タイガー・バレット (Baaghi 2) 2018年 144分
主演 タイガー・シュロフ & ディーシャ・パターニー
監督/脚本/振付/アクションデザイン アーメド・カーン
"なにがあろうと、君を離さない"
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その日、ゴアに住むネーハ・サールガオンカルは娘レアを幼稚園に送り出そうとした所を突如襲撃され、重傷を負わされる。気づいた時には、娘は連れ去られてしまった後…。
ネーハの大学時代の恋人ロニー(本名ランヴィール・プラタープ・シン)がネーハと4年ぶりの再会を果たしたのは、事件から2ヶ月経ってネーハからの電話をもらったため。
軍の特殊部隊訓練から7日間だけ休暇をもらったロニーが、ゴアに到着して様子のおかしいネーハに一体なにが起こったのかを尋ねると、彼女は襲撃事件から今に至る不可解な状況を語り出す…「初登園の日、子供が誘拐されたの…犯人の目的がわからない。お願い。あの子を探し出して…!」しかし、ロニーが捜査しようとしても、幼稚園や隣近所の人々は口を揃えて語る…「そんな子供は知らない。あの夫婦に子供なんていない」!!
挿入歌 Mundiyan (男ども、警戒せよ)
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原題は、ヒンディー語(*1)で「反逆者2」。
2016年の同じくタイガー・シュロフ主演作「Baaghi(反逆者)」の続編(*2)で、お話自体は16年のテルグ語(*3)映画「Kshanam(その瞬間)」のリメイクになる。
その大ヒットに乗って、さらなる続編「Baaghi 3」も2020年に公開されている。
日本では、「インド版ランボー」の触れ込みとともにネット記事で一瞬騒がれたのち、2018年に「タイガー・バレット」のタイトルでDVD発売。2020年にCS放送されている。
「インド版ランボー」と言いつつ、後半のアクションシーンの見せ方にランボーオマージュが散りばめられてるだけで「ランボー」そのものとは直接関係ない作り。
前半はラブロマンスの回想シーンと不可解な誘拐事件を捜査するサイコサスペンス。後半からはリベンジアクション色を強くしてからの、タイガーの超絶身体能力をこれでもかと見せつけるアクション主体のお話に変化して行く。
被害者のヒロインも含めて、腹に一物抱えた油断ならなそうな登場人物たちが巻き起こす不条理な事件が、予想の斜め上をドンドン突き進み、壮大なリベンジアクションへと昇華していく様は見事。「インド版ランボー」なんて宣伝されてたものだから、戦争アクションかいなと思ってたこちらの思惑を見事に裏切って、人と人の間の愛情と憎悪の錯綜具合が濃いい人情劇としてもよくできた構成でスンバラし。
まあその分、アクションを成立させるための段取りが色々と強引なところがあるので、おしゃべりで長台詞な悪役たちとか、緻密な戦略なく突っ走る主人公がガトリングガンにも無傷で勝利する様とか、その辺のユルさは本筋からすれば瑣末なことなので目を閉じよ…閉じ…あれ? タイガー主演作のキモはムキムキ筋肉を見せつけるアクションだったような…?
監督兼脚本兼振付兼アクションデザインを務めたアーメド・カーンは、1974年マハラーシュトラ州プーナ(現プネー)生まれ。兄弟に、同じく映画監督をしているボビー・カーンがいる。
子役として、84年のヒンディー語映画「マンジル・マンジル(Manzil Manzil)」や87年の「ミスター・インディア(Mr. India)」などに映画出演。以後、振付師兼ダンサーとして各言語圏映画界で活躍する中で、95年のヒンディー語映画「Rangeela(色彩)」でフィルムフェア振付賞他の映画賞を獲得。
04年に「Lakeer」で監督&脚本デビューを果たし、本作が7本目の監督作となる(短編含む)。10年のミリンド・ウーケイ監督作「Paathshaala(学校)」ではプロデューサーデビューもしてい他、TVダンスショーの審査員としても人気を獲得。"パッピーキング"の異名でも知られているそうな。
ヒロインのネーハを演じたのは、1992年(または95年)ウッタル・プラデーシュ州バレーリー(*4)生まれのモデル兼女優ディーシャ・パターニー。
13年度ミス・インドのインドール代表選に出場したのをきっかけにモデル業を始め、そこから15年のテルグ語映画「Loafer」で映画&主演デビュー。MV出演を経て、翌16年の「M.S.ドーニー ~語られざる物語~(M.S. Dhoni: The Untold Story)」でヒンディー語映画デビューして、IIFA国際インド映画協会賞の新人女優賞始め多くの映画賞を獲得。その翌17年には、中印合作映画「カンフー・ヨガ(Kung Fu Yoga)」にも出演している。以降、ヒンディー語映画界で活躍中で、本作の続編「Baaghi 3」にもダンサー出演していたりする。
「インド版ランボー」という言葉だけが先走りすぎた日本では「インドがどこと戦争するんだよw」とか言ってる人がいてビックリしたもんですが、戦争が主体の映画ではないものの、国境地帯(*5)で軍人生活を送る主人公に対しての「お前軍人なのか」と態度を豹変させてリスペクトを贈る登場人物たちの姿は印象的。
実際のところそうなのかはともかく、本作では徹底的に国防を担う軍人たちを尊重しようとする人々ばかりが出てくる。似たような休暇中の軍人がテロリストと戦う「Thuppakki(銃)」でも軍人への敬意ってのが強調されてたし、印パ対立が激化するたびにインド人のネット上での発言にインド軍人への敬意と賛辞が激増されるのを見てると、あながち映画用の強調ってことでもないのかなあ…日本と全然違うなあ…とは思えてしまいますことよ。
挿入歌 Ek Do Teen (1、2、3 [指折り数えて、貴方を待っていた])
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*元曲は、1988年の「Tezaab(酸)」の同名挿入歌。この映画に主演したマードゥリー・ディークシトを一躍トップスターにしたアイテムソング(*6)であり、マードゥリー自身がこの時の役名"モーヒニー"をニックネームとしたきっかけの伝説的大ヒットソング。
本作でメインで踊ってるのは、ヒンディー語映画界で活躍するスリランカ人女優ジャクリーン・フェルナンデス。
受賞歴
2018 GQ Awards エンターテイナー・オブ・ジ・イヤー賞(タイガー・シュロフ)
2019 Screen Awards アクション賞(アーメド・カーン)
2019 Zee Cine Awards アクション賞(アーメド・カーン & キチャ・カーンパクディー & ラーム・チェラ & ラクシュマン・チェラ & シャムシェール・カーン)
2019 Power Brands 審査員選出アクション賞(アーメド・カーン)
2019 Zee Business Awards 100カロールクラブ賞
「Baaghi 2」を一言で斬る!
・軍人は無条件に国民から尊敬されてるのに対して、インド警察は無条件に警戒され怖がられてるって姿も、まあなんというか…ね。
2020.4.3.
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