インド映画夜話

ダンスでチャンス (Chance Pe Dance) 2010年 158分
主演 シャーヒド・カプール & ジェネリア
監督/脚本 ケン・ゴーシュ
"もう1度チャンスを…。せめてダンスするチャンスを!!"







 デリーから映画スターになる夢を抱いてムンバイに出てきたサミール・ベール(通称 サム)は、3年間オーディションに走り回るものの、日の目を見ずに苦しい生活状況にいた。実家の父親からの電話は「約束の期限は過ぎてるんだから、早く帰ってこい!」の繰り返し。
 そんなある日、サムはダンス教室で踊るティナとふとしたきっかけから意気投合する。

 その後、友達のガウラヴに「有名映画監督がいつもいるから」と連れられて入ったクラブで持ち前のハイレベルなダンスを見せつけたサムは、監督に見出されてプロダクションに招かれ、いきなり次回作の主演に抜擢される。喜ぶ彼の前に振付師と紹介されたのは、なんとティナだった!

 2人は和気あいあいと自分たちの参加する映画の構想を語り合うが、サムの生活はその頃危機的な状況に追い込まれていく。
 その日、サムは突然バイト先をクビにされ、下宿先からは家賃の滞納を理由に強制退去させられ、頼りにしていたガウラヴにも借金を踏み倒されて車上生活を余儀なくされてしまう。

 当座をしのぐため、わらにもすがる思いでサムが見つけたバイトは、小学校の臨時ダンス教師。
 「ダンスの授業なんて、ダッせえ負け組のすること」と言う事を聞かない生徒たちは、当初はダンスをバカにしていたものの、サムの無理矢理な指導でだんだんと彼に馴染んで行くようになる。その時、生徒の一人の姉と言ってサムの前に出てきたのは、またまたあのティナ!

 ティナの協力もあって、なんとかサムが生活を再建しようとした矢先、先の監督の企画していた映画が、いつの間にか新人発掘のオーディション企画に変更されいた!
 もちろん、サム主演の話は消えてしまい「ま、君もオーディションで頑張りなさい」の一言で片付けられてしまうことに…。


挿入歌 Pe... Pe... Pepein....

*OPよりも先に始まる、OPのOP的な扱いのミュージカル。


 原題は「チャンスにダンス」。肩の力が抜けた、シャーヒドのPVものと言った感じのお気楽エンタメ映画。お話がどんなに単純だろうと、踊れる主演俳優がいる…と言うだけで映画になっちゃう所がスゴい。日本では、2015年の「インド映画同好会 大映画祭」にて上映。
 手に入れるまで、「Luck By Chance」とゴッチャになってイメージしてたのは秘密。うん。

 全てのシークエンスは、シャーヒドをカッコよく魅せるために構成されていて、彼の得意技がこれでもかと登場する。と言うより、シャーヒドの得意とする部分をつないで映画にしてる感じで、シャーヒドに興味を持った人でないと単なる平凡なサクセスストーリーにしか見えないかも…だけど、安手のアイドル映画ではなく、ちゃんと使うべき所にお金を投入して、他にないハイレベルなダンスシーン・演技力・多彩な表情を見せるシャーヒドは、やっぱりトップスターの貫禄。下手にシリアスになるより、こういうお気楽な方が「技を魅せる」意味では技術的な映画になってるのかもね。
 シャーヒドと言うタレントを知るにはちょうどいい一本。ま、お話は色んな要素を詰め込もうとして、畳めなくなってる感ありありだけれども…。

 個人的には、こう言う"踊る技術をもつ俳優"が少数派になり始めている現在のボリウッドでは、こっちの方の映画ももっと大事にして行ってほしいもんです。映画とは芸能なのだ!(*1)
 あともう1つ気になる所と言えば、インドの学校のお弁当文化がかいま見れる点だ! ま、舞台はいいとこの学校なんだろうけど。


挿入歌 Rishta Hai Mera (私がいるのは空の上 [雲をつかみ、星に手を伸ばしたい])

*ティナと一緒に、次回作の特訓に入るサミールたちの感情表現PV…なんだけど、この、ある意味直球な表現、ある意味どうしてこうなった…な発想を素直に映像化しちゃうアイディアがトンデモね。


2011.12.22.
2015.9.26.追記


戻る

*さらに個人的な意見を言えば、この映画を見てるとリティックになくてシャーヒドにあるのは、喜びの表現の多彩さなんじゃなかろか…とか思ってしまいまする…。