バルフィ! 〜人生に唄えば (Barfi!) 2012年 150分 西ベンガル州コルカタの社会福祉従業員シュルティ・ゴーシュには、忘れられない人物がいた。ある日、その人物バルフィに関する電話連絡が入り、彼女はすぐにダージリンへと急ぐ。その昔、同じようにダージリンに急いでいた若き日の自分のように… 1978年。カルカッタ(=現コルカタ)のバルフィを訪ねたシュルティ・セーングプタと警察は、その目の前で逃げ出したバルフィとの追いかけっこを演じた末に彼を勾留。ダージリンへと彼を移送する。シュルティが最後まで否定し続けたバルフィの容疑は、銀行強盗…そして富豪の娘ジルミルの誘拐! そもそも、シュルティとバルフィの出会いはさらに遡る1972年のこと。 親の仕事の関係でダージリンに引っ越して来たシュルティ・ゴーシュは、すぐに地元(特に警察)で有名な男バルフィと出会う。彼は聴覚障害のために言葉を口に出来ず、自分の名前(マルフィ・ジョンソン)も「ばるふぃぃ」とどもるほど。それでも天真爛漫な彼は、あの手この手の悪戯を通して周囲の人々を楽しませる憎めない存在だった。 バルフィに一目惚れされて追い回されるうちに、そんな彼に惹かれ始めるシュルティだが、彼女にはすでに婚約者がいる。正式に婚約を申し込もうとしたバルフィはその事実に憤慨しつつも、彼女の将来を祝福して別れていった…。 同じ頃、バルフィの知り合いでムスカーン発達障害児施設に入れられていた少女ジルミル・チャタルジーが、祖父の看病のために実家に帰って来るが、数日の看病の末に老チャタルジー氏は帰らぬ人に。その邸宅の運転手だったバルフィの父親も夜中に心臓発作で倒れてしまい、治療には7000ルピーが必要だと言う! バルフィは、大金捻出のためにジルミルの誘拐を企てるが、混乱したお屋敷の中ではすでにジルミルは何者かに誘拐された後だった…。 OP Ala Barfi (さあ来て、バルフィ) *一瞬チャップリンの写真が出てくる所から、この映画にチャップリン映画のオマージュがふんだんに登場する事が宣言されてる…感じ? 笑いたいのを我慢してるシュルティの表情がイイネ! タイトルは、主人公のあだ名(&有名なインドのお菓子の名前でもある)。 日本では、2013年に沖縄国際映画祭で上映され、見事審査員特別ゴールデンシーサー賞を受賞。さらに、米国アカデミー賞の外国映画賞ノミネート作にも選出されようとしたらしいけれど、数々の過去の名作映画のパロディが仇となり候補から外されたそうな。 いやー困った困った。なにがって、ホントよく出来た映画なんで後から「この映画はですね〜云々」とつけ加える事自体が野暮になりかねないほどの完成度。 撮影・レイアウト・ロケハンの美しさ、ランビールを始めとしたキャストの演技のスキのなさと可笑しさと、えも言われぬ美しさ。ノスタルジックで上品な音楽と音響の数々。小粋な脚本と演出の、目の行き届いた卓越したセンス。どれをとってもスンバラし。これが日本で一般公開されないなんて、日本社会の映画リテラシーの低さを物語ると言っても過言ではない!(…なんて言ってたら、2014年に日本で一般公開! 日本もやっぱりスンバラスィ!!) とにかく、これは映画史的にも要チェック過ぎる傑作なのだ!! みんなこれを見て、雲に煙るダージリンへ行ってみたくなればイイジャナイ!! OPの「Ala Barfi」に一瞬チャップリンの写真が映り込んでる事からも分かる通り、しゃべれない主人公バルフィの巻き起こすスラップスティックな芝居は、明らかにチャップリンやバスター・キートン系の名作コメディへのオマージュで一杯。その他、「Mr. ビーン」「雨に唄えば」「君に読む物語」「プロジェクトA」などなど映画ファン(コメディファン?)的には見所満載。 劇中に登場する障害者たちの描き方も、監督が「可哀想な障害者を描きたいのではなく、障害も1つの個性であると描きたかった」と言う通り、酸いも甘いも飲み込んでの愛らしく喜怒哀楽の感情表現豊かな人物像の、生涯それぞれの場面が生き生きと描かれるので、美しくノスタルジーに包まれたダージリンの景色と合わせて本当に魅力的な物語を描いてくれる。 回想シーンの導入や終了時に、バックコーラス隊がさりげなく登場してBGMを奏でる所なんかも、古き良き映画時代へのリスペクトのような、または舞台劇を見てるような上品なイメージを作り出す。このノスタルジー醸し出す美しい映像効果は、インド的とは言えないかもだけれど、インド映画ならではの贅沢な映像体験ではあると思う。パロディをして笑いに持っていきながら、観客へのサービスと合わせて、個人個人の映画体験を問いかける構造は、娯楽映画としてはホント贅沢ですわ。カンペキ!! 前半のヒロインで本作の語り手兼狂言回しとなるシュルティ役のイリヤーナー・デクルーズは、ムンバイ生まれゴア育ちのモデル兼女優。 2006年のテルグ語映画「Devadasu」でフィルムフェア・サウスの女優デビュー賞を獲得したのを皮切りに、テルグ語・タミル語映画界で活躍している人で、本作がヒンディー語映画での初出演となる。少女時代から老年時代までの3つの時間軸でのそれぞれのシュルティの演じ分けも見事なもので、常識人として一番観客に近い立場で物語に関わっていく様は爽やかで愛らしい。数々の新人女優賞を獲得したのも納得の人ですよ!(南映画界では有名な人が新人賞とはこれ如何にって感じではあるけど) 後半のヒロイン ジルミルを演じるのは、ボリウッドのトップスター プリヤンカ・チョープラー! そらもう、「え? プリやんが障害者役!?」って心配もあったけども、ランビール共々役者魂を見せつけるにあまりある演技力を見せてくれましたわ。この2人本当にスゲえぇ!!!!! 美人かつ卓越した演技力で、シリアス劇もユーモアもコントも、子供役からキャリアウーマンから老女役からなんでもござれなプリヤンカは、役者としては向かう所敵なしですな。唯一あるとすれば、自分の美貌が役を選ぶ障害になるくらい? でも本作を見る限り、その壁すら突破出来てますわ! まー、ジルミルの可愛い事可愛い事。 あと、ダッタ警部役のサウラブ・シュクラーがいいスパイスとして機能しててナイス。調べてみたら、役者兼脚本家兼監督もこなす人だったのね!(スラムドッグ・ミリオネアにも出演してる!!) あぁ、なんだかんだと結局長々と語って来ちゃったけど、それでもまだ語りたいような語らずに本編を見てくださいとお勧めしたいような。本当に説明不要な超必見の大傑作ですよ! 挿入歌 Aashiyan (夢の[麦わらで家を建てよう])
受賞歴
「Barfi!」を一言で斬る! ・世界遺産でもある、ダージリン・ヒマラヤ鉄道乗りたい!
2014.3.7. |