エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ (Agent Vinod) 2012年 157分 アフガニスタンのタリバン基地から、機密情報と仲間、さらに誘拐されていた美女ファラーを奪取したRAW(Research and Analysis Wing=インド諜報部)のエージェント ヴィノッド。彼に与えられる次なる任務は、ロシアで殺された同僚が追っていたスーツケースサイズの極小核爆弾の行方と、関連組織が残した暗号"242"の追跡。 モスクワの麻薬売春組織の総元締アブー・ナージルを締め上げ、彼から妙な金額を送金されたモロッコのマフィア首領ダビド・カザンを調べようとするヴィノッドは、添乗員フレディ・カーンバッタを名乗ってカザン邸へ入るも自白剤による尋問を受ける。そこにダビドの主治医として現れた美女ルビー・メンデスは、かつてロンドンで爆破テロを仕掛けて死んだはずのパキスタン諜報員、イラム・パルヴィーン・ビライだった!! 彼女から、ISI(=パキスタン諜報部)も"242"を追ってる事を知ったヴィノッドは、"242"が出品されると言うマラケシュの骨董品競売会にダビドとルビーと一緒に乗り込んでいく。 その裏で画策する、アブーやダビドを始めとするマフィアたちに様々な指令を発する謎の男、"大佐"の暗躍も知らずに…。 ED Pungi *途中から出てくる女ボスは、劇中でも「Steal the Night(I'll Do the Taking)」で踊ってるケーララ=オーストラリア人ハーフのモデル マリカ・ヘイドン。 タイトルは、1977年の同名ヒンディー語映画からの借用(お話的には完全オリジナル)。 サイーフの立ち上げたイルミナティ・フィルムズとエロス・エンターテイメントの共同製作映画で、インドの他パキスタン、モロッコ、ロシア、ラトビア、イギリス、南アフリカと6カ国ロケを敢行したド直球スパイアクション映画!! 主役のサイーフ&カリーナの二人が結婚直前の時期に、サイーフ自身が製作した映画と言う事で、新婚夫婦のお披露目&新婚旅行的なノリで次々世界中を飛び回る2大スター・アクション映画となって…いるのかねぇ? 日本では、2014年にDVD発売記念として、シネマート六本木で2週間限定公開された。 最初の、アフガニスタンで巻き起こる騙し騙されのアクション&カーチェイスから入るOPのカッチョいい事ったらもう! やべぇ、今度はサイーフがカッコよく見えてくるゼ!! そう言った、正体不明の諜報員の活躍を描いた超絶アクションかと思えば、あとは徹底したサイーフ1人が活躍するアクションに次ぐアクションのオンパレード。エージェントと言っても、変装しても顔は変わらず、情報戦もわりと簡単に解決するんで、とにかく目の前に出て来る敵を次から次へとぶっ殺すサイーフを如何にカッコ良く撮るか…が主題のスター映画になっている。そういう意味では「Dhoom(騒音)」や「ドン(Don)」シリーズよりも「タイガー(Ek Tha Tiger)」や「ダバング 大胆不敵(Dabangg)」みたいなサルマン映画のノリに近…い? 主演兼プロデューサーのサイーフ・アリ・カーンは、ボリウッド・スターの一人。父親は、世界的なクリケット選手であり、かつてハリヤーナー州内にあったパタウディ州最後の大守ともなったマンスール・アリ・カーン・パタウディ(1941生〜2011没。*1)。母親は、60〜70年代に活躍し現在も映画界に大きな影響力を持つ、映画女優シャルミラー・タゴール(*2)。妹が映画女優のソーハ・アリ・カーン。 英国ウィンチェスター大学を卒業後、1992年に「Parampara(伝統)」の端役で映画デビュー。翌1993年には「Aashiq Awara」で主演男優に昇格してフィルムフェア新人男優賞を獲得。2001年「Dil Chahta Hai(心が望む)」でフィルムフェアコメディ演技賞を、2003年「たとえ明日がこなくとも(Kal Ho Naa Ho)」でフィルムフェア助演男優賞を、翌2004年「Hum Tum(君と僕)」でナショナル・フィルム・アワードの主演男優賞を獲得した。2009年、自身が立ち上げた映画プロダクション イルミナティ・フィルムズで「今時の恋愛(Love Aaj Kal)」を初プロデュースし、本作は3作目のプロデュース作となる。 映画デビュー以前の1991年に、映画女優アムリター・シンと結婚し子供も生まれるが2004年に離婚。子供たちの親権はアムリターが有する事となったと言う。 ヒロイン演じるカリーナ・カプールは、ボリウッド最大の映画一族カプール家出身の映画女優兼ファッションデザイナー兼作家。父親は70年代から活躍する映画男優兼プロデューサーのランディール・カプール。母親は60〜70年代に活躍し、結婚後も夫の意志に反して女優業を続けた(*3)映画女優バビター。姉も映画女優のカリシュマ・カプールである。 2000年に「Refugee」で映画主演デビューして、フィルムフェア新人女優賞を獲得。2001年のカラン・ジョハール監督作「家族の四季(Kabhi Khushi Kabhie Gham...)」に出演して注目を集め、続くカラン・ジョハールのプロデュース作に出演をオファーされるもギャラを巡って対立。これが原因で一時期メジャー系映画から干されてしまったそうな。 しかし、2004年には芸術系映画「Chameli(ジャスミン)」でフィルムフェア特別パフォーマンス賞を、同年の「Dev」と2006年の「Omkara(オームカラ)」でフィルムフェア批評家選出主演女優賞を、翌2007年「Jab We Met(私たちが遇う時)」でフィルムフェア主演女優賞を獲得してその実力を業界全体に知らしめた。以降、次々と大作映画に出演し続け、アイシュワリヤーが女優業から離れた現在、ボリウッドの女王の座に一番近い人気を持つ女優である。 この主演2人は、本作公開の年10月に結婚しメディアをにぎわせていたそうで。 監督と脚本を担当したシュリラーム・ラガヴァンは、タミル・ナードゥ州チェンナイ生まれのマハラーシュトラ州プネー育ち。FTII(フィルム&テレビジョン・インスティチュート・インディア)で学び、ラージクマール・ヒラーニーと同窓だとか。彼と共に作った学校卒業作の短編「The Eight Column Affair」で1987年度ナショナル・フィルム・アワードを受賞。その後ドキュメンタリー制作やTVドラマ脚本などを経て、2004年にサイーフ主演作「Ek Hasina Thi(美しい人がいた)」で娯楽映画監督デビュー。本作が3本目の監督作となる。 数々の海外ロケと大人数アクションのド派手さも、基本はサイーフ演じるヴィノッドの暴れる様を整えるための舞台を作ってる感じで、次々と変わる舞台を駆け回るサイーフを見てると「なんか格闘ゲームみたいなノリの映画だなぁ」と思わなくもない。その分展開も早いので、油断してると劇中アクションの因果関係を見逃してしまいかねない…ま、登場人物が多いもののあんま物語的な複雑さはないんですが…。 どんなにハリウッドナイズされたアクションであっても、ここまでやればインド的に作れてしまう…と言う制作モデルみたいな映画ですわ。そりゃ、スター映画作らせたらインド映画界の右に出る物はないね、とインド映画ファン的には言い切っちゃうけどw なんか、話のオチが「続編も、希望すれば作っちゃうよ」的に見えなくもなくもないよう…な気もするんですが、どうなんでございましょ? プロモ映像 Govind Bolo Gopal Blo
「エージェント・ヴィノッド」を一言で斬る! ・なにはなくとも、リガに行ってみたい!
2014.3.15. |
*1 父の死後、形だけサイーフがパタウディ大守を継承したそうな。 *2 あの詩聖タゴールの一族出身の人! *3 そのために一時期夫婦は別居状態で、姉妹は母親に育てられたらしい…。 |