「アベンジャーズ(Marvel's The Avengers)」などの、ハリウッドのマーベルヒーロー映画群をインドで作り出そうとしたような、VFXアクション大作。
古代インドから伝わるアストラと呼ばれる超常具と、それを使用できる家系ブラフマーンシュの血を受けつぐ者たちの活躍を派手派手に描く映画なわけで、とにかくVFXによる絵づくりに特化したような構成。地水火風を始め猿だの蛇だの刃、情熱、秘匿など、ありとあらゆる概念を超能力化させて、その色とりどりのエフェクトの暴走する様を見せていく画造りが美しカッコええ。
特別な力を持つ者が特別な血筋・出身であるというのもヒーローものの王道で、アメリカや日本のスタイルとそんなに違わないのに、意味深に血統の正当性を語るその語り口がインドになるだけで重々しさが段違いですわよ。その重々しさに一役買ってるのが、重要キャラとして出てくる現代ブラフマーンシュを演じるインド映画界の大スターたちの存在。
最初に主人公よりも早く登場するヴァナラーストラ(大猿のアストラ)使いのモーハン・バルガーヴは、"キング・オブ・ボリウッド"としてヒンディー語映画界でその名を轟かすシャー・ルク・カーン。その役名は、主演作「Swades(祖国)」(*3)で演じたNASA職員の科学者と同じ名前で、特に言及はされないながら同一キャラクターである事を匂わせるのもニクい演出(*4)。
続く第2の標的にされる建築家アニーシュ・シェッティには、テルグ語(*5)映画界を支える映画一族アッキネンニー家の第2世代代表アッキネンニー・ナーガルジュナ(*6)がキャスティング。本作ヒロイン演じるアーリア・バットが、本作と同年公開となったテルグ語映画大作「RRR」に出演しているのに対応してか、こちらは久々のヒンディー語映画出演となった(*7)。
第3の標的となる、ブラフマーンシュたちのグル(指導者) ラグーを演じるのは、もはや説明不要のインドを代表する大物スター アミターブ・バッチャン。18年の「Thugs of Hindostan(反逆のインド)」での、植民地時代のインド反乱船団の指導者を演じてアーミル・カーン演じる主人公を導く役柄よろしく、本作でも主人公に超能力アストラの使い方、その伏せられていた出自を明らかにする役回りで、次世代の教育者としての貫禄を遺憾なく発揮。
主人公の過去の幻視に登場する母親アムリターははっきり顔を見せるシーンが少ないものの、演じているのはボリウッドを代表する大女優ディーピカ・パドゥコーンというのも驚き。してみると、2作目以降に登場するはずの主人公の父親デーヴを演じるのってひょっとして…(ワクワク)。
こういった楽屋落ちを最大限サービス演出して取り込んでくるインド映画にあって、最大の楽屋落ちは、何と言っても新婚ホヤホヤの主人公2人であるランビールとアーリアの2人。ハリウッド的なキス&ハグシーンも、実際に夫婦な2人ならなんの問題もございません。存分にイチャついて幸せになってくださいよって感じぃー。