Aatank 1996年 113分
主演 ダルメンドラ
監督/製作 プレーム・H・ラルワーニー(& デーシュ・ムケルジー)
"俺の許可なく、海に入ることは許さない"
*わりとネタバレ気味?
予告編というよりは、ラストバトルのダイジェストシーンっぽいけど。
海沿いの漁村で育ったピーターと孤児ジェスは、ピーターの母親ロージーによって兄弟同然に育てられたものの、そのロージーが病死するとピーターは親戚の家に預けられる事となり、2人は生き別れになってしまう。
それから時は過ぎ…。
ジェスは、村を支配する富豪アルフォンソ一党から村人を守る勇敢な漁師に成長していた。学業を終えて久しぶりに帰ってきたピーターが、村の女性スージー・ディシルヴァと結婚すると聞いて喜ぶジェスは、盛大な結婚式で2人を祝福したのだが…その夜、海に出向いた2人のうちスージーだけが行方不明になり、その翌日に捜索のために海に出たピーターは、ジェスの目の前で巨大なサメに襲われ食い殺されてしまう…!!
挿入歌 Saawariya Main Khadi Rahoon (さあ愛する人よ、私は立ち上がるべきか去るべきか)
タイトルは、ヒンディー語(*1)で「恐怖」。
1975年のハリウッド映画「ジョーズ(Jaws)」をアイディア元にしたヒンディー語映画。
80年代半ば(または70年代とも)に製作が開始されていたものの、未完成状態で長年お蔵入りになっていた映画で、それを96年になってから追加撮影して1本の映画にまとめたもの。そのため、本編中には新旧の撮影カットが混ざった映画になっていて、急増感が強い。この間に、主要キャストの中でピーター役のヴィノード・メヘラー、アルフォンソ役のアムジャード・カーンが他界されてしまったため、全シーンでの吹替、追加シーンでは別の俳優によるボディダブル(=替え玉)撮影が行われたそうな。
…まあ、長年お蔵入りだったってのがよく分かるとっ散らかったお話で、「ジョーズ」の翻案ものと言っても共通するのは"人喰いサメが出てくる"くらいで、お話そのものは全くの別物。しかも、サメ退治は話の主題になっていないで、どっちかと言うと悪徳セレブ アルフォンソの黒真珠独占をめぐる横暴を主人公がふん縛るマサーラーアクション的な展開の1本。その辺は、80年代ボリウッドの代表作の1つ「Himmatwala(勇猛果敢)」路線と見えなくもない(*2)。
冒頭のクレジットでは大々的に出てくるヘーマ・マーリニーなんか、サメ以上にちょい役でダルメンドラ演じる主人公ジェスとのロマンスもほぼダイジェスト展開。暴漢からジェスに救われて彼の家に匿われたかと思えば、次の出番はもう結婚式後に「なんで式に出てこなかったんだ!」とジェスと夫婦喧嘩するシーンになってるくらいで、映画内で役名すら出てこないほどってんだからもう…。
英語字幕見てる限り特に決まった地名が登場してなかったけど、登場人物のほとんどがクリスチャンネームを名乗るキリスト教徒ってのは、ゴアとかケーララとかを想定している…のかなあどうかなあ? 特定の地名が出てこないってのは意図的演出だとは思うけど。
孤児ジェスがピーターを通して家族のつながりを知る…と言う王道家族愛エピソードをじっくり描く所なんか、因果関係を徹底的に描きたがるインド物語文法そのもので、そのためにサメの登場がずっと後回しになっちゃうのが素直と言うか、サメ映画にする気はあんまないのかねって感じというか…(*3)。しっかりミュージカル5曲入れてくる手腕は、商売っ気満々でエライ! って感じもする映画ですわ。
肝心のサメは、当時のボリウッドとしては頑張った方なんだろうけど、まあ人形感は思い切り出てしまってはいる。とは言え、大人1人を丸呑みにできる・海上にジャンプするだけで小型船を転覆させ、ヘリコプターを墜落させかねないほどの巨体は、もうサメじゃなくて鯨だろ! ってサイズの振り切れ方がスゴい。ある意味、怪獣映画じゃないか? ってぐらいのぶっ飛んだ巨大サメの登場に、どれくらいサメの生態を反映させようとしたのかあ…と疑いたくはなる。ノリとしては、「ジョーズ」というより「白鯨」なのかもしれな…い?(*4)
まあ、その特撮の負担を軽くするためか、サメ登場シーンが極端に少ないのは、もうしょうがないと割り切るしかないですかねえ…。ラストバトルの、アルフォンソへの復讐と並行した見せ場として行われるサメ対決で、サメを腹裂きにする荒ぶれ具合はインパクト大だったけども。
挿入歌 Meri Jawani (ようこそ、わが青春よ)
「Aatank」を一言で斬る!
・舞台となる寂れた漁村の荒れ具合が、なんか往年の香港映画みたいだなす。
2020.8.8.
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