インド映画夜話

ボンベイtoナゴヤ (Aye Meri Bekhudi) 1993年 105分
主演 アニル・バクシー & プリヤンカ
監督/脚本 チャンチャル・クマール
共同監督 フナカワ・カツオ
"世界は名古屋を知らない…今こそ、インドに名古屋を知らしめよ!!!"



むんむん様企画の第2回なんどり映画倶楽部にてご紹介頂きました!
皆様、その節はお世話になりました。なんどりー!


*ファンが作った、MAD予告編。
 BGMと台詞はおもいきり「キルビル」から。




 警察官ヴィジャイ・シンハは、警察長官の父も誇りとする正義感あふれる男。今日も麻薬密輸現場に突入して犯人を現行犯逮捕、麻薬押収に成功する!

 その頃、麻薬組織のボス ダニーは、この失敗によって総元締である日本組織からの懲罰が来ることを恐れ、逃亡してきた実行犯たちを射殺。メンツをつぶしてくれたヴィジャイへの復讐を開始し、彼の両親と親友を爆殺する!!!
 怒るヴィジャイは犯人たちへの復讐を誓い、収監中の犯人グループのひとり山田を口封じのために殺した汚職警官グプタを縛り上げる。彼の口から組織のボス ダニーが、密売情報の入ったフロッピーと共に日本へ渡ったことを聞き出したヴィジャイは、さっそく日本へと飛ぶ…。

 日本(名古屋)に到着したダニーは、麻薬組織のボス佐藤と面会。密輸失敗の責任をとるため、自分を追跡するヴィジャイを殺すこと、片腕として働いていた山田の代わりを務めることを命じられる。
 一方ヴィジャイは、来日するやさっそくダニーの捜査を開始するも、思いがけずインドで知り合っていた踊り子ソナと再会。2人は東京(撮影は愛知県犬山市他)でその距離を縮めて行くが、ソナが新幹線の中でダニーと知り合っていたことを知ったヴィジャイは、彼からソナに手渡されていた名刺を元にダニーの事務所に忍び込んでフロッピーを奪取。しかし、その計画を感知した佐藤一味の追跡の手が…。




 原題の意味は「君は我を忘れさせる」。劇中のミュージカルナンバーからとられたタイトル?
 主役を務めたアニル・バクシー他の、(当時)名古屋に在住していたインド人たちが「名古屋をインドに知らしめよ!!」と、映画スタッフを本国インドから呼び寄せて企画・製作したと言う(日本人的には)伝説的カルト・ヒンディー映画。撮影自体は1991年に行なわれていたそうな。
 日本では、「ムトゥ」に始まるインド映画ブームにのって1999年にまず名古屋で先行公開・東京国際ファンタスティック映画祭で上映された後、2000年に東京でも公開され、それこそ(1部で)カルト的人気を誇ったそうな(*1)。通称「ぼんなご」。

 基本的には低予算映画なので、ま、その辺を覚悟の上で見てみたわけだけど…
 ………
 ……
 …( ゚д゚)ポカーン
ぼん「…えー…っと、これはどゆこと…?」
なご「ものすごい投げっぱなし映画というか、編集がテキトーと言うか…」
ぼん「実は、もともとインド公開版『Aye Meri Bekhudi』よりも1時間近く短縮してるんだそうで、そのせいで色んなことがつながらないまんまになってるみたいだねぇ」
なご「そうなんだ。どーりでヒロインとの絡みが唐突だったり、伏線が伏線になってなかったりしてたんだねぇ」
ぼん「いやぁ…元々そう言う映画なのかもしれないけど…短縮版のわりには、ミュージカルシーンがきっちり入ってたのはスゴいけどね」
なご「いきなり2曲続いたシーンとか、明らかに編集しましたって感じだよね…。日本に来る前に、日本で歌ってるし」

ぼん「日本の描写もスゴいよなぁ。名古屋を世界に紹介するって事で、無理矢理にでも名古屋の有名どころ(?)が出てきてたけど」
なご「栄の各地…特にやたら出てきてたのがパチンコワシントンだったってのはなんで? って感じだけど、他にも名古屋城、名古屋駅前、大須観音、名鉄パノラマカー、今はなきロック歌舞伎スーパー一座、(東海市の)聚楽園の大仏、(劇中では東京と言う名目で)犬山市周辺などなど色々出てたねぇ。名古屋の極道さんたちが、なんの違和感もなくヒングリッシュ(ヒンディー語と英語のチャンポン)しゃべってたのは笑ったし、責任を取れって言って料亭で指ツメたのも爆笑もんだったw」
ぼん「あの辺、エキゾチック・ジャパンなノリなんだろうけど、あの極道さんたちを演じてたのがスーパー一座の方々だったのかな? ボスの佐藤を演じていた原智彦さんは、スーパー一座の座長だったそうだけど」
なご「そうか。それで、ラスト近くに歌舞伎アクションが入るんだ。インド人に歌舞伎メイクさせるってのもスゴかったなぁ。違和感はあんま感じなかったけど」
ぼん「え、そうかな? …えーっと、ま、あの辺の日本イメージは、やっぱ『007は二度死ぬ』とか『Love In Tokyo』あたりの60年代映画を彷彿とさせるけどねぇ。そのわりに、車の往来激しい久屋大通のど真ん中で踊ってるのがさすがインド映画。撮影のほとんどはゲリラ撮影だったそうだけども」
なご「えぇぇぇ!!! あれ無許可撮影だったのか…。どーりで周りの通行人たちがガン見してるわけだねぇ」
ぼん「ま、今目の前でインドダンスの撮影してるとこに出くわしたら、僕は間違いなくガン見するけどね!」
なご「するね!」

ぼん「…でさ。結局、佐藤とか山田の娘とかソナの仲間とかどうなったんだっけ?」
なご「…どうだったっけ? 見た直後なのに記憶が…」
ぼん「インド公開版は、ラストが違ってるらしいから、もう少し整理されてるみたいなんだけども…なんで日本公開版はあんなにラス立ちシーンが大急ぎなんだか」
なご「やたら出てくる夜のチェイスシーンが長いのもB級感たっぷりだけど、バブルの終わり頃の風俗も今見ると楽しいよなぁ」
ぼん「フロッピーの存在がまた泣かせるしねぇ。インドと日本で大きさが違う所もまたなんともw」
なご「あと、名古屋駅を大写しにしてるのに『東京についた』とか言われた時はどうしようかとw」
ぼん「あれ、ヒロインの乗った新幹線を追って主人公が走って追いついたと言う意味(!?)なのか、1本後の新幹線に乗ったら東京駅(撮影は思い切り名古屋駅)に先に到着したと言う意味なのか…今もって謎だ…」
なご「ツッコめばいくらでもツッコめる映画なのは確実なんだけど、なんだろうねぇこの妙な爽快感は」
ぼん「低予算で無理矢理作ってるってのもあるけど、映画撮影しにくい環境でもムリクリにでもフィルムをつないでしまえば、それは映画になってしまうっていい例だなぁ…ポジティブにとらえればw」
なご「○オチとか、禁じ手的手法を平気で使ってるしなぁ。よく出来た学生映画みたいなノリがあるよね。なんと言うか『とりあえず、難しいこと考えないで作るだけ作っちゃうよ!』って感じ」
ぼん「まさに。そう言うがむしゃらなパワーこそ、インド映画の醍醐味の1つだし、そう言う映画はじっくり見て感動と言うよりは、みんなでギャハハ言いながら見るのがベストなのかもね」
なご「お、なんか綺麗にまとまったから、これ以上のツッコミ合戦とかボロが出ないうちにお開きにしましょうか」
ぼん「あ、最後にこれだけは言わせて。『Love In Tokyo』で『サヨナラ』って日本語がインドで有名になったそうだけど、この映画は後世に『モシモシ』を流行らせてる!間違いない!!」
なご「ウソコケー!!!!!」

 あまりの衝撃に、対話形式でお送りいたしました(`・ω・´)キリッ


挿入歌 Aise Baji TuMari Payal(君の足鈴が鳴ったら)





2013.3.28.

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*1 ファンは、この映画を見ることを嬉しそうに「苦行」と表現するとかなんとか。