20年代後半〜30年代末まで活躍したドイツ人映画監督フランツ・オーステンの最高傑作と称される、独印合作(*1)インド時代劇3部作の3本目の作品。叙事詩マハーバーラタの一編を映画化したサイレント映画である。副題は「A Romance of India(インドのロマンス)」。
後世、インド映画史上初のキスシーンが登場する映画としても有名になった。
物語は、善人であるが素朴かつ人を疑うことを知らないランジット王と、狡知に長け陰謀好きの悪人ソーハン王という親友2人が、美女スニータをめぐり、あるいは賭博好きという性格故に、その友情と愛情の崩壊を招く様を描いていき、ある程度予想の範囲内の三角関係の結末を迎える。
舞台は、森、隠者の家、王城、郊外の荒野、結婚式場とさまざまに展開し、3人の織りなす人間関係の移ろいを表現していく。サイレント映画でこれだけの豪華絢爛さが見れるのは眼福ってやつですわ。
同じフランツ・オーステン監督作「亜細亜の光(Prem Sanyas / The Light of Asia)」で、主役カップル同士を演じたヒマンシュ・ラーイとシーター・デヴィが、本作では悪役の恋敵とヒロインという"愛を勝ち取り得ない関係"を演じてるのも興味深い点、かな? シーター・デヴィはまだこの時16〜17才頃らしいけど、そんなん感じさせないバリバリな女優オーラがスゴい…。
善側主人公ランジット王を演じたチャルー・ローイは、1890年英領インドのベンガル州バハランプル(またはベランポール)生まれ。
25年の「亜細亜の光」で衣裳デザインを勤めて映画界入りしたようで、続くフランツ・オーステン監督のインド時代劇「Shiraz(シーラーズ)」で男優デビューし、同じ年の「Loves of a Moghul Prince」で主演&監督デビュー(監督は、同じくこれが監督デビューとなるプラフラ・ローイとの共同)。以降、30年の「Bigraha」で単独監督デビューとなり、39年の「Pathik 」まで映画監督として活躍。1971年、西ベンガル州カルカッタ(現コルカタ)にて物故される。享年81歳。