Aap Ki Khatir 2006年 122分(127分とも)
主演 アクシェエ・カンナ & プリヤンカ・チョープラー
監督 ダルメーシュ・ダルシャン
"君と僕は…恋人じゃないから"
"そうね。恋人にはなれない…でも友達にはなれるわ。それで充分"
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ロンドンにて手痛い失恋を経験して単身ムンバイに戻っていたアヌー・A・カンナは、その日、嫌々ながら義妹シラーニーの結婚式出席のために再びロンドンに赴く決意をする。
その時に家族に心配をかけまいと、軽口ばかりの親友アマン・メヘラーをお金で雇って彼氏役で同行してもらうアヌーは、久しぶりのロンドン滞在にて調子のいいアマンのコーディネートに付き合いながら、未だにダニーへの未練が残っている自分を意識する。そんな彼女を見ているアマンもまた…。
その夜、式前披露宴の席にてシラーニーと従姉妹のニッキーから義妹の婚約者クナール・P・シャーを紹介されたアヌーの前に、クナールの親友として元彼であるダニーがやって来る。
事前の計画通り、アマンを恋人役にしてダニーを悔しがらせようと一芝居うつアヌーだったが、当のダニーは特に期待していたような表情を見せてはくれなかった。
「ねえちょっと、ダニーの事で話し合いたいことがあるんだけど」
「朝でいいだろ。俺の睡眠を妨害しないでおくれよ」
「今話しときたいの! ねえ、ダニーはどんな感じに見えた? 彼の目になにか映ってた? どんな様子だったか言ってみて……彼、まだ私のこと愛していないかな… 」
挿入歌 Afsan
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タイトルは、ヒンディー語(*1)で「あなたのために」。タイトル画面には、下に「Only for you…」と英訳題も表記してある。
本作主演のアクシェエ・カンナの父親、ヴィノード・カンナ主演作となる1977年の同名映画とは別物(*2)。
その物語は、2005年のハリウッド映画「The Wedding Date」を基にしていると指摘されている。
インド本国と同日公開で、オーストラリア、英国、米国でも公開されたよう。
あんま期待しないで見てたら、基本に忠実ながらわりと楽しい結婚式ドタバタラブコメでありました。
なにはなくとも、主演のアクシェエ&プリヤンカの軽快な掛け合い芝居が話を転がして行く、この2人の魅力全開な映画で、本作の翌年公開作「Salaam-e-Ishq: A Tribute to Love(ようこそ恋愛!)」でコメディエンヌとしての才能を開花させる女優プリヤンカの片鱗が現れているような1本でもある。セレブな主役2人の小洒落たボケツッコミのノリノリ演技を見てると、「ああ、もうこの時点でプリヤンカはクールビューティー以外もできるってアピール準備は整ってたんだな」と感心してしまうラブコメの佳作ですわ。そういう意味では、プリヤンカのキャリアの中でも注目の1本?
監督を務めたのは、1967年マハラーシュトラ州都ボンベイ(現ムンバイ)生まれのダルメーシュ・ダルシャン(生誕名ダルメーシュ・サバルワール)。
父親は映画プロデューサーのダルシャン・サバルワールで、母親シェイラーは有名な映画監督兼プロデューサーのマヘーシュ・バットと映画プロデューサー兼男優のムケーシュ・バット兄弟の姉にあたる、映画一族バット家の一員。
アーディティヤ・チョープラーやカラン・ジョハールと言った当時注目を集めた若手映画人たちと同期で映画界に入り、93年のヒンディー語映画「Lootere(盗人)」にて若干24才(? *3)で監督&脚本(&挿入歌1曲の作詞)デビュー(*4)し、その年の最高興行成績を叩き出す。続く96年の2本目の監督作「Raja Hindustani(ラージャはインド人)」も年間最高成績となる大ヒットを飛ばし、フィルムフェア作品賞他多数の映画賞を獲得する。その後も監督兼脚本家としてヒンディー語映画界で活躍するも、最初の監督作2本ほどの大ヒット作に恵まれず本作を最後に一旦映画界を離れているよう(*5)。
悪態をつきながらも息のあったコンビを見せる主役アヌー&アマンの、本音を隠した優しさやカッコつけ具合がどこまでも微笑ましく、遠慮のない嫌味の応酬が続くほど仲の良さを観客に見せてくれる2人のカラッとした関係性が小気味良い。
それに対して、未だに元彼への気持ちに揺れるアヌーの未練たらたらな態度や、シラーニーを取り巻く結婚式を控えた人間関係が、飄々とした主役2人との表裏関係的にドロドロした部分を徐々に現して行くのも効果的。申し訳程度にムンバイ人とグジャラート人、パンジャーブ人の比較文化的対抗意識も笑いどころとして加味され、イギリスという異国でもインド人たちが自分たちのお国自慢を始める騒がしさがアピールされるのも、クラシカルなインド万歳であると共にインド根性の微笑ましさにも見えてくるか。
ある程度、親世代のキャラ付けも含めて登場人物はステレオタイプ化された描き方されているのもコメディを盛り上げる味付けになっていて、その辺が06年当時ですでにクラシカルすぎたんだろうなあ…とは思うけども、結婚に臨む関係者たちが顔に出さない本音を抱えながら、式までの数日間ギスギスを拡大させながら過ごして行く日常ドラマのドキドキ感は、いつ見ても古びることなく面白く興味深く見入ってしまうのはなんででしょうネ。
下町の兄貴にしか見えない新郎クナール役のスニル・シェッティがわりと紳士的だったり、やっぱりクソ男だった元彼ダニー演じるディノ・モレアの「俺はイケメンだぜ」オーラ全開具合も微笑ましきかな。シラーニー役のアミーシャー・パテールは出番のわりにプリヤンカや両親役のアヌパム・ケールとリレット・ドゥベイに存在感を喰われ続けてるのはかわいそうながら、やはりなんと言っても、「好き」を言えない主役2人のどこまでも可愛らしい強がり演技をどこまでも見ていたくなる楽しさで満たされた映画でありますわ。
挿入歌 Tu Hai Kamaal (君は元気溌剌)
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「AKK」を一言で斬る!
・ドレス姿で寒いロンドン郊外の山林に出て行くのは、特に女性用ドレス姿だとメチャクチャ体に悪そ…(スイスのような雪もないのに!)。
2023.6.16.
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*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある。
*2 オマージュ的なタイトル?
*3 公表されてる生年月日を信じるなら、公開時26才のはず。制作〜公開が長かったのか、サバ読んでるのか?。
*4 この映画のプロデューサーを務めたのは、彼の兄弟であるスニール・ダルシャンだった。
*5 新たな監督作「Bhanvraa」を準備中という話も。