Band Baaja Baaraat 2010年 140分 デリー大学に通うビットゥー・シャルマーとシュルティー・カッカルが知り合ったのは、シュルティーの親戚の結婚式。そこに遊びに来たビットゥーはシュルティーとケンカになったものの、彼女の「ウエディングプランナーとして起業して、いつかインド1の会社にしてみせる!」と言う夢を聞いたビットゥーは、彼女に感化されていく…。 折しも、田舎から出てきた父親に実家のサトウキビ農家を継ぐよう強制されたビットゥーは、勢いで「オレはウエディングプランナーになろうと思ってるんだ!」と宣言する!! いきなり雇ってほしいと押し掛けられたシュルティーは、ビットゥーに「…どうしてもと言うなら、仕事に恋愛を持ち込まないと誓いなさい」と宣告してしぶしぶ2人での活動を認める。2人は仕事上のパートナーとしてウエディングプラン会社"シャーディー・ムバーラク(=結婚おめでとう!)"を立ち上げることに。 アイディアと演出に才能を発揮するビットゥーと、会場セッティングや各種デザインを得意とするシュルティーのコンビは大反響を呼び、ついには上流階級の仕事も成功を収めて大興奮! その巨大プロジェクトの仕事明けの夜、関係者を集めた打上げに最後まで残っていた2人は、酔いも手伝ってついに一線を越えてしまう…。 その翌朝、昨晩の行動を悔いるビットゥーと、自分を避け始めた彼を慰めるシュルティーの関係は除々にすれ違い始め、ついにはその亀裂は修復不可能になっていく…。 挿入歌 Dum Dum (ダンダンと [これは陶酔感。これは魅惑。情熱とは彷徨い人だ]) *式には是非シャールクのパフォーマンスを! …と言う大富豪の娘の提案のために準備を進めていた二人は、突如シャールクがキャンセルして来た事で、自分たちでシャールクを越えるパフォーマンスを作り上げようとする! 実際、映画を見た"キング・オブ・ボリウッド"シャールク・カーンが絶賛したとか言うシーン。 タイトルは「(結婚式の)楽団・楽器・パレード」。 「Rab Ne Bana Di Jodi」で衝撃デビューを飾った女優アヌーシュカ・シャルマ主演作であり、数々の新人賞を総なめにした、新人男優ランヴィール・シンと新人監督マネーシュ・シャルマーの強烈なデビュー作でもある。 インド人の人生にとって、最大のイベントと言えばおそらく結婚式をおいて他にない。 親戚一同が結集して、新郎新婦を盛り上げる数々の儀式とイベントを、巨額の費用を使って友人知人から同じ町の住人全員に見せつける場であり、そこで撮影された数々の写真&映像はアルバムにまとめられて死ぬまで夫婦の自慢の種として活用され続けていく(*1)。 数々の面倒な儀式が、結婚式を盛り上げるイベントであり披露宴でみんなが騒ぎ立てるパフォーマンスであって、参加者の幸福度をイヤでも高められまくるハレの舞台が(準備期間も含めて)何日も何週間も続くのである。 一昔前のインド映画において、伝統的な定番ハッピーエンドと言えばヒーロー&ヒロインの結婚式シーンであったのも、インド人の生活環境から言えば至極当然な結末なんでしょうなぁ。 シャールク映画のヒロインとして、08年の「Rab Ne Bana Di Jodi」にて鮮烈デビューを果たしたアヌーシュカは、「ヤシュラジ・フィルムの映画3本に出演する」ことを契約していたそうで、'10年の「Badmaash Company」を挟んで、同年公開の本作がヤシュラジ後援契約の最後の作品となるわけだけども、アヌーシュカ以外にトップスターがいない状況(&おそらく製作予算的にも一番下?)でも貫禄と言うか素晴らしい演技を見せてくれました。夢に向かって前進し続ける力強きキャリアウーマンを快活に演じているアヌーシュカは、もはや新人を通り越したトップスターのオーラバリバリですわ。 特に後ろ盾となるコネも家柄もない中で、オーディションで抜擢されたと言うランヴィール・シンも、新人とは思えない力強い演技力と愛嬌を見せつけスター街道をまっしぐらな感じ。シャールクが絶賛したと言うミュージカル「Dum Dum」でのパフォーマンスのハイレベルさは、もうため息しか出ないほど圧倒させてくれまする。各映画賞で新人賞を総ナメにしたのも納得の実力。ホント、ランヴィール…恐ろしい子!(by 月影先生) 脇を固める登場人物の大人たちも、必要以上に主役の2人に口出しせずに自分たちの仕事に専念する職人ぶりで、現代的と言うか都会的な空気を伝えてきまする。 最近、観客ターゲットを細分化し始めて来ているボリウッド業界で、その先陣をきっているのが本作を製作しているヤシュラジ・フォルム。 この映画も、老若男女全てにウケると言うよりは、まだ将来の道を決めていない大学生あたりをメインターゲットにしている。ポップなBGM、テンポのいいカメラワークと編集、家族から切り離して自分の夢を追い続ける若者像、周りの大人たちの介入のない自由恋愛の悲喜こもごも、起業からの成功と挫折、デリーの先進生活を前面に出してくる構成……と、"デリーの今"を切り取った空気感がさわやかで全体的にポジティブな印象。ただ、後半は夜のシーンが多いせいか2人のドロドロしたケンカが続くせいか、そう言った現代的なポップ感が薄れてしまうのが惜しい…かなぁ。 物語的にはごく普通な恋愛ドラマ展開ではあるけれども、派手派手な結婚式の舞台裏やさわやかな青春劇、なんと言っても主演2人の今時POPな前進パワーの快活さがスンバらしい映画ですゼ! にしても、ものの本によるとインドの結婚式って、親族縁者以外の無関係な人の飛び入り参加もOK(…と言うかむしろ飛び入り大歓迎?)で、どんな人でも会場内食べ放題になるんで、結婚式1つで数十〜数百人分の食料が必要になる……とか書いてあった気がするけど、デリーみたいな大都会ではさすがにもうそうはなってないんかね? 劇中、無関係のビットゥーが結婚式のケータリングをあさってる時にシュルティーに見咎められて「このプレートと食べ物でいくらすると思ってんの? 無関係な人ならさっさと出て行きなさいよ」と怒られていたけども。 挿入歌 Ainvayi Ainvayi (人生がこうとわかった方法) *「シャーディー・ムバーラク」最初の担当結婚式は中流階級の低予算結婚式。大規模な楽団を呼ぶ余裕がないからと、ビットゥーが呼んだのは大学の後輩のバンド。ロック主体の学生バンドに会場がノってこないのを見たビットゥーは……! インドのウェディング・プランナーって大変な仕事だねぇ…。
受賞歴
2012.9.7. |
*1 マジで来客があるたんびに結婚式のアルバムやDVDが持ち出されて、それを客に見せつけるんだそうな。 |