インド映画夜話

バードシャー テルグの皇帝 (Baadshah) 2013年 155分
主演 N・T・R(ナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ) & カージャル・アグルワール
監督/脚本 シュリーヌ・ヴァイトラ
"裏社会に…皇帝は2人もいらない"






 東南アジアを中心にアジアの裏社会を牛耳るサードゥ・バーイに反逆した男"バードシャー(=皇帝の意)"は、香港で父親ダンラージを人質に取られ制裁を受けるもこれを撃退。逆にサードゥの牙城を崩す計画始動のために行方をくらませる…。

 その頃、ミラノでインテリアを学ぶインド人留学生ジャーナキは「自分よりもまず他者を助けよ」をモットーに日々を暮らす慈善家気取り。彼女によって自殺を思いとどまり更正した人は数知れず。今日も救済募金活動の後、山頂から飛び降りようとした男ラーマ・ラオを自宅に連れ込み、上階に住まわせているダヌーと共同生活させると、彼女の教えを忠実に吸収するラーマ・ラオは、彼女への賛辞を精一杯に表現しジャーナキも次第に彼に惹かれるように…

 …だが、その全てはバードシャーの計画。ミラノに乗り込んで来た追手を撃退するラーマ・ラオは、サードゥ・バーイの組織撲滅のためにジャーナキに近づいていたバードシャーその人だった!! 婚約者との結婚のためにインドに帰国する事になったジャーナキの前に、部下と共に"ウエディングプランナー"として再度現れたラーマ・ラオは、警察官一族の彼女の家に取り入りながら、暗黒街と警察内部の動きを監視し、ある復讐を始動させる…。


挿入歌 Sairo Sairo (サイラ、サイラ)

*踊る必然性? そんなの、美人なヒロインが「人を呼びたきゃ、マイケルジャクソンでも呼んだら!?」って一言言えば十分だぜコノヤロウ!


 原題の意味も、テルグ語(*1)で「皇帝」。ヒンディー語(*2)吹替版「Rowdy Baadshah」も公開。
 日本では、2013年に埼玉県川口市でのIndian Panaroma in JAPANにて字幕なし版で初上陸。翌2014年に大阪アジアン映画祭で日本語字幕付きで上映され、その夏に一般公開。

 いやもう、あらすじの書きにくいこと書きにくいこと。
 上のあらすじだってかなり変質しちゃってるけど、話の柱があって無いようなもんで次々とJr.NTRのアクションとダンスとコメディがこれでもかこれでもかとかぶってくる、全編これ貯めなしのJr.NTR推し映画。どっちかって言うと、インドの映画(*3)の文法に生まれた頃から浸りまくって、その文法に飽きて来てるからより過剰なアクションなり色彩なりスターオーラを求めたいって層にオススメ。そのレベルの人にはドンピシャ。それ以外だとしょっぱなのアクションシーンから置いてけぼりを喰らいかねないスピーディーで濃いい濃いい攻めの映画ですわ。
 よくJr.NTRの日本初公開作でこれを持って来たなぁ…と変に感心するわ。

 面白いのは、普通こう言うスター映画って、前半はゆるやかに家族ものやラブコメもの+後半に凄惨なアクション主体ってパターンや、説教シーンは主役である主演男優に任されてる事が多いんだけど(*4)、本作では後半に行くに従って家族ものやコメディの要素がでかくなり、説教するのは主役Jr.NTRの他、カージャル演じるジャーナキが序盤から猛烈プッシュしてきてウザイのなんのw 色々と基本文法を守る所は守りつつ変える所は思い切り変えるのは、演出チームのしてやったり顔が見えるようだわん。

 主役ラーマ・ラオ役演じるは、テルグ語映画界の"ヤングタイガー"ことJr.NTR(本名ナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ)。同名の祖父はテルグでは知らぬ者のない超有名な映画俳優(*5)で、父親も高名な映画俳優ナンダムリ・ハリクリシュナと言う映画一族。幼少期から古典舞踊を修得し子役から映画界入りして、2001年の「Ninnu Choodalani」で主演デビュー。2本目の主演作であるS・S・ラージャマウリ監督作「Student No.1」が大ヒットして新人賞を獲得しトップスターの仲間入りをはたして以降、そのダンスパフォーマンスの高さを売りに大活躍し続けている。
 意外な事に、カージャルとの主演での共演は「Brindavanam(ブリンダヴァーナム屋敷にて)」以来2回目なんだってね。

 監督を務めるシュリーヌ・ヴァイトラは、東ゴーダヴァリ県カンドゥラパレム村出身の映画監督兼脚本家。1999年に「Nee Kosam」で監督デビューして、続く2001年公開作「Anandam(幸福)」が大ヒット。以降、コメディを中心にテルグ映画界のメインストリームを歩み続ける監督である。日本で映画祭上映されたサルマン・カーン主演作「Ready」の、リメイク元のテルグ語映画「Ready」の監督でもある。

 脚本よりもノリ優先な舞台演劇的映画って言えば、今まで見て来たテルグ映画でもかなりのぶっ飛びレベルではある気がするけど、とにもかくにも緩急なしで展開するド派手な映像の連続に浸りきっていればいい映画で、登場人物に共感とか難しい事は一切考えないで、映像が流れてる間はその刺激に身を任せるべき映画ですわ。
 まあ、あまりにもアクション→ミュージカル→話芸コメディと言うパターンが続くので、いろんなものが麻痺してきそうになるけども…w 個人的には、アクションシーンでなにかより新しいものが見たかったなぁ…ってのはあるけど。


挿入歌 Banthi Poola Janaki







「バードシャー」を一言で斬る!
・ゲスト出演のシッダールタとダバングネタのギャグ、使いどころそこかよ!!??

2014.8.23.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 インドの連邦公用語。
*3 …もっと言えばテルグのスター映画方式。
*4 もちろん、一概には言えませぬ。色々あるからここではあくまで王道パターンではって話ね。
*5 州首相も歴任するほど!