インド映画夜話

Bunty Aur Babli 2005年 177分
主演 アビシェーク・バッチャン & ラーニー・ムケルジー & アミターブ・バッチャン
監督 シャード・アリー
"詐欺師バンティ&バブリー現る! 夢をつかむため、今日も金を巻き上げろ!"






 ウッタル・プラデーシュ州ラクノウへ向かう列車に、2人の若者が乗っていた。
 1人はラケーシュ・トリヴェディ。
 片田舎に住みながらビジネスでの成功を夢見る青年。親からは「父さんと同じ鉄道会社に勤めなさい」と再三諭され、勝手に面接の段取りまでつけられたために、都会の会社に自分を売り込みに家出を敢行する。
 もう1人はヴィンミー・サルージャ。
 やはり片田舎の街で育ち、トップモデルになることが夢。目標はミス・インディア! …しかし、彼女も親から相談もなく見合い話を取り付けられたために家出してきたのだった。

 しかし、ラクノウで待っていたのは厳しい現実。ラケーシュの売り込みはけんもほろろ。ヴィンミーにいたっては、モデル選考会場へ入ることもできなかった。
 駅でうなだれるラケーシュにヴィンミーが語りかける。
「ここの駅のトイレって暗くて危ないのよ。入口までついてきてくれない…」
 2人は、理想の自分像を自己紹介代わりにして打ち解けながら、すぐにその空しさに打ちひしがれる。今度はカーンブルで一発あてようとしたが、ここでも結果は同じ。2度目の偶然で出会った2人は、ついに大都市ムンバイに行けば成功すると結論づけ、その旅費を稼ぐためにある計画を練る…。

 なんと2人は、ラクノウでラケーシュの企画をまんまと盗んだビジネスマンを見つけて口八丁で大金をせしめ、その金でムンバイ行きのバスに乗るのだった!
 最初の詐欺がうまく行った事をいいことに、"バンティ&バブリー"と名乗る2人は次々と金持ちから大金を盗んで大活躍!

 しかしその頃には、有名になった義賊バンティ&バブリーの悪事を正すため、ダシュラト・シン警視副総監の追跡が始まっていた…。


挿入歌 Kajra Re (夜の瞳よ)

*翌年に「Dor 運命の糸」にも引用される大ヒットナンバー。
大女優アイシュがゲスト出演!!


 題名の意味は「バンティ&バブリー」。バンティとは「悪ガキ」「いたずらっ子」の意味。「僕じゃない。バンティが悪いんだ」…と言う、男の子の責任逃れのために使う名前…だそうな。バブリーは…その女性形? 劇中の台詞でチラッとそんなことを言ってた…ような?

 主役のアビシェークとラーニーの2人は最高!
 もうヒゲなしアビは印象薄いとか言いません! 周りの演技を引き出す、喜怒哀楽の多彩な演技はさすがラーニー! この2人のファッショナブルな変装やら、むりくりの詐欺テクニックやら、見てるだけで楽し〜!(*1)

 前半は、若い2人の無軌道詐欺つっぱしり無責任時代。
 この辺、犯罪行為を繰り返しながら逃走生活する「俺たちに明日はない」と比べられることが多いみたいだけど、あそこまで無常観やらニューシネマ的な世間への諦観のようなものは全然なくて、もっとお気楽喜楽。こんなんでダマされるヤツなんかいるのか? …と言うノリの軽さが映画的に楽しすぎる。
 後半になるとアミターブ爺の演じるダシュラト警視副総監との追跡劇になり、お話も「007」とか「逃亡者」っぽい雰囲気に変わる。
 オチは、なんとなく美談にまとまっちゃった感がなくはないものの、青春お気楽無責任映画で突っ走らないで、その前後の人生模様を重視するあたりは、インド映画っぽいと納得するべきか…な?

 それぞれのミュージカルシーンが結構長くて、なんとなく「Dil Se ディル・セ 心から」のオマージュっぽいなぁ…なんて思ってたら、監督のシャード・アリーって「Dil Se」他のマニ・ラトナム監督作で助監督を勤めた人だったのね。納得。

 ミュージカルシーンと言えば、後に「Dor 運命の糸」でオマージュ的に使用される劇中歌"Kajra Re"のシーンには、アイテムガールとして天下のアイシュワリヤーが登場!
 この頃は主役ラケーシュを演じるアビシェークとは婚約中だったそうで、未来の夫&義父と一緒に踊りまくるのがなんとも…。

 そう言えば、「Dhoom 2」で主役リティックとのキスシーンがあったアイシュだけれども、この映画では婚約者のアビシェークの方にラーニーとのキスシーンが用意されていた(しかも複数回!)。インド映画界も柔らかくなってきたんですかねぇ…(*2)。
 この辺のゴシップ的なネタを、制作側が意識してないわけもなく、ラケーシュ(アビシェーク)とダシュラト(アビの実の父親アミターブ)が並んだシーンでヴィンミーから「あんたたちってそっくりね。親戚じゃないの?」とツッコんでくるあたり、ボリウッドの楽屋落ち的楽しさも満載。

 とにかく、ノリだけで突っ走りたい人必見の傑作娯楽映画でした。
 私も人生に打ちのめされたら、ラクノウの駅で泣いてこよーっと(あぁ、最近シャレになんなかったりして…)。

ED B n B

*御年63才(当時)のアミターブ爺は、ラップもイケます!


受賞歴
2006 Filmfare Awards 音楽監督賞・女性プレイバックシンガー賞(Kajra Re)・作詞賞(Kajra Re)・シーン・オブ・ジ・イヤー賞
(*本作で主演女優賞にノミネートされていたラーニーは、この年、別の「Black」で主演女優賞を受賞していたりする!)
2006 IIFAインド国際映画批評家協会賞 音楽監督賞・作詞賞(Bunty Aur Babli)・女性プレイバックシンガー賞(Kajra Re)
2006 Star Screen Award コメディ演技賞(アビシェーク)・音楽監督賞・No.1カップル賞
2006 Zee Cine Award 年間ベスト歌曲賞(Kajra Re)・音楽監督賞・作詞賞(Kajra Re)
2006 Bollywood Movie Award コメディ演技賞(アビシェーク)・女性プレイバックシンガー賞(Kajra Re)・振付賞
2006 Apsara Film & Television Producers Guild Awards 女性プレイバックシンガー賞(Kajra Re)

2010.9.11.




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*1 2人の変装って、なんか元ネタでもあるんかな…と気になるほどの変身ぶりだったけど。
*2 Dhoom 2の方は裁判沙汰になったとかならなかったとか…。