インド映画夜話

Billu (またはBillu Barbar) 2009年 150分
主演 イルファン・カーン & ラーラ・ダッタ & シャー・ルク・カーン
監督 プリヤダルシャン



 空前の大ヒットを飛ばしたマラヤラム語(南インドの公用語の1つ)映画「Kadha Parayumbol('07年)」のヒンディー語版リメイク映画。
 公開直前にタイトルの「Barbar(散髪屋)」が問題だと注文が入ったため「Billu」「Billu Barbar」など複数タイトルが存在するそうな。




 散髪屋のビルーは、ウッタル・プラデーシュ州ブッドゥダ郊外のグンジャ村に住む気弱な男。
 最近、ブットゥダの店の向かいにできたモダンな床屋のせいで稼ぎが激減。子供の学費も払えず、校長先生からは大目玉。高利貸しのダームチャンドからお金を借りようにも、不器用なビルーは信用されず門前払いされてしまう。

 ある日、国民的大スター サヒール・カーン(演じるのは"キング・オブ・ボリウッド" シャー・ルク・カーンだ!)がブッドゥダに新作映画の撮影にやってきた!

 サヒールがグンジャ村出身という事で、人々は大挙して村に押し寄せる。ふとしたことから、ビルーはサヒールの幼なじみらしい…と言う噂が広まり、サヒール人気に乗ってビルーは一躍町の英雄に祭り上げられる。
 ダームチャンドは店に最新の回転椅子と散髪道具一式をプレゼント。詩人のジャッランは詩をビルーに吟じ、校長先生は学校の記念式典にサヒールを呼んでくれれば学費免除だと言い出す始末。
 ビルーはあまりの状況の変わり具合に呆然。見かねた妻のビンディヤによってみんなを静めたものの、サヒールへの口利きを約束させられてしまう。

 なんとかサヒールに会おうとするビルーだが、今や大スターとなった彼が自分を憶えているのか確信が持てず、ボディガードにも阻まれ、サヒールの前に立つ事ができない。
 そんな中、押し寄せる群衆の中でファンと警官隊が衝突。警官は、逮捕者たちが「幼なじみ同士のサヒールとビルーを会わせたかっただけだ」と釈明する前で「そんな話、本当かどうかわからんだろ!」と断言し、ビルーを連行する。
 町の人々は一転してビルーを疑い始め、詐欺師呼ばわりしはじめる…。


挿入歌 Marjaani (共に地獄へも)


 周囲の噂によって主人公が翻弄され、社会から抹殺されたり持ち上げられたりするって言うのは「Chak De India」にも通じるテーマ。

 その一庶民の翻弄具合と、シャールクとゲスト女優(ディーピカ&プリヤンカ&カリーナと言う豪華メンツ!!)によるド派手なミュージカルが、うまいこと気弱な一般人と大スターの生きる世界を書き分けている(と言うか、やりすぎ感も…)。

 これ、日本で公開したら人気が出ると思うけどなぁ…。ラストあたりなんか、泣けるでぇ。

 シャールク演じるサヒールの映画撮影シーンやミュージカルシーンでは、過去のシャールク主演映画がサブリミナルにダダダっとカットインし、町中にはそれらの映画ポスターが所狭しと貼ってあったりして、シャールク映画ファンにとっては2度おいしい映画…かも?

 気弱なビルーを演じるイルファン・カーンは、この前の「スラムドッグ・ミリオネア」で取り調べの警部役をやってた人。今回はビルーの清く正しく誠実に…と言う性格をなかなかに好演。
 あんたはインドの寅さんだ!! まちがいない!!

 しっかし、「スラムドッグ〜」を見た時も思ったけど、映画という物が、庶民にとっての娯楽の王様(=お祭り?)であり続けて尋常じゃない影響力を持ち続けるためには、社会全体が貧しくなくてはならない、って法則があるんじゃないかなぁ…なんて事を考えさせられる映画でもある。


挿入歌 Love Mera Hit Hit (愛は衝撃)

*…この、「スターウォーズ」か「フィフスエレメント」のパクリのようなシーンは、大スター サヒールの新作映画の撮影をやってるって言う体なんだけど、そのためだけに大女優を出演させたりするトコがボリっててナイス。

受賞歴
2009 Golden Kela Awards 最悪助演男優賞(シャールク)

2009.9.9.




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