのための「雪を見せてやりたい」という1人と1匹の旅を通した人生上の新たな出会いを描くロードムービーへと変化していく。
不器用な男と無邪気な犬のコンビは、卑怯なほど涙腺にくる組み合わせ。子供と動物には勝てないとよくいうけど、子供の動物が頑固な大人の人生観を変えていくなんて、王道中の王道なのにどこまでも美し楽し麗しいですわ。
とにかく、ダルマが犬好きでもなければ犬の飼育に詳しいわけでもないところがポイントで、動物愛護団体が乗り込んでこざるを得ないほど不器用にチャーリーを扱うにも関わらず、基本的には困ってる存在をほっとけない、命を無下にできない、人間よりは犬を信用している態度がにじみ出ているひねくれた優しさを見せてくれるところが、話を推進させる原動力となっている。もちろん、チャーリーの愛嬌抜群の演技もこの映画の最大の武器で、インタビューで「主役を奪われる」とダルマ役のラクシット・シェッティが語ってる通り、その表情、その身のこなし、体全体で感情表現する動物のいじらしさをこれでもかと発揮されると、不器用演技のラクシットとの相乗効果で感情表現が何百倍も増幅されて伝わるんだからオソロシイ。ダルマの、その内に秘めた優しさに最初に気がつくのがチャーリーで、その次に子供達って所も王道でありつつニクいポイント。「子供がいるのにペット飼うなんて非常識」とか言い出すギスギスしたご近所付き合いも、そりゃあ子供と動物には勝てなくなりますよ。うん。
動物映画の苦労は、なにはなくとも動物の演技をいかに引き出すかが肝になるわけだけど、やはり本作も1カットに何十ものリテイクが繰り返され、トレーナーによる数々の方法でチャーリー(*5)の好奇心を引き出して指示通りの演技を出せるよう努力してたというんだから、トンデモね。顔のアップで微妙な喜怒哀楽がわかるのもすごいけど、足の角度やお腹の震わせ具合、耳の角度で感情表現している全身像とか見せられると、ホント犬を魅せるために全力でぶつかっていってるなあ…と感心しますことよ。
私自身、犬飼ったことないし(*6)、近所の犬に手首噛まれたり追いかけられたりして犬恐怖症的になってた時期もある人間ですが、犬飼いあるあるなチャーリーを飼い始めたダルマの"拷問ソング"に笑いっぱなしだったし、後半のロードムービーに出てくる犬好きな人たち(*7)を通して育まれる犬と人の家族としての信頼関係、愛情関係が、ラストの「愛しているか?」という切ない問いかけに繋がっていくのは、ゆっくりゆっくりと心を動かされていく重層的な感情の波の押し寄せもあって「犬っていいなあ」と心底思ってしまう映画マジックにまんまとかかって行ってしまう。あの雪山の広大な真っ白の雪原の中の1人と1匹、シルエットのように佇む1本の木や、冒頭のチャーリーが逃げ出した小屋とのシンクロ対比的な小屋の絵面なんか、幻想的であり切なさも含めた幽玄の世界を垣間見せるよう。その中で遊ぶチャーリーの姿に、色々な感情が刺激されますことよ。
まあ、部屋散らかしたり、悪戯した後に愛嬌振りまいて許してもらおうとしたりって態度は、うちの親から聞かされる私の赤ん坊の頃のやらかし話そっくりだなあ…とか思わないでもないけれど。
にしても、他のインド映画でもペットの代表種族として出てくる犬は、インドでも大人気で、その飼育環境整備も(富裕層を中心に?)かなり進んでいるのねえ。
犬好きはイギリスの影響かとも思ってたけれど、この映画見てるとインドの「ハチ公物語」的な影響力を持って後世語られそうなくらい、純粋に犬好きを刺激してるようにも思えてくる。実際、この映画の公開後にラブラドール・レトリーバーの需要が一気に伸びて、専門家から無責任な飼育に対する警鐘が出たとか言われてるらしいし。
挿入歌 Torture Song (拷問ソング)
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受賞歴
2021 National Film Awards カンナダ語映画注目作品賞
2023 SIIMA (South indian International Movie Awards) カンナダ語映画作品賞・カンナダ語映画特別評価主演男優賞(ラクシット・シェッティ)
2023 Filmfare Awards South 監督賞
「チャーリー」を一言で斬る!
・前に、トリ○アの泉で『飼い主が倒れた時に助けを呼べる犬の確率は』実験してた時は、ほぼ助ける確率0%だったなあ…。
2025.3.14.
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