Abhiyum Naanum 2008年 114分
主演 プラカーシュ・ラージ(製作も兼任) & トリシャー
監督/脚本/原案 ラーダモーハン
"お願い、パパ…お願いよ"
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タミル・ナードゥ州クンヌールに住むラグラーマンは、その朝の散歩中、小さな娘の世話で疲労困憊している新米の父親スダーカルの様子に微笑まずにはいられなかった。
「いい運動になりますね。すぐ慣れますよ。娘さんが三輪車に乗るようになったら、もっと大変になる。私のアビはさらに面倒な事をしでかしましたよ。あの頃は、本当に楽しかった…」
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ラグラーマンとアヌの間にアビが生まれてから、アビが起こす様々な騒動の元で一家は幸せに過ごしていた。
最初の試練はアビが6才の頃。アビを小学校に入れるため、保護者適性度を計る父親の学力審査面談があると聞いたラグラーマンは七転八倒。茶園経営の仕事も親戚に任せて勉強に勤しむラグラーマンの苦労もそこそこに、あっさり入学を認められて学校生活を楽しむアビは、今度は学校前にいた物乞いが可哀想だと連れ帰ってくるし、15才の時には父親の送り迎えはもういらないから自転車が欲しいと言い出すし、ついにはMBA(経営学位)を取得するために家を出てデリーの大学に行くと言い放つのだ…!!
挿入歌 Pachhai Kaatre
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*タミル人家庭の主人公の元へ、娘の婚約者一家というパンジャーブ人たちが挨拶に押しかけてきて交流しあう中、パンジャービーソングで盛り上がる中でパンジャーブ人たちとタミル人たちがお互いの流儀で踊り合う一幕。
南北インドの、異なる宗教・民族・生活文化を越えた一体感をのぞかせる、別々のはずの家族が1つの家族へと変わっていく過程の美しさよ。そして、劇中ではさらに、パンジャーブ人家族たちにもそれぞれの異なる背景がある事が語られていく…。
タイトルは、タミル語(*1)で「アビと私」。
2004年の「Azhagiya Theeye」の監督デビュー以降、プラカーシュ・ラージ出演・プロデュース作を多く手がけるラーダ・モーハン(*2)の、4本目となる監督作。
似た名前の2013年のマラヤーラム語(*3)映画「Abhiyum Njanum(アビと私)」とは別物(*4)。
そのプロットは、91年のハリウッド映画「花嫁のパパ(Father of the Bride)」と似ているという指摘がある。
09年には、一部キャスト替えされたテルグ語(*5)版「Aakasamantha(空高く)」が、10年には同じくプラカーシュ・ラージ主演&プロデュースのカンナダ語(*6)リメイク作「Naanu Nanna Kanasu」が公開されている。
主人公が新米パパに語る回想という形で進む、娘の誕生〜結婚までを父親目線で描くほのぼの日常コメディ劇。
朝霧に煙るクンヌールの牧歌的な風景を背景に始まる映画は、終始ゆったりと心地よい空気に満たされ、娘を溺愛しすぎる父親と、困った人を見過ごせない心優しい娘との何気なくも騒がしい日常のドタバタを見せていく。
これといって特別なことは起こらない物語ながら、そのどこでも起こりえる親子間の悲喜交々、子供の成長過程に見える様々な事件や通過儀礼の1つ1つがなんと刺激的で楽しいことか。小学校の初登校時に涙の別れをして愛妻アヌに「いい加減にして」と恥ずかしがられていた主人公が、娘の結婚が終わって夫とともにデリーに帰る空港での涙の別れの時に逆に笑顔で励ます姿の、なんと爽やかなこと。「僕の母親は亡くなってはいなかったよ。僕の娘として生まれて来てくれた」と語る、子供によって成長する父親の姿はもうなんというか…ええもんですよ…。
物語当初の「頼りになる父親と可愛い娘」が徐々に「頼りになる娘と可愛い父親」に逆転するいろいろな物語的対比構造もなんとも可愛らしい。タミルの小学校入学時って、あんな父親が張り切って勉強しないといけないのか…とかも色々目からウロコですよ!(*7)。
他の映画では、好々爺からサイコなマフィアボスまで演じつつ若い恋人たちの壁となる「厳しい父性」を見せつけるプラカーシュ・ラージの、娘を溺愛する馬鹿親っぷりはハマりすぎてホントに可笑し楽しい。一方で、駆け落ちによる恋愛結婚をした主人公が、こと娘の結婚になると急に相手の男を拒絶し始め結婚話をストップさせる盛大な皮肉構造も、それはそれで全体的にコミカルで笑えてきて、この映画のキモとなってくれている。
登場人物全員、悪役のような人は登場せず、思いやりのある優しい人々がいろんな事情ですれ違いさまざまな境遇でなんとか生き抜いていこうとする、「あの人は実は〜」な姿とどん返しっぷりも清々しく、お話に厚みを与えてくれる。インドにはびこる貧富の差や宗教間・階級間対立なんかの解決は多分に理想的ではありましょうが、一般人親子のほのぼの劇上では十分成立する美しさでありまする。そんな風に世の中が動いていければ・子供達が成長していければ、すべての人々が幸福になるのも夢じゃないよね…とか、どこにでもいる一般人家庭のドタバタ劇を見ていると思えてくるのですわ。
なかなか子離れできない父親が、娘の良き保護者を気取りながらその娘から恋人の話を聞いてショックを受け、その事実をすでに知っていて平然としている母親に「母親と娘の方が話しやすいこともあるわ」と言われてしまう姿の孤独感と物悲しさ…と同時に微笑ましい姿も見せてくれるから困る。その理想的家族像の全員が、それぞれに可愛いからホント中毒性ハンパない映画でありますわ。もう。
挿入歌 Vaa Vaa En Devadhai (愛しの天使よ、来てください)
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受賞歴
2008 Tamil Nadu State Film Awards 監督賞・特別賞(トリシャー )・次席作品賞
2008 ITFA(International Tamil Film Awards) 作品賞
「AN」を一言で斬る!
・娘アビがデリー連れて来た彼氏を見て『デリーからくると言うからリティックかアビシェークがくると思ったのに、ハルバジャン・シンが来やがった!』ってドイヒーな言い方されてたハルバジャン・シンって、【エアリフト(Airlift)】の元ネタになった湾岸戦争中にクウェート在住インド人を救出したビジネスマンのこと?
2020.11.27.
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