ABCD : Anybody Can Dance (ABCD) 2013年 143分
主演 プラーブデーヴァ & ケイ・ケイ・メノン & ガネーシュ・アチャーリヤー他
監督/原案/振付/特別出演 レーモー・デソンザ
"ダンス…それは全ての人、全ての生物に与えられた力"
国内最高のダンスチームを決めるTV番組"ダンス・ディル・セ"で、大物マネージャー率いるチームJDC(ジャハンギール・ダンス・カンパニー)が優勝した。
このチームのコーチ ヴィシュヌは、明らかにパフォーマンス不足なはずのチームが優勝したことについて、裏で画策する社長ジャハンギール・カーンと衝突。ついには専属振付師の席を、NYから来た新人コーチにあけ渡され解雇される!
失意のままムンバイを離れて故郷チェンナイに帰ろうとしていたヴィシュヌだったが、同業の親友ゴーピーのところに身を寄せる青年たちの無機動性を目の当たりにした彼は、犬猿の仲の2つの下町若者グループをまとめて育成し、JDCを上回るダンスチーム"DDR(ドングリ地区ダンス・レボリューション)"を結成して"ダンス・ディル・セ"の優勝を手にしようと立ち上がる…!!
挿入歌 Sorry Sorry (ソリー・ソリー)
振付師兼役者兼映画監督のレーモー・デソンザによる、3D・ダンス・ヒンディー語(*1)映画。製作プロダクションはUTVスポットボーイ。
出演者の多くに、レーモー監督も審査員兼振付で出演しているTVダンスショー"ダンス・インディア・ダンス"出場の成績優秀者たちが参加する本格ミュージカル映画。後にタミル語(*2)・テルグ語(*3)吹替版「Aadalam Boys Chinnatha Dance (略称ABCD)」も公開。
大ヒットによって、2015年にディズニー・ピクチャーズ製作による続編「ABCD 2」が公開されている。
まさに、振付師が集まって作るダンス愛に満ち満ちたダンス映画で、出演者のほとんどがダンサーで構成されるその身のこなしの軽やかさ、鮮やかさ、"魅せる動き"を追求した「え! なに今の動き!!」と驚く箇所が次々展開する、パフォーマンス力に特化した一本。
ハリウッドのダンス映画にもよくある、舞台パフォーマーたちの挫折と再起、そこに関わっていく一人一人の社会的しがらみからの飛翔を、これでもかというダンスパワーで見せていく姿勢にはただただ圧巻。まさにダンスの奇跡を信じているからこそ・ダンスが日常生活に溶け込んでいる人たちだからこそ生まれる映画のパワーの凄まじさこそ、インドが世界に誇るダンス文化、映画文化、伝統文化そのものであることを見せつけてくれまする。
監督兼振付(兼原案兼特別出演)を務めるレーモー・デソンザ(生誕名ラメーシュ・ゴーピー・ナーイル)は、1974年カルナータカ州バンガロール(*4)生まれでケーララ州パラッカド県オラバコード育ち。父親は空軍付きコックで、自身もグジャラート州ジャナムガルの空軍学校に通っていたという。学生時代には、100m走選手として数々のメダルを獲得していたそう。
95年のヒンディー語映画「Rangeela」「Bollywood Dreams」で振付師兼ダンサーとして映画デビュー。97年の「Aflatoon(一匹狼)」に端役出演後、00年以降数々の映画の振付師として活躍。
07年のベンガル語(*5)映画「Lal Pahare'r Katha」で監督&脚本デビューし、11年の「F.A.L.T.U(役立たず)」でヒンディー語映画監督デビューとなった他、同年にはタミル語映画「ロボット(Ethiran)」の振付でヴィジャイ・アワード年間注目賞を獲得。本作はこれに続く3本目の監督作となる。
以降も、「若さは向こう見ず(Yeh Jawaani Hai Deewani)」、本作続編の監督作「Anybody Can Dance 2」、さらに「バージーラーオとマスターニー(Bajirao Mastani)」で数々の振付賞を獲得して、様々なTVダンスショーの常連審査員兼振付師兼ダンサーとして"スーパー審査員"の称号で呼ばれたりもしている。
インド初の3Dダンス映画に、6人の振付師をつけて振付師やダンサーとして活躍する監督や役者をぶち込んだ、その映像パワーたるや是非とも大画面で3D映像で見たかったなあ…と思えてしょうがない。
主役ヴィシュヌを演じた振付師兼役者兼監督のプラーヴデーヴァも、ここぞとばかりに踊りまくるし、ヴィシュヌの親友ゴーピー役の振付師兼役者兼監督のガネーシュ・アチャーリヤーもいい表情で画面を埋め尽くしてくれて一気に他の出演作見たくなってくるし、悪役ジャハンギール演じるケイ・ケイ・メノンのスタイリッシュさもいいアクセント。
なによりも、レーモー監督によって見出されたプロアマ混合の若手ダンサーたちの堂の入った表情と動きのキレ、そのキャラクター性の多彩さがスンバラし。ほぼ全員映画デビュー作と思えない慣れた感じなのは、さすがにパフォーマーなだけはある感…じ? 本作以後も映画出演やTVのダンサー出演で活躍する有望株多数なだけに、しっかり注目して見ましょうぞ!
王道物語の中に、様々な効果的伏線、圧倒的パフォーマンスを演出する数々の小道具、意味ありげなキリスト教的な天使像やクリスチャンネームなんかが散りばめられ、その中でもガンパティ(=ガネーシャ生誕祭)と言うインドの季語的な伝統文化への敬意と人生観が映像的にあからさまに表れているのも、インド映画としてのパワーを増幅させてくれまする(*6)。
前半、様々な振付師によって作られているダンススタイルがほぼブレイクダンスになってるのがなんかなあ、とか思ってたら、しっかりきっかりラストに行くに従って答えてくれるボリウッドのサービス精神は最高だぜ! ああ、これを3Dで見れない日本の不自由さよ…。ダンス、というものが日常に浸透し、そこに様々な思いを汲み取るインド人の思いが結集したような映画ですわあ。ボリ産業的には、実験的な位置づけの映画でもあるんだろうけども。
挿入歌 Shambhu Sutaya (幸福の運び手よ [富の守護者よ、主たるガネーシャよ])
「ABCD」を一言で斬る!
・インドのダンススクールは、そんなに既得権益でガッポガッポなほど儲かるのか…?(下町は違うぞ、って庶民根性も現れてる映画だけど)
2018.1.26.
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