Dabangg 2 2013年 120分 北インド ウッタル・プラデーシュ州の地方都市カーンプルにて、暴力団による幼児誘拐を単身解決した男、"ロビン・フッド" チュルブル・パーンデーイ警部の人気は、この街に赴任してからも絶大であった。 一方、カーンプルは街の支配者バッチャ(本名タークル・バッチャ・シン)によって牛耳られ、彼に歯向かったものは白昼堂々殺されても問題化しない。チュルブルは、彼らの起こした暗殺事件を捜査し、その実行犯を粉砕。さらには、バッチャ本人に宣戦布告し、彼と彼の家族を侮辱した上でバッチャの弟ゲンダーを殺してしまう! 復讐を誓うバッチャの魔の手は、ついにチュルブルの義父プラジャーパティと妻ラッジョーへと向けられるのだが…。 挿入歌 Dabangg Reloaded (新装:大胆不敵) 2010年にボリウッド(*1)最大ヒットを飛ばし、日本公開もされた「ダバング (Dabangg)」の続編登場! 前作で、プロデューサーと主人公の弟マッキー役を演じたアルバーズ・カーン自らが監督に就任したレトロ・アクション第2弾! 大ヒット作のプロデューサーが自らメガホンを取って続編を初監督する…と聞けば「うわあ…イヤな予感しかしないわあ」って感じですが、ま、大方予想通りの内容でございました。 前作を踏襲したかのようなオープニングアクションと、オープニングナンバー"Dabangg Reloaded (新装:大胆不敵)"が前作オープニングソング"Udd Udd Dabangg (大胆不敵)"のオマージュになってるあたりで「ああ、映画構成自体が、前作を踏襲した映画なのネ」って感じ。その映画構成、敵役との対立構造、ミュージカルシーンに使われる楽曲ジャンルや歌手・振付等、明らかに意図的に前作のそれをオマージュ的に取り込んで作られている。 とは言え、前作で決着がついてるツンデレヒロインとのロマンスや、父子・兄弟間の確執なんかはなくなってしまっているので、残ってるのはサルマン演じる不良警官チュルブルが悪者をバッタバッタとなぎ倒すアクションと、ドタバタ喜劇ばかり。そのテンポ・スピード感・縦横無尽のアクションとカメラワークが光っていた前作に比べると、どうしてもこう…ねえ。頑張ってるのは分かるけど、ここぞって所で銃撃戦で終わりにしちゃったり、計略なしにただ悪役が出てきてぶっ倒されて行くだけってのは、カタルシスのようなものを感じられにくいので、これ見てると「英語字幕で見てる時にはいまいち分からなかったけど、前作のダバングってよく出来てたんだなあ…」と変な感心をしてしまいまする。 ま、あいかわらず愚弟マッキー役で出演してもいるアルバーズ監督(*2)の、皆のヒーローな兄貴をどこまでもカッコよく撮ったるゼ!って意気込みが匂うのは微笑ましい限り。 その監督アルバーズ・カーンは、1967年マハラーシュトラ州プネー生まれ。 父親はパシュトーン族出身の高名な脚本家サリーム・カーン、母親はスシーラ・チャラク(後に離婚)。義母が映画女優兼ダンサーのヘレン。兄に3大カーンの1人のサルマン・カーン、弟にソハイル・カーンがいる。 1996年の「Daraar」で映画デビューし、フィルムフェア悪役賞を受賞し役者として活躍。98年にはダンサー兼モデル兼女優のマライカー・アローラと結婚し、05年の「Jai Chiranjeeva」でテルグ語映画に、07年の「Godfather」でウルドゥー語映画にも出演済み。10年の「ダバング(Dabangg)」では出演の他、夫婦でプロデューサーデビューしてフィルムフェアを始めとした数々の映画賞を獲得した。本作では、出演兼プロデューサーの他初めて監督にも就任。 主役チュルブル役を演じるのは、言わずと知れたボリウッドを代表する大スター サルマン・カーン(*3)!! 1965年マディヤ・プラデーシュ州インドール生まれで、アルバーズ・カーンの兄に当たる。 1988年の「Biwi Ho To Aisi(妻は、こうでなければ)」で映画デビュー(*4)。翌89年の「Maine Pyar Kiya(愛していた)」で主役デビューして、フィルムフェア新人賞を獲得。90年の主演作「Baaghi: A Rebel for Love」では脚本にも参加している。 98年の「何かが起きている(Kuch Kuch Hota Hai)」でフィルムフェア助演男優賞を、11年の「Chillar Party」ではプロデューサーも兼任してナショナル・フィルム・アワードの子供映画賞を獲得。その他にも本作を含め数々の映画賞を受賞している。 リティック・ローシャンを始め後進の映画人の活動の助力者としても有名な他、奇行・犯罪関係でも話題の多い人物で、業界に強い影響力を持つ一方で様々なゴシップに事欠かない人物でもある(*5)。 続編作品であるこの映画らしさが十二分に発揮されてるシーンは、なんと言ってもオープニングアクションでしょうか。 "偉大なる二番煎じ"を存分に発揮しつつ、前作のオマージュを大量に入れ込んでなお、魅力あふれるチュルブルと敵役たちの掛け合いも楽しい楽しい。小道具の使い方にもう一工夫欲しい気もするけども、全てのカットが"チュルブル演じるサルマンのナイスミドルさを、わからせてヤンゼ!"って意気込みに満ち満ちていて清々しいもんです。この演出パワーが最後まで右肩上がりに維持されていれば大傑作になっただろう所が惜しい。すでに続編の企画は始まってると言うので、続くシリーズには"偉大なるマンネリズム"の継承と共に、新しい才能が開花する事も同時に(*6)期待したい!! 挿入歌 Jungi Pa Tha *突然乱入して来るのは、前作でもアイテムガール(*7)兼プロデューサーをしていて、本作のプロデューサーでもあるマライカー・アローラ・カーン!
受賞歴
「Dabangg 2」を一言で斬る! ・もし、さらなる続編が出来たら、是非"3作目でようやく日本が気付く"の法則にのって、そっちも日本公開してネ!(【チェイス!】と言い【クリッシュ】と言い…ネ)。
2015.5.8. |
*1 ヒンディー語娯楽映画の俗称。 *2 実際にもサルマンの愚弟的ポジションの人! *3 生誕名アブドゥル・ラシード・サリーム・サルマン・カーン。 *4 声は別人の吹替。 *5 義母ヘレンとの確執とか、絶滅危惧種ハンティング事件とか、恋人関係破局後のアイシュへのストーカー行為とか、轢き逃げ殺人とか…。 殺人事件に関しては、2015年になって禁固刑が判決されながら、一旦裁判差し止めで保釈されてインド中で大炎上してるみたい。 *6 相反する要素だと分かっていつつ。 *7 ゲスト出演のダンサー女優の意。映画プロモに使われる、キャッチーでアップテンポな歌=アイテムソングを盛り上げるダンサーと言う意味付けからの命名…らしい。もちろん、このネーミングは女性蔑視ではないかと問題提議されてもいます。 |